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凱旋門賞戦線も大詰め 欧州各地でトライアル開催

  • 2022年09月07日(水) 12時00分

愛チャンピオンSの中心は仏ダービー馬ヴァデニ


 今週後半、ヨーロッパの競馬ファンは大忙しである。イギリスでは、7日から10日までドンカスターで「セントレジャー・フェスティヴァル」が開催され、メイン競走となる10日のG1セントレジャーを含めて8つの重賞が組まれている。

 お隣りのアイルランドでは、土日の2日間にわたってレパーズタウンとカラで、6つのG1を含む10の重賞が組まれた「アイリッシュ・チャンピオンズ・ウィークエンド」があり、フランスでは11日に、G1ヴェルメイユ賞を含む5つの重賞が組まれた「アークトライアルデー」が開催される。

 日本の競馬ファンの目は、ドウデュースが出走するG2ニエル賞やマイラプソディが出走するG2フォワ賞が行われる、11日のフランスに向きがちだとは思うが、ここでは、10日にドンカスターで行われる開催のメイン競走と、同じく10日にレパーズタウンで行われる開催のメイン競走を展望したい。

 ドンカスターにおける4日間開催を締めくくるのが、G1セントレジャー(芝14F115y)だ。ご存知、イギリスにおける3歳3冠の最終戦である。

 イギリスにおける3冠馬は1970年のニジンスキー以来、半世紀以上にわたって出現しておらず、これに挑戦する馬すら、2012年のキャメロットを最後に途絶えている。

 今年も、G1・2000ギニー勝ち馬コロエバスは、その後マイル戦線を歩み(※9月4日のG1ムーランドロンシャン賞で事故死)、G1英ダービー勝ち馬デザートクラウンは、蹄を傷めて年内休養と、ドンカスターにその姿はない。

 そのセントレジャーで圧倒的1番人気が予想されるのが、ゴドルフィンのニューロンドン(牡3、父ドバウィ)だ。 
 
 生産したのもゴドルフィンであるニューロンドンは、全兄にG3コンデ賞(芝1800m)2着など4重賞で入着したアルダバラン、従兄弟にG1凱旋門賞馬ヴァルトガイストらがいる牝系の出身。

 C.アップルビー厩舎から2歳10月にデビュー。2連勝後、重賞初挑戦となったG3チェスターヴァーズ(芝12F63y)で2着となるも、英ダービーは回避。ニューマーケットのジュライ開催でハンデ戦(芝10F)に出走して快勝後、前走グッドウッドのG3ゴードンS(芝11F218y)を制し、重賞初制覇を果している。

 同馬はG1凱旋門賞にエントリーをしており、セントレジャーの結果と内容次第では、このあと凱旋門賞に向かう可能性も残されている。

 ブックメーカー各社は、セントレジャーへ向けた前売りで、ニューロンドンにオッズ1.72〜1.8倍を提示。

 ロイヤルアスコットのG2クイーンズヴァーズ(芝14F34y)勝ち馬で、その後G1パリ大賞(芝2400m)は4着だったエルダーエルダロヴ(牡3、父ドバウィ)を、オッズ5〜6倍の2番手評価としている。

 一方、アイリッシュチャンピンズウイークエンド初日のメイン競走として開催されるのが、G1愛チャンピオンS(芝10F)だ。

 10F路線転進初戦だったG1インターナショナルS(10F56y)で超絶パフォーマンスを見せたバーイードこそ不在だが、それでも、分厚いメンバー構成となっている。

 ブックメーカー各社が2.376〜2.5倍のオッズを掲げて1番人気に推すのは、フランス調教馬のヴァデニ(牡3、父チャーチル)だ。

 アガ・カーン殿下の自家生産馬で、祖母がG1サンタラリ賞(芝2000m)勝ち馬ヴァダウィーナという血統背景を持つ同馬。2歳7月にJ・C.ルジェ厩舎からデビュー。

 3歳2戦目となったG3ギシェ賞(芝1800m)を制して重賞初制覇を果たすと、続くG1仏ダービー(芝2100m)を快勝してクラシック制覇。

 その後、7月2日にサンダウンで行われたG1エクリプスS(芝9F209y)に、追加登録を行って出走。ミシュリフを筆頭とした古馬の精鋭をなで斬りにして、G1連勝を果たした。ここはそれ以来、2カ月ぶりの出走となる。

 ついで、オッズ4.5〜5.0倍で2番人気に推されているのが、J&T.ゴスデン厩舎のミシュリフ(牡5、父メイクビリーヴ)だ。

 自身の連覇を狙った今季初戦のG1サウジC(d1800m)で14着という大敗を喫すると、じっくりと立て直しが図られ、7月2日のG1エクリプスSで戦線に復帰。

 出遅れながらもゴール前で猛然と追い込み、ヴァデニに首差の2着に入って、健在ぶりを示した。

 続くG1キングジョージ6世&クイーンエリザベスS(芝11F211y)でも出遅れて、ここはパイルドライヴァーに大きく水をあけられた3着に敗れた後、前走ヨークのG1インターナショナルS(芝10F67y)ではまともなスタートを切り、バーイードには歯が立たなかったものの、ドバイオナー以下はきっちりと抑え込んで2着を確保した。

 続いて、オッズ5〜6倍という差のないオッズで3番手評価となっているのが、A.オブライエン厩舎の3歳馬ルクセンブルク(牡3、父キャメロット)だ。

 2歳時は3戦し、G1フューチュリティトロフィー(芝8F)を含む3連勝をマークし、今年のクラシック候補と目された同馬。3歳初戦となったG1英2000ギニー(芝8F)3着後、G1英ダービーを目指しての調教中に筋肉を傷め、ダービーを断念。

 その後立て直しが図られ、3か月半ぶりの復帰戦となったのが、8月13日にカラで行われたG3ロイヤルホイップS(芝10F)で、ここを白星で通過しての参戦となっている。

 さらに、オッズ8〜9倍の4番手評価が、F.シャペ厩舎の3歳馬オネスト(牡3、フランケル)だ。

 3歳2戦目のG2グレフュール賞(芝2100m)を制し、重賞初制覇を果して臨んだG1仏ダービーは5着に敗れたものの、その後、7月14日にパリロンシャンで行われたG1パリ大賞(芝2400m)を快勝した。

 その後はG2ニエル賞というのが大方の見るところだったが、陣営はこの馬の10F路線における可能性を再度試したいとして、こちらに向かってくることになったものだ。

 今週は、ヨーロッパの競馬から離せないことになりそうだ。

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1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

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