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小牧太騎手、待ちに待った今年初勝利! 現役引退についてファンの方へ「もう思い残すことは……なんちゃって(笑)」

  • 2022年09月06日(火) 18時02分
太論

▲9月4日の小倉6Rで遂に今年初勝利!(c)netkeiba.com


先週日曜日、ついに待ちに待った“その瞬間”が訪れました。しかも、後続を5馬身もぶっち切っての圧巻の勝利! 小牧騎手にとってはもちろん、ワンダーブレットにとっても大きな大きな1勝となりました。さて、以前『太論』にて「1勝もできなかったら引退」と進退に言及した小牧騎手。「これで引退撤回ですよね?」というファンからの問いかけに対し、はたして小牧騎手の答えは…!? そのほか「自分以上に喜んでくれた」という家族や友人、ジョッキー仲間たちとの心温まるエピソードを明かしてくれました。

(取材・文:不破由妃子)

※このインタビューは電話取材で実施しました。

今週は52キロ、小牧太は次に向けてもうスタートしています!


──ワンダーブレットでついに今年初勝利(9月4日・小倉6R・3歳未勝利)。おめでとうございます!!!

小牧 ありがとう。ちょうど1年ぶりやったんやなぁ。前回勝ったのは、去年の9月5日だったでしょ?

──そうですね。2021年9月5日、小倉8Rのフチサンメルチャン。

小牧 不思議な巡り合わせやね。僕自身、ものすごくうれしかったんやけど、何より周りの人が喜んでくれたことが一番うれしかった。横山ノリちゃんなんか、検量室の外でわざわざ待っとってくれて、すごく喜んでくれた。このご時世やからグータッチしかできなかったけど、なんかね、ジーンときたわ。

──そのシーン、見たかった…。

小牧 石橋守調教師もね、普段はあんまり喋らへん人なのに、「よかったー!」言うて、わざわざ僕のところにきてくれて。

──横山典弘騎手も石橋守調教師も、同世代ですものね。

小牧 そうやね。僕も冷静だったわけではないけど、周りのみんなが自分以上に喜んでくれていて、そんな姿を見ているのが幸せやった。新聞記者の人たちも7、8人が下りてきてくれて、囲み取材があってね。「辞めんでよかった」って言うたわ。ファンの人たちも、温かい拍手で迎えてくれてね。なんか重賞を勝ったときみたいな感じやった。この場を借りて、本当にありがとうございました。

 弟の毅はちょうど宮崎に帰っていて、母親と親戚と3人でレースを観ていたらしくて。僕が勝ったあと、馬主の伊藤(永二郎氏)さんが毅に電話をしたら、3人で号泣してたって。伊藤さんから、「小牧家、どうした!」ってメールが入ってたわ(笑)。本当に大きな1勝やったね。まぁこうしてひとつ勝てたことで、心置きなく辞められるよ。

──えっ?

小牧 とか言っちゃって(笑)。

──もう……勘弁してくださいよ!

小牧 こんなにみんなに喜んでもらえるんやったら、辞める辞める詐欺でいこうかなと思ったり(笑)。とにかくね、周りの反応も含めて、桜花賞を勝ったときの次くらいうれしかったわ。

太論

▲小牧騎手の初勝利にみんなが祝福(写真左は小牧騎手を長年支え続けた笹田和秀師)(c)netkeiba.com


──しかもあの勝ちっぷりですからね(5馬身差の圧勝)。

小牧 なんであんなに強くなったんやろ…。馬って変わるもんやね。調子がよかったのは間違いないけど、それ以前に能力があったんやわ、あの馬。

──連闘でしたが、状態はキープできていたんですか?

小牧 うん。中間の調教は、すべて僕に任せてくれてね。疲れを残したまま行くのは嫌やったから、時計にならないところをゆっくりやりました。2日しか乗れんかったけど、状態はよかったよ。当日も元気いっぱいやった。

──課題のスタートもポンと出て。

小牧 ゲートのなかでゴソゴソしていたから、また出遅れるんかな…なんて思っていたけど、上手いことよう出たわ。道中も抜群の手応えでね。レースであんなに引っ張ったのは久しぶりや。

──4コーナーで後ろを確認する余裕もありましたね。

小牧 誰もこないなぁ、こんなに楽でいいんかなぁと思って。でも、前走みたいなこともあるから、直線はしっかり追いました。もう必死やったけど、勝ちを確信してからは「ガッツポーズせなアカンな」と思いながら(笑)。

──キレのあるガッツポーズ、決まりましたね。

小牧 きれいやったねぇ(笑)。前走が強い競馬やったから、当然期待はしていたけど、なんせ人間が1年も勝っていなかったから、「よし、勝ったろう!」みたいな強気にはなれんかった。負けることに慣れてしまってねぇ…、どうしても「そんなに甘くないやろ」という気持ちが先立ってしまって。だから逆に、イレ込まずに済んだところはあるんやけどね、僕が。

 それでもやっぱり勝ちを意識していたから、ゲート裏では「35年も乗っているのに、こんなんで緊張しとったらアカン」と自分に言い聞かせてた。そういう気持ちやった。

太論

▲キレのあるガッツポーズ(c)netkeiba.com


──ファンの方たちからも、たくさん祝福のメッセージが届いていますよ。全部は紹介し切れないのですが、一部を掲載します。

「ワンダーブレット号での勝利、おめでとうございます!大きな大きな1勝ですね…本当に。小牧さん、もう一丁! これからも馬たちと共に駆け抜けていってください!」

「これで引退撤回ですね。ファンとして安堵いたしました。この勢いでもう1勝お願いします!」

「小牧さん、おめでとうございます!! 毎週太論を読んでいて、とにかく勝ってほしいと毎週毎週願っていました。今日は小牧さんにちなんで鹿児島の焼酎を飲みます」

「次の太論が楽しみです! ぜひこれまで言えなかった本音をぶちまけてください!」

 などなど…。やはり一番多かったのが、「これで引退撤回ですよね!?」というメッセージでした。

小牧 ところがどっこいって書いておいてよ。もう思い残すことはないと。最後にちゃんと「なんちゃって」をつけてね(笑)。

──「辞める辞める詐欺」を楽しんでるし(苦笑)。

小牧 まさかね、1勝もできないなんていうことはないやろうなと思っていたから。いっぽうで、もしひとつも勝てんかったら辞めるしかないかなという気持ちもあったし、もし0勝で終わっても、それこそ「辞める辞める詐欺」で続けるのもいいなと思ったり。考える時間は、たっぷりあったからね。いろんなことを考えた1年やった。

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▲「いろんなことを考えた1年やった」(c)netkeiba.com


──そういえば小牧さん、声にお酒が残っていませんね。今日(月曜日)は絶対に二日酔いだろうなと思っていたのに。

小牧 もう1時間くらいランニングしてきたよ。あんまりサウナで無理に落としたくないから、今週は月曜日からちょっとずつ落としていこうって決めてた。たぶん52キロやからね。

──ああ、京成杯AHのレインボーフラッグ!

小牧 うん。乗るからにはね、万全の体調で頑張りますわ。ここまできたら、いつ辞めるかわからんし、普通に生きていたらこんなに減量することなんてないからね。あんなにつらかった減量も、最近はなんか楽しめてる。というわけで、小牧太は次に向けてもうスタートしています。なんかカッコいいな(笑)。

──最後のセリフは私に言わせてくださいよ(笑)。今週はもうひとつ、おめでたいことがありますね。9月7日は55歳の誕生日!

小牧 うん。今週は減量に集中したいから、お祝いしてもらうにしても来週やね。そういえば、日曜日の夜に川須(栄彦騎手)と淨閑さん(小牧騎手のパーソナルトレーナー)が「54歳最後の勝利」を記念して、ビールを54本買って家まで届けてくれた。

──素敵なエピソード!

小牧 ねぇ。むっちゃうれしかったわ。今週は52キロがあるから、我慢、我慢。誕生日祝いと合わせて、来週吐くまで飲ませてもらいますわ(笑)。

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▲「来週吐くまで飲ませてもらいますわ(笑)」(提供:小牧太騎手)


(文中敬称略)
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1967年9月7日、鹿児島県生まれ。1985年に公営・園田競馬でデビュー。名伯楽・曾和直榮調教師の元で腕を磨き、10度の兵庫リーディングと2度の全国リーディングを獲得。2004年にJRAに移籍。2008年には桜花賞をレジネッタで制し悲願のGI制覇を遂げた。その後もローズキングダムとのコンビで朝日杯FSを制するなど、今や大舞台には欠かせないジョッキーとして活躍中。

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