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欧州ではなく米国もアツい 前後編に渡り有力馬の近況をお届け

  • 2022年08月03日(水) 12時00分

ホイットニーSとパシフィッククラシックに実績馬集結



 8月3日春から、日本調教馬によるヨーロッパ競馬参戦が途切れずに続いている関係からか、日本の競馬ファンの目はヨーロッパに向きがちで、自ずと筆者が書いたり喋ったりすることも、ヨーロッパ競馬に偏りがちとなっている。

 その間も、言うまでもなくアメリカでも、エキサイティングな競馬シーンが続いている。そこでこのコラムは、今週と来週の2回に分けて、アメリカ・ダート戦線における有力馬の近況を取り上げたいと思う。

 まずは、古馬編から。11月5日にキーンランドで開催されるG1ブリーダーズC(d10F)へ向けた前売りで、ブックメーカー各社が前売り1番人気に支持しているのが、ジョン・サドラー厩舎のフライトライン(牡4、父タピット)だ。3歳4月にデビューし、3歳時の戦績が3戦3勝。それも、サンタアニタのメイドン(d6F)が2着馬に13.1/4馬身差、デルマーの条件戦(d6F)が2着馬に12.3/4馬身差、サンタアニタのG1マリブS(d7F)が2着馬に11.1/2馬身差と、圧倒的なパフォーマンスで3連勝したのだ。

 フライトラインの今季初戦となったのが、6月11日にベルモントパークで行われたG1メトロポリタンH(d8F)だったのだが、ここで”事件”が起きた。圧倒的なスピードを武器に逃げ切り勝ちを重ねてきたフライトラインが、スタートに失敗。出遅れて、鞍上のフラヴィエン・プラが押しても進みが悪く、逃げたスピーカーズコーナー(牡4、父ストリートセンス)を前に見て、2番手での競馬となったのである。

 3〜4コーナー中間でスピーカーズコーナーの外に馬体を併せて行った以降のフライトラインは、いつもの競馬を見せ、鞍上のハンドライドだけで後続を6馬身突き放して優勝。無敗の4連勝を飾ったこのパフォーマンスで、レイティング126を獲得したフライトラインは、最新の世界ランキングで2位タイとなっている。

 そのフライトラインの次走は、9月3日にデルマーで行われるG1パシフィッククラシック(d10F)と言われている。すなわち、フライトラインはここで初めて10F戦に挑むわけである。そのパシフィッククラシックで、フライトランと顔を合わせる公算大なのが、ボブ・バファート厩舎のカントリーグラマー(牡5、父トナリスト)だ。

 昨年のG1ハリウッドゴールドC(d10F)勝ち馬で、今季初戦となったG1サウジC(d1800m)は地元調教馬エンブレムロード(牡4、父クオリティロード)の2着に惜敗したが、そこから転戦したメイダンのG1ドバイワールドC(d2000m)で、見事な優勝を飾っている。同馬の帰国初戦となったのが、7月30日にデルマーで行われたG2サンディエゴH(d8.5F)で、125ポンド(約56.7キロ)のトップハンデを背負ったカントリーグラマーは、3番手を追走。3〜4コーナー中間で一旦は先頭に立ちかけたものの、そこから5ポンドハンデが軽かったロイヤルシップ(セン6、父ミッドシップマン)に伸び負け、2.1/4馬身差の2着に敗れた。休み明けを1度使われ、パシフィッククラシックでは変わり身を見せることが期待されている。

 サンディエゴHを制したロイヤルシップは、ブラジルからの移籍馬。祖国でG1制覇の実績がある実力馬で、移籍初年度の昨年4月にG2カリフォルニアンS(d9F)を制し北米重賞初制覇。ただしG1では、昨年のG1ハリウッドゴールドCが2着、今年のG1ハリウッドゴールドCが3着と惜敗に終わっており、北米のビッグタイトルには手が届いていない。ロイヤルシップも、9月3日のG1パシフィッククラシックに向かう模様だ。

 なおサンディエゴHには、昨年のG1ケンタッキーダービー(d10F)勝ち馬マンダルーン(牡4、父イントゥミスチフ)も出走していたが、4着に敗退している。

 一方、東海岸に目を転じれば、フライトラインにとって最大のライバルと目されているのが、トッド・プレッチャー厩舎のライフイズグッド(牡4、父イントゥミスチフ)だ。3歳春から素質の高さを評価されていた同馬だが、故障もあってとんとん拍子の出世とはならず、昨年11月にG1BCダートマイル(d8F)を5.3/4馬身差で快勝して待望のG1初制覇。年明け初戦となったG1ペガサスワールドC(d9F)でも、前年の全米年度代表馬ニックスゴーを完封してG1連勝を果たし、戦線の最前線へと躍り出ることになった。ところが、初めて10F戦に挑んだG1ドバイワールドCでは、今年のメイダンは砂が深かったことも影響したようで、逃げて残り100mで失速。1番人気を裏切り4着に敗れ去った。

 ライフイズグッドの帰国初戦となったのが、7月2日にベルモントパークで行われたG2ジョンネルードS(d7F)で、ここでは本来の姿を見せて後続に5馬身差をつける快勝を見せている。そのライフイズグッドは、今週土曜日(8月7日)にサラトガで行われるG1ホイットニーS(d9F)に出走する予定となっている。

 北米中東部地区で、今季最大の上がり馬と称されているのが、ビル・モット厩舎のオリンピアード(牡4、父スパイツタウン)だ。デビューしたのは2歳8月で、2戦目に初勝利をあげたものの、その後は故障で1年にわたる戦線離脱を余儀なくされたのがオリンピアードだ。3歳9月に復帰し、3戦目となったG1シガーマイル(d8F)で4着に入る健闘を見せた後、4歳となった今季になって快進撃がスタートした。

 初戦となったガルフストリームの条件戦(d8.5F)を7.1/4馬身差で制すると、続くフェアグラウンズのG3マインシャフトS(d8.5F)を制し重賞初制覇。さらに同じフェアグラウンズのG2ニューオリンズS(d9F)でも勝利を収めると、チャーチルダウンズのG2アリシバS(d8.5f)も快勝。そして、7月2日にチャーチルダウンズで行われたG2スティーヴンフォスターS(d9F)も勝って、通算6勝、重賞4連勝を果たしたのである。そのオリンピアードが、満を持してG1に再挑戦するのが、今週土曜日(8月7日)にサラトガで行われるG1ホイットニーSだ。すなわちここで、ライフイズグッドとぶつかるのである。

 G1ホイットニーHにはさらに、G1ドバイワールドC2着馬で、帰国初戦のG3サルヴェイターマイル(d8F)も2着だったホットロッドチャーリー(牡4、父オックスボウ)も、参戦する予定だ。

 まずは今週末のG1ホイットニーSそして、9月3日のG1パシフィッククラシックが、今後を占う意味で見逃せない戦いとなりそうである。

 来週のこのコラムでは、北米ダート路線における3歳の有力馬の近況をお届けしたい。

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1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

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