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【ハヤヤッコ×田村亮平助手】白毛はお手入れが大変!? “ヤッコちゃん”はシャンプー嫌い!

  • 2022年08月14日(日) 18時02分
今週のFace

▲にっこり笑うハヤヤッコと担当の田村亮平助手(撮影:山中博喜)


函館記念を制し、芝・ダート両重賞制覇を達成した白毛のハヤヤッコ。馬名の由来は「速くて白い」。現役では7頭しかいない希少な毛色ですが、白いからこその苦労もあるとか…。ソダシとの白毛対決としても話題になっている札幌記念を前に、担当する田村亮平助手にお話をうかがいました。

(取材・文=佐々木祥恵)

砂を被ってタフな競馬をしてきたことで、逞しくなってきた!


──まず重賞2勝目となった函館記念を振り返っていただけますか?

田村 レース当時は雨で馬場も悪かったのでハヤヤッコには向いているかなと思っていました。ダートでは追い込みで勝ってきたので、騎手が乗り替わるとどうしても後ろからの競馬になりがちだったのですが、先生とも相談しまして「日経賞のような競馬が理想なので、ポジションを主張してほしい」という話を浜中騎手にしました。ジョッキーもそういうイメージを持っていたようで、スタートから結構押していってくれて、こちらが考えていた位置取りだったので良いなと思って見ていました。4コーナーを回ってきた時に他の馬の騎手の手が動いているのに、ハヤヤッコは持ったままで1頭上がってきたので、少し興奮していましたね(笑)。

──ではそのあたりで勝てるかもしれないと?

田村 そうですね。スタンドで観ていたのですけど、直線で外からやはり道悪がうまいマイネル(ウィルトス)が来てどうかなと思いましたが、直線での手応えや脚色から一緒に観ていた根岸君(かつてアーモンドアイを担当)と2人で、勝っちゃう、勝っちゃうと…。(ゴールした時には)僕がもう大興奮で、根岸君に抱きついていました(笑)。根岸君は戸惑っていましたけど(笑)。

──そんなに大喜びをされたんですね!

田村 僕、この仕事を始めて25年目なのですけど、重賞を勝つのが初めてだったんです。

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▲函館記念が田村助手の重賞初勝利となった(c)netkeiba.com


──レパードSの時は?

田村 他の馬で函館記念を使いにきていて、その1走に関しては福田さんが担当でした。なので今回初めてグレードがつくレースを勝てたんです。

──デビューは芝でしたが、長らくダートを主戦場にしていましたよね? 芝に戻した理由を教えてください。


田村 去年の春にスレイプニルSを勝った時も58キロだったのですが、オープン特別だと59キロくらいの斤量を背負ってしまってかわいそうですし、かといって重賞の一線級が相手になると、展開に恵まれないと少し厳しい感じもしていました。未勝利を芝で勝っているように芝でもやれる馬なので、ある程度距離のある芝のレースを使ってみたいと先生に話をしてみました。先生も同じことを考えていたようで、オーナーにも言ってくれて日経賞を使うことになりました。

──なかなか手応えのあるレースでしたね?

田村 あの時も渋い馬場でしたけど結構良いメンバーの中で最後伸びてきていて、内容のあるレースでした。先生もニコニコしていましたし、良い競馬だったので先が開けたと思いました。

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▲良いレース内容に、国枝調教師も笑顔に ※写真はレパードS(撮影:下野雄規)


──日経賞の後は3200mの春の天皇賞も使っていますが、距離適性はどうでしょう?

田村 2000m〜2400mくらいがいいのかなと思います。2000mより短いと追走が忙しくなりそうですし、天皇賞を見ると2400mより長いのもこの馬には堪えるのかなと思いましたね。

──以前と比べて最も成長したと思われる点はありますか?

田村 デビューの頃から40キロほど増えてきて、馬体もどんどん男馬らしくなってきました。去年くらいから体は完成してきたという印象で、周りの馬にガーッと行くようなところも出てきて気性面でも勝ち気になってきました。それに伴って色気も出てきて、女馬を見ると鳴いたりと、男の子らしくなってきたなという感じは受けます。

──その成長が成績にも繋がってきているのかもしれないですね?

田村 ダートの長い距離で追い込んできていたこともあり、道中は砂を被りながらタフな競馬をずっとしてきましたので、逞しくなってきたのだと思います。

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▲これまでのレース経験から逞しくなったハヤヤッコ(撮影:下野雄規)


シャンプーが嫌いで怒るヤッコちゃん


──砂を被ってという話も出ましたが、白毛だと他の毛色と違ってお手入れもなかなか大変なのではないでしょうか?

田村 大変なんですよ(笑)。でも付き合いが長いので、だいぶ大変とは感じなくなってきましたよね。これがハヤヤッコと僕の日常と言いますか。函館でアオラキの(担当の)中川君とも喋るのですけど、同じようなことを言っていました。

──お手入れは他の毛色の馬より時間はかかるのですか?

田村 普通は馬装をするのに15分くらいで済ませるところを、ハヤヤッコの時はそれよりも10分くらい先に始めないと終わらないですね。だからと言って早くやり過ぎてしまうと汚すんですよ。今日(取材日・8月11日)も馬体にボロ(馬糞)を付けて汚かったので、先にシャンプーしてきれいに洗ったんです。その後に他の馬の手伝いを15分ほどして戻ったら、また寝転がってボロをつけられちゃって(笑)。朝から2回手入れをしました。

──それは大変でしたね。

田村 それにシャンプーは嫌いみたいです。馬は多分洗ってほしくはないのだと思うんです。汚れを落とそうとしてゴシゴシこすりますし、他の馬よりシャンプーの頻度が1.5倍くらい多いですし…。だからシャンプーの時は脚が飛んできたり、隙をついて噛みついてきたりと怒っています(笑)。

──どんな性格なのですか?

田村 性格的にキツいところはありますね。常歩の時に一生懸命歩きます。パドックでもグイグイグイグイ引っ張るように歩きます。普段乗り運動をしていても、すごく歩くのが速いんです。それを抑えようとするとかえってチャカチャカしてしまいますし、あまりチャカチャカすると背中が痛くなってしまうんです。そうなると成績が上がらないので、できるだけ落ち着かせて運動をしたいなと考えています。函館では大人しく歩ける場所を見つけましたので、そこで運動をしています。

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▲名前の通り、歩くのも速い!(c)netkeiba.com


──厩舎ではどうなんでしょう?

田村 函館に着いた初日に、ハヤヤッコの脚を拭いていたら、鼻を蹴られて少し鼻が曲がっちゃって大変でした(笑)。多分、環境が変わって興奮していたのだと思いますけど、すぐに前脚や後ろ脚が出ちゃうんですよね。やるな、とわかってはいるのですが、何十回に1回くらい食らってしまって。また良い角度で脚が飛んでくるんですよ。

──馬房でもそんな感じなのですか?

田村 馬房でもなかなかやってくれますね(笑)。基本的には構ってほしいタイプなので遊んでほしくて、いけば顔を出してきます。でも近づいていくと噛みついてきたり。馬的にはちょっかいを出しているだけだと思うのですけどね。

──普段、どのように呼んでいるのですか?

田村 ヤッコとかヤッコちゃんですね。

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▲函館競馬場で運動中の“ヤッコちゃん”(撮影:山中博喜)


──函館にハヤヤッコの他に、ソダシ、アオラキと白毛馬が3頭入厩していて、調教を終えた3頭がパドックに勢ぞろいしたことがありましたね? 馬同士、意識しているような感じはありましたか?

田村 3頭集まったのは1回だけだったと思いますけど、男馬(ハヤヤッコ、アオラキ)と女馬(ソダシ)ですし、ソダシの方がこちらからしたら格上の馬なのでトラブルがあってもいけないと思っていたのですが、パドックで3頭集まった時に、アオラキの中川助手に「ソダシのところに行ってみようか」と話をして。ソダシの北村助手も皆喜んでくれるんじゃないか、ということであのような形になりました。新聞にも載りましたね。馬同士は特に意識はしていないのではないかと思います。

──次は札幌記念となるわけですが、最後に抱負をお願いいたします。

田村 丈夫なのがこの馬のセールスポイントなので、順調に無事に走っていれば函館記念のように馬場が渋ってチャンスが巡ってくることもあると思います。今年の夏は一仕事しましたので、札幌記念もまずは無事に走ってほしいと思っています。

(文中敬称略)

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