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米ダート路線有力3歳馬の近況

  • 2022年08月10日(水) 12時00分

“真夏のダービー”トラヴァーズSに有力馬集結



 古馬編をお届けした先週に引き続き、今週のこのコラムでは、アメリカダート戦線における3歳世代の有力馬の近況をご紹介したい。

 11月5日にキーンランドで行われるG1BCクラシック(d10F)に向けた前売りで、現時点で最も評価が高い3歳馬は、スティーヴ・アスムッセン厩舎のエピセンター(牡3、父ノットディスタイム)だ。

 2歳9月にデビュー。3歳2戦目となったフェアグラウンズのG2リズンスターS(d9F)を制して重賞初制覇を果たすと、続くG2ルイジアナダービー(d9.5F)も連勝したのがエピセンターだ。しかし、いずれも1番人気に推されたG1ケンタッキーダービー(d10F)、G1プリークネスS(d9.5F)は、ともに2着に敗退。続くG1ベルモントS(d12F)は回避したため、春の3冠は無冠に終わった。

 ひと息入れたエピセンターが戦線に戻ってきたのが、7月30日にサラトガで行われたG2ジムダンディーS(d9F)で、ここには、G1プリークネスS勝ち馬アーリーヴォーティング(牡3、父ガンランナー)、G1ブルーグラスS(d9F)勝ち馬で、G1ケンタッキーダービーは3着だったゼンダン(牡3、父アップスタート)らも出走した。

 結果は、4頭立ての4番手から追い込んだ1番人気(2.1倍)のエピセンターが優勝。道中2番手を追走した3番人気(3.7倍)のゼンダンが、そのまま2着を確保。逃げた2番人気(2.85倍)のアーリーヴォーティングは、2カ月の休み明けが響いたか、逃げて失速して4着に敗れている。

 サラトガのG2ジムダンディS同様、春の3冠を戦った馬たちが複数顔を揃えたのが、7月23日にモンマスパークで行われたG1ハスケルS(d9F)だった。

 そんな中、ハスケルSでオッズ1.7倍の1番人気に推されたのは、春の3冠には出走していなかった、チャド・ブラウン厩舎のジャッククリストファー(牡3、父マニングス)だった。

 2歳8月にデビューし、2歳時は2戦して、G1シャンパンS(d8F)を含む2連勝。G1BCジュヴェナイルの有力候補となったが、左前管骨瘤のため、BCジュヴェナイルは取り消している。今季は5月に始動。G2パットデイマイル(d8F)、G1ウッディスティーヴンスS(d7F)を連勝して臨んだのが、ハスケルSだった。すなわち、ジャッククリストファーはハスケルSで初めて、8F超の距離に挑んだのである。

 オッズ3.1倍の2番人気が、ボブ・バファート厩舎のテイバ(牡3、父ガンランナー)。デビューから無敗の2連勝でG1サンタアニタダービー(d9F)を制した後、G1ケンタッキーダービーは12着に終わっていた。

 オッズ8.0倍の3番人気が、サフィー・ジョセフ厩舎のホワイトアバリオ(牡3、父レースデイ)。G1フロリダダービー(d9F)勝ち馬で、G1ケンタッキーダービーは16着。その後、6月25日にシッスルダウンズで行われたG3オハイオダービー(d9F)に出走し、2着となっていた。

 さらにオッズ8.8倍の4番人気が、ブラッド・コックス厩舎のサイバーナイフ(牡3、父ガンランナー)。G1アーカンソーダービー(d9F)を制して臨んだG1ケンタッキーダービーが18着。その後、6月12日にチャーチルダウンズで行われたG3マットウィンS(d8.5F)に駒を進め、ここを勝って2度目の重賞制覇を果していた。

 レースは、道中2番手を追走したジャッククリストファーが、3〜4コーナー中間で先頭に立ったものの、残り1Fで失速。代わって先頭に立ったのが、5番手追走から4コーナーで馬群外を通って追い上げたテイバ。さらに次の瞬間、内ラチ沿いを抜けてきたのが、前半は6番手を追走していたサイバーナイフで、同馬がテイバに頭差先着して優勝。勝ち時計の1分46秒24は、トラックレコードだった。2着馬から2馬身遅れの3着がジャッククリストファーで、ホワイトアバリオは後方のまま、見せ場なく7着に敗れている。

 ハスケルSの勝ち馬サイバーナイフ、ジムダンデイSの勝ち馬エピセンターは、8月27日にサラトガで行われるG1トラヴァーズS(d10F)で顔を合わせる予定だ。

 そのトラヴァーズSには、オッズ81.8倍、20頭中の20番人気でG1ケンタッキーダービーを制した後、G1ベルモントSは6着だったリッチストライク(牡3、父キーンアイス)も、出走の構えを見せている。

 さらに、トラヴァーズSにおけるもう1頭の注目馬が、トッド・プレッチャー厩舎のチャージイット(牡3、父タピット)だ。G1フロリダダービーで2着となった後、G1ケンタッキーダービーは17着だった同馬。7月2日にベルモントパークで行われたG2ドワイヤーS(d8F)に出走すると、2着馬になんと23馬身差をつける大パフォーマンスを披露。勇躍、トラヴァーズSに駒を進めて来ることになった。

 3歳世代でもう1頭、近況をお伝えしたい有力馬が、トッド・プレッチャー厩舎のコーニッシュ(牡3、父クオリティロード)だ。2歳だった昨年、3戦し、G1BCジュヴェナイルを含めて無敗の3連勝をマークし、全米2歳牡馬チャンピオンに選出された同馬。出走態勢が整わず、春の3冠を全休した後、7月31日にサラトガで行われたG2アムステルダムS(d6.5F)で戦線に復帰。だが、9カ月近いブランクが響いたか、コーニッシュは9着に敗れている。

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1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

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