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【新潟2歳S】日本で一世紀近くも存続してきた伝統の牝系の勝利

  • 2022年08月29日(月) 18時00分

あえての連闘策で結果を出した2頭


重賞レース回顧

連闘で挑んだキタウイングが重賞初制覇(C)netkeiba.com、撮影:下野雄規


 今年の新潟2歳Sには6場「小倉、新潟、福島、函館、東京、笠松(移籍)」で勝ち上がった馬に、未勝利馬も加わる不思議な組み合わせだった。レースの評価が上がったので各地から集まったのではないだろう。逆かもしれない。とりわけ暑い夏に無理をしたくない陣営が多かったのか、1600mになった2002年以降、史上最少出走数タイの11頭立てだった。

 勝ったのは21日に2戦目で勝ったばかりのキタウイング(父ダノンバラード)。

 2着も同じ21日の未勝利戦を勝ち上がったばかりのウインオーディン。ともに連闘使いであり、連闘馬が勝ったのも、2着したのも、1600mになった2002年以降初めてのことだった。

 おそらく強敵は揃わないだろう、そう察知して遠征に踏み切った陣営も、あえて連闘使いでメンバーの揃わないここで結果(早めに賞金加算)に結びつけようとした強気な読みも、痛快な結果をもたらしたから鮮やかだった。

 どの馬が、どのレースを使おうとしているかを見極めるのは、陣営(調教師)の手腕になる。手薄な組み合わせを探す機動力が勝ち星に結びつく。

 間隔を取り、入念な仕上げで必勝態勢に持ち込む手法が多くなったが、一方、もっとタフな馬に育て上げようとするのも陣営に求められる重要なテーマである。あえての連闘策で結果を出した2頭の今後に注目したい。

 少なくとも強敵は少ないだろう、という読みはその通りだった。コースの特徴が知れ渡るほどに外回りの新潟1600mが前半スローで流れるのは必然ではあるが、今年のレースバランスは前後半「49秒7-(1000m通過62秒2)-46秒2」=1分35秒9だった。1000m通過が62秒台になったのが初めてなら、全体タイムが1分35秒9まで落ち込んだのも1600mの新潟2歳S(不良馬場も含めて)初めてだった。

 5レースの2歳新馬戦1600m(稍重)の勝ち時計が「60秒6-34秒9」=1分35秒5だった。レースの流れはともかく、2歳Sのレースレベルが標準とはとてもいえないが、きつい日程をこなした1-2着馬の成長には注目したい。

 勝った牝馬キタウイングは、流転の種牡馬として注目度の高まったダノンバラード(父ディープインパクト)の日本に帰国しての初年度産駒。これがJRA初重賞制覇だった。ファミリーはもう日本で一世紀近くも存続してきた伝統の牝系。おそらくタフだろう。

 2着ウインオーディンは活躍するエピファネイア産駒のパターン通りサンデーサイレンスの「4×3」。勝ち馬に巧みに内をすくわれた結果、半馬身差だけ。これからの成長に期待したい。

 3着シーウィザード(父ビーチパトロール)は、同じ鹿戸雄一厩舎の2着馬とはレースキャリアの差だけだろう。一旦は差し切ったと思えるシーンもあった。父母両系の血統背景から、ダート戦も苦にしないと思える。

 1番人気のアイスグリーン(父モーリス)は、バランスが取れたシャープな体つきは光ったが、すんなり流れに乗れたわりに追ってもう一歩。半姉のディアンドルよりまだ完成度が低かった。

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1948年、長野県出身、早稲田大卒。1973年に日刊競馬に入社。UHFテレビ競馬中継解説者時代から、長年に渡って独自のスタンスと多様な角度からレースを推理し、競馬を語り続ける。netkeiba.com、競馬総合チャンネルでは、土曜メインレース展望(金曜18時)、日曜メインレース展望(土曜18時)、重賞レース回顧(月曜18時)の執筆を担当。

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