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前田長吉、寺山修司、そして現役騎手たちの節目

  • 2022年08月04日(木) 12時00分
 先週の月曜日、相馬小高神社で野馬懸を見たあと、青森の八戸に入った。4時間半ほどのドライブだった。都内の仕事場から南相馬までは3時間半ほどだから、その1.3倍ほどかかったことになる。

 翌日、最年少ダービージョッキー・前田長吉の兄の孫の前田貞直さんと一緒に長吉の墓参りをした。コロナ前の2019年秋以来、3年ぶりだった。そんなに久々だったように感じなかったのは、コロナのせいで体内時計の針が止まっていたからか。

 午後から県内の三沢市寺山修司記念館を訊ねた。佐々木英明(えいめい)館長と会うのも3年ぶりだった。お元気そうだったが、10キロほど太ってズボンが入らなくなったと苦笑されていた。

 来年、前田長吉は生誕100年、寺山修司は没後40年の節目を迎える。長吉の誕生日は2月23日、寺山の忌日は5月4日。前にも書いたが、ハイセイコーが世を去ったのも5月4日だった。

 それらに先立ち、今年は尾形藤吉元調教師の生誕130年なので、10月8日から東京競馬場内のJRA競馬博物館で、特別展「尾形藤吉〜“大尾形”の系譜〜」が行われる。そこで、弟子だった長吉に関する展示もなされるようだ。

 節目というのは、原点に立ち返って歩みを見つめなおす機会になる。忘れる生き物である人間にとっては、大切にすべき行事と言えるだろう。

 節目といえば、私が発毛剤リアップを塗布しはじめてから、今年の8月6日でちょうど2年の節目になる。

 前田長吉、寺山修司、そして尾形藤吉という偉人たちの話のあとに卑近なネタで申し訳ないが、私にとってはこれも大きな節目である。

 本稿でカミングアウトしたころは、育毛効果があると言われるEPA(エイコサペンタエン酸)を摂るため、イワシの缶詰も毎日ひと缶食べていた。飽きないよう、違うメーカーの缶詰をローテーションで回し、マヨネーズ和えにしたり、パスタにしたり、ときにはサバ缶にするなど工夫していたのだが、やはり飽きた。サブ効果でコレステロールの値もよくなることを期待していたのだが、健康診断でまったく変化が見られなかったので、数カ月でやめてしまった。

 で、毛髪の症状はどうなのかというと、ほぼ横ばいである。2年前、最初の2カ月ほどは「初期脱毛」で一気に抜けて、そこから徐々に戻ってきたのは確かなのだが、元のレベルより上に行く「超回復」ではなく、ただ元に戻っただけのような気がする。言ってみれば、「自作自演」にも思えるし、この年齢で進行していないということは、実質的には効果が出ていると言えるのかもしれない……という微妙なところだ。

 あと2本、つまり2カ月ぶんリアップが残っているので、それを使い切ったら、また報告したい。

 さて、私の好きな言葉に「頑張っていればいいことあるさ」というものがある。

 先週土曜日に行われた新潟ジャンプステークスで、ホッコーメヴィウスに騎乗した黒岩悠騎手が、デビュー21年目で重賞初制覇を遂げた。黒岩騎手は、同馬が所属する清水久詞厩舎にいたキタサンブラックに稽古をつけていたことでも知られている。

 そして日曜日には、アイビスサマーダッシュで、杉原誠人騎手が乗るビリーバーが優勝。杉原騎手、石毛善彦調教師、馬主のミルファーム、そしてビリーバーの父モンテロッソにとっても、嬉しい重賞初勝利となった。

 このレースは、藤田菜七子騎手と今村聖奈騎手による、重賞では史上初のJRA所属女性騎手の競演として注目されていたが、別のドラマが待っていた。

 今年2月末に解散した藤沢和雄厩舎に所属していた杉原騎手は、デビュー12年目の今年がフリー初年度だ。その節目に、重賞初勝利を挙げることができたのは大きい。

 こうも言える。黒岩騎手はデビュー21年目、杉原騎手は12年目の今年を、重賞を初めて勝つことによって節目とした、と。節目というのは、時が流れて自然にやって来るだけではなく、自分でつくることもできるのだ。

 つくづく思うので、繰り返す。頑張っていればいいことあるさ。

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作家。1964年札幌生まれ。Number、優駿、うまレターほかに寄稿。著書に『誰も書かなかった武豊 決断』『消えた天才騎手 最年少ダービージョッキー・前田長吉の奇跡』(2011年度JRA賞馬事文化賞受賞作)など多数。netkeiba初出の小説『絆〜走れ奇跡の子馬〜』が2017年にドラマ化された。最新刊は競馬ミステリーシリーズ第6弾『ブリーダーズ・ロマン』。プロフィールイラストはよしだみほ画伯。

関連サイト:島田明宏Web事務所

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