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【新潟記念・小倉2歳S】活躍の場は確実に広がったベテラン6歳馬

  • 2022年09月05日(月) 18時00分

秋の古馬中距離路線での活躍も期待


重賞レース回顧

しばらくぶりの中距離2000mで2つ目の重賞制覇をしたカラテ(C)netkeiba.com、撮影:下野雄規


 古馬ハンデ戦の新潟記念が波乱になるのは珍しいことではなく、今年は6歳牡馬カラテ(父トゥザグローリー)が57.5キロのトップハンデを克服して快勝。5歳以降はずっと1600-1800mに出走していたが、3歳の未勝利戦以来、実にしばらくぶりに中距離2000mで勝った。

 高速決着のマイル戦から、距離の幅を広げて2つ目の重賞制覇を達成したことにより、ベテラン6歳馬ではあるが、活躍の場は確実に広がった。完成の域に達したこと、今春からの転厩による調整手法の変化もカラテにとって転機だった。

 これでコンビの菅原明良騎手と【5-2-1-5】。関東から関西に転厩はしたが、「一番カラテを知っているジョッキーはかえたくなかった(辻野泰之調教師)」というレースへの細心の配慮も大きなプラスを呼んだ。中団から早めに抜け出して上がり33秒3。秋の古馬中距離路線での活躍も期待できる。

 8勝した父トゥザグローリー(その父キングカメハメハ)は、7歳時まで中距離重賞路線で活躍したタフな馬だった。牝系はさらにタフで丈夫だったステイゴールド(祖母レイサッシュの半兄)が代表するファミリーでもある。

 7歳ユーキャンスマイル(父キングカメハメハ)の大外強襲も見事だったが、ただ1頭の3歳牡馬フェーングロッテン(父ブラックタイド)の3着好走は光った。

 かつては軽ハンデの3歳馬が好走した時代もあったが、最近20年間では2018年のブラストワンピース(のちの有馬記念馬)に次いで2頭目だった。秋に向けて大きな展望が広がった。フェーングロッテンは、キタサンブラックとちょっと似た血統背景があり、祖母の父がサクラバクシンオーになる。

「小倉2歳S」はめったに人気上位(1、2、3番人気馬)がそろって馬券圏内から消えないが、今年は人気馬が案外だったのに対し、大変な新星が出現した。

 同日の芝1200m戦3鞍が「1分07秒6-9」だったことから、1分08秒1だったレースレベルを疑問視する見方もあったが、勝ったロンドンプラン(父グレーターロンドン)のレースの中身は際立っている。

 4番人気にとどまったのは、最内枠を引いてしまったため(実際、他の1200m3レースの勝ち馬はみんな外枠だった)。実際のレースでは、レース前に左前肢を落鉄する不利があり、それが影響したのか、最内枠で3-4馬身の出遅れ。

 中間600m地点でも後方集団から1頭だけ4馬身は離れた最後方追走だった。そこから4コーナーで馬群に取りつくと外に回り(最外ではなかったから狭くなる場面もあった)、文字通り直線一気。12頭をまとめて差し切ってしまった。レース全体の前後半「33秒2-34秒9」に対し、ロンドンプランのバランスはまったく逆の「35秒0-33秒1」。同じように後方から外に出して鋭く伸びて3着したシルフィードレーヴの記録が次位の34秒2なので、1秒1も上回っていた。

 昨年の勝ち馬ナムラクレアはスプリンターズS予定の注目馬。一昨年の勝ち馬メイケイエールは、今週のセントウルSからスプリンターズS予定。小倉2歳Sから連続してのちの活躍馬が誕生しているが、この勝ち方なら、ロンドンプランのこのあとの活躍は間違いないだろう。

 父グレーターロンドン(父ディープインパクト)は中京記念など7勝。その母ロンドンブリッジは桜花賞2着馬。産駒には、オークス、クイーンCなど重賞4勝のダイワエルシエーロ(父サンデーサイレンス)がいる。

 ロンドンプランのファミリーは4代母ロイヤルコスマーを経て、Haloヘイローなどの母Cosmahコスマーにさかのぼる世界の名牝系であり、本物になるとスプリンターにとどまらない可能性が高い。

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1948年、長野県出身、早稲田大卒。1973年に日刊競馬に入社。UHFテレビ競馬中継解説者時代から、長年に渡って独自のスタンスと多様な角度からレースを推理し、競馬を語り続ける。netkeiba.com、競馬総合チャンネルでは、土曜メインレース展望(金曜18時)、日曜メインレース展望(土曜18時)、重賞レース回顧(月曜18時)の執筆を担当。

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