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【セントウルS AI予想】この条件でも侮れない! AIの注目したのは伸びしろ十分の新興勢力

  • 2022年09月05日(月) 18時00分

単勝オッズ22.0倍(10番人気)のカラテが優勝(c)netkeiba.com、撮影:下野雄規


netkeibaにある膨大な競走成績を人工知能によって機械学習するAiエスケープを開発したAIマスター・Mと、レースデータの分析を専門とする競馬評論家・伊吹雅也による今週末のメインレース展望。コンピュータの“脳”が導き出した注目馬の期待度を、人間の“脳”がさまざまな角度からチェックする。
(文・構成=伊吹雅也)

1番人気馬がまったく崩れていない点をどう見るか


AIマスターM(以下、M) 先週は新潟記念が行われ、単勝オッズ22.0倍(10番人気)のカラテが優勝を果たしました。

伊吹 鞍上の菅原明良騎手はもちろん、陣営としても会心の勝利だったのではないでしょうか。道中は中団につけ、残り400mほどの地点で早々と先頭に立ち、そのまま押し切る横綱相撲。負担重量が“トップハンデ”の57.5kgだったことを考えても、高く評価できる内容です。

M カラテは2021年の東京新聞杯などを勝っている実績馬ですが、2000m以上のレースを使うのは2020年の飯盛山特別(12着)以来で、これまでの通算成績は[1-0-0-9](3着内率10.0%)。斤量だけでなく、距離適性を理由に軽視してしまった方も多かったのではないかと思います。

伊吹 私自身も高く評価できず、お恥ずかしい限りではあるのですが、発走前の時点で「さすがに嫌われ過ぎだろう」という気はしていました。カラテ自身は6歳となった今年も年明けから好調で、1月上旬にニューイヤーSを制したほか、2月下旬の中山記念で2着に健闘。ここ2戦は上位に食い込めなかったものの、競走能力の衰えを心配しなければならないような戦績ではありません。

 そもそも、2走前のマイラーズC(7着)では単勝2番人気の支持を集めていた馬ですからね。ただ、前走の安田記念(16着)で単勝14番人気どまりだったことからもわかる通り、もともとどちらかと言えば注目を集めにくいタイプ。特殊な臨戦過程も相まって、人気の盲点になってしまったのでしょう。

M 2000mの重賞を完勝したことで、今後はレース選択の幅が広がるのではないかと思います。秋の大舞台でも目が離せませんね。

伊吹 今回は2着が中長距離戦を主戦場としてきたユーキャンスマイルでしたし、マイラー向きの展開だったということはなさそう。少なくとも、この距離は完全に守備範囲内と見て良いでしょう。天皇賞(秋)やマイルCSでも楽しみですし、もしビッグレースで結果が出せなかったとしても、再び注目度が落ちそうなその後のレースではしっかり巻き返しを警戒しておきたいところです。

M 今週の日曜中京メインレースは、サマースプリントシリーズの最終戦であり、スプリンターズSの前哨戦でもあるセントウルS。
昨年は単勝オッズ1.9倍(1番人気)のレシステンシアが優勝を果たしました。ちなみに、その2021年は3連単の配当も5320円どまり。やはり、堅く収まりがちなレースと見ておくべきなのでしょうか?

伊吹 少なくとも、人気の中心となっているような馬には逆らわない方が良さそうですね。阪神芝1200m内で施行されていた2019年以前を含め、現在のところ単勝1番人気馬が6連勝中。2012〜2015年の単勝1番人気馬も、それぞれ2着は確保しています。


M 単勝1番人気馬が強過ぎることもあってか、単勝2〜3番人気馬や単勝4〜6番人気馬の好走率はそれほど高くありませんね。

伊吹 一応付け加えておくと、単勝2番人気馬は2012年以降[1-3-2-4](3着内率60.0%)、単勝オッズ4倍未満の馬は2012年以降[6-5-0-2](3着内率84.6%)。たとえ単勝1番人気でなくとも、1番人気馬と同等の支持を集めている馬がいたら相応に高く評価すべきでしょう。

 ただ、単勝3番人気以下の馬が物足りない水準の成績にとどまっているのは確か。中途半端に注目が集まっている馬を狙うくらいなら、超人気薄の一発に期待した方が良いのかもしれません。

M そんなセントウルSでAiエスケープが指名した特別登録時点の注目馬は、ジャングロです。

伊吹 面白いところを挙げてきましたね。今回はソングラインとメイケイエールが人気を集めそうで、この馬は単勝3番人気くらいのポジションに収まりそう。先程紹介した単勝人気順別成績を見る限りだとやや心配ですが、ソングラインやメイケイエールと“三強”を形成しそうな雰囲気ですし、無理に評価を下げる必要はないでしょう。

M ジャングロは3歳馬。前走のNHKマイルCでは7着に敗れてしまったものの、2走前にニュージーランドTを勝っています。もともと1マイル未満のレースを主戦場としてきた馬で、コース替わりが嫌われることもないでしょうから、順当にいけば上位人気グループの一角を占めそうです。

伊吹 式別によっては、ソングラインやメイケイエールの支持を上回るかもしれませんね。今回も、Aiエスケープが高く評価している点を踏まえつつ、レースの傾向からこの馬の好走確率を見積もってみましょう。

M まず、馬齢が3歳である点についてはどう評価すべきだと思いますか?

伊吹 強調材料のひとつと見て良さそうです。2011年以降の過去11年まで集計対象を広げても、6歳以上の馬は苦戦していました。


M まったく勝ち切れていないうえ、連対率も2.9%どまり。高齢馬は強調できませんね。

伊吹 ちなみに、馬齢が3歳の馬は2011〜2014年こそ[1-0-0-11](3着内率8.3%)だったものの、2015年以降の過去7年に限ると[1-3-1-5](3着内率50.0%)。近年になって好走率がアップしています。

M なるほど。では、実績面についてはいかがでしょうか。

伊吹 こちらも不安視する必要はなさそうですね。2011年以降の3着以内馬33頭中24頭は、年明け以降にJRAの重賞で連対を果たしていた馬。該当馬は3着内率も45.3%に達していました。


M 一方、この経験がなかった馬は3着内率が8.1%どまり。はっきりと明暗が分かれています。

伊吹 なお“同年、かつJRA、かつ重賞のレース”において2着以内となった経験がなかったにもかかわらず3着以内となった9頭のうち6頭は、前走の着順が5着以内、かつ前走の出走頭数が17頭以上。年明け以降にJRAの重賞で連対を果たしておらず、直近のパフォーマンスも高く評価できない馬は、苦戦必至と見るべきでしょう。

M 他に注目しておくべきポイントはありますか?

伊吹 同じく2011年以降の過去11年に限ると、前走の条件がGI・GIIだった馬は[5-3-2-17](3着内率37.0%)とまずまず堅実。一方、前走の条件がGI・GII以外、かつ前走の着順が2着以下、かつ前走の1位入線馬とのタイム差が0.4秒以上だった馬はあまり上位に食い込めていません。


M NHKマイルCから直行してきたジャングロは、臨戦過程も問題なしと見て良さそうですね。

伊吹 キャリアの浅い3歳馬ではありますが、格上の存在と言って良いのではないでしょうか。

M Aiエスケープが有力視しているだけでなく、レースの傾向からも魅力十分──という結論に達しました。

伊吹 試金石の一戦とはいえ、勝ち切るチャンスは十分にあると思いますよ。ただ、Aiエスケープや私の見立てを突き詰めていくと、今年のセントウルSは極端な低額配当で決着する可能性が高そう。なんとか利益を捻り出せるよう、買い目にひと工夫を加えたいところです。

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競馬評論家。JRAの公式ホームページ内「今週の注目レース」にて“データ分析”のコーナーを、TCK(東京シティ競馬)の公式ホームページ内「分析レポート」にて重賞競走のデータ分析を担当しているほか、グリーンチャンネル、JRAのレーシングプログラム、『週刊アサヒ芸能』、『競馬王』などさまざまなメディアを舞台に活動している。主な著作に『WIN5攻略全書 回収率150%超!“ミスターWIN5”のマインドセット』、『コース別 本当に儲かる騎手大全』シリーズ、『コース別 本当に儲かる血統大全』シリーズ、『ウルトラ回収率』シリーズ(いずれもガイドワークス)など。

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