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「馬は“人”でここまで変わる」――川田騎手を唸らせた腕利き厩務員と調教助手とは!?【In the brain】

  • 2022年08月11日(木) 18時02分
VOICE

▲川田騎手がリスペクトするふたりのホースマンをご紹介 (撮影:桂伸也)


幼い頃からずっと父の厩舎を見てきた川田騎手が、競馬の現場で強く感じてきたことがあります。それが「誰が関わるかによって馬は変わる」ということ。その影響力は、重賞を勝てるような馬が関わる人間次第で1、2勝で終わってしまうこともあるほど、だと言います。

そこで今回、川田騎手に多大な影響を与えた腕利き厩務員と調教助手をご紹介。馬を輝かせるプロ中のプロの仕事とは、どのようなものなのでしょうか。

(取材・構成=不破由妃子)

ただただ「さすがやな」とため息が…


「誰が担当するかによって馬は変わる」

 1993年に騎手を引退し、調教師としてのキャリアをスタートさせた父がよく言っていた言葉です。開業当時、僕は小学2年生。毎日馬と遊んでいたので、そこから競馬学校に入るまでの約7年間、川田孝好厩舎の厩務員さんたちの仕事ぶりを目の前で見てきました。

「この馬はうるさいから、〇〇に担当を代える」と父が言い、しばらくすると本当に馬が変わる。「な、将雅。おとなしくなってきただろ」という父の言葉とともに、幾度となく“人が馬を変える”瞬間に立ち会ってきたように思います。

 馬にも当然、本質的な性格があるので、すべての馬に当てはまるわけではありませんが、傾向として実感しているのは、穏やかな人物が担当すれば、その馬も穏やかになっていくこと。

 逆に、常にイライラしているような人が担当すれば、そのイライラは馬にもうつる。気性の変化だけで、飛躍的に競走成績が向上するほど簡単なことではないにしても、馬だってストレスなく日々を穏やかに過ごしたほうがいい。イライラしたところで、ひとつもいいことはありません。

 これまで多くのホースマンのさまざまな技術に接してきましたが、なかでも厩務員さんの一番大切な仕事は、担当馬の心身の健康管理だと僕は思っています。どんなに穏やかな人で、それが馬に好影響を与えたとしても、身体や脚元、メンタルの管理をしっかり行えなければ、当然トラブルが発生し、走るものも走らなくなる。

 馬は生き物なので、一日として同じ状態の日はありません。だからこそ、その日々の変化にどれだけ気づけるか、気づいた変化にどれだけ正しい対応ができるか。接し方や治療の仕方など、その馬のことを正しく理解し、そのときに必要なものを必要なタイミングで与える。それが厩務員さんの技術だと僕は思います。

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1985年10月15日、佐賀県生まれ。曾祖父、祖父、父、伯父が調教師という競馬一家。2004年にデビュー。同期は藤岡佑介、津村明秀、吉田隼人ら。2008年にキャプテントゥーレで皐月賞を勝利し、GI及びクラシック競走初制覇を飾る。2016年にマカヒキで日本ダービーを勝利し、ダービージョッキーとなると共に史上8人目のクラシック競走完全制覇を達成。

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