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凱旋門賞前哨戦の結果と振り返り

  • 2022年09月14日(水) 12時00分
アルピニスタ

ヨークシャーオークスを制したアルピニスタは現在3番人気(写真提供:At The Races)




各地で名を挙げる出走予定馬 迫る凱旋門賞


 先週末に英国・愛国・仏国で行われたいくつかの競走をもって、10月2日にパリロンシャンで行われるG1凱旋門賞(芝2400m)へ向けた前哨戦がほぼ終了した。

 そこで今週のこのコラムでは、前哨戦の内容と結果を、時系列に沿って検証してみたい。

 8月18日にヨークで行われた牝馬のG1ヨークシャーオークス(芝11F188y)は、オッズ2.75倍の1番人気に応えてアルピニスタ(牝5、父フランケル)が優勝した。

 4歳だった昨季後半は、ドイツにおけるこの路線のG1を3連勝した同馬。今季初戦となったG1サンクルー大賞(芝2400m)も白星で通過しており、これでG1・5連勝となった。

 陣営は、このあとはG1凱旋門賞に直行すると明言しており、ブックメーカー各社は同馬に7.0〜8.5倍のオッズを提示し、前売り3番人気としている。

 8月28日にドーヴィルで行なわれたG2ドーヴィル大賞(芝2500m)を制したのも、1番人気(2.2倍)に推されていたボタニク(セン4、父ゴールデンホーン)だったが、同馬はセン馬のためG1凱旋門賞の出走資格はない。

 一方、ここで勝ち馬から1.1/4馬身差の2着となったステイフーリッシュ(牡7、父ステイゴールド)は、予定通りG1凱旋門賞に向かうことになる。

 ここは2カ月の休み明けで、なおかつ初コース。さらに、逃げて2番手につけた勝ち馬の目標にされてしまうというきつい展開となっただけに、前哨戦の内容としては悪いものではなかったと思う。しかし、ブックメーカー各社の前売りでは、オッズ34〜67倍という低評価となっている。

 9月4日にバーデンバーデンで行われたG1バーデン大賞(芝2400m)には、前年に続くG1凱旋門賞連覇を狙うトルカータータッソ(牡5、父アドラーフルーク)が出走。オッズ1.4倍の1番人気に推された。

 想定されていた通りのスローペースになった中、ヨーイドンの瞬発力勝負になっては分が悪いとみた鞍上のL.デットーリが、3コーナーすぎから自ら仕掛けて消耗戦に持ち込む策に出た。

 だが、トルカータータッソは、道中4頭立ての4番手から直線大外を追い込んだメンドシノ(牡4、父アドラーフルーク)に頭差競り負けて2着に敗れた。

 ここまで重賞未勝利で、G1で重賞初制覇を果たしたメンドシノは、実はG1凱旋門賞のエントリーを保持しており、出走してくる可能性がある。ただし、人気は全くない。

 不向きな流れを何とか克服して2着に入ったトルカータータッソは、前哨戦の内容としては悪くなかったと思う。元来がひと叩きされて調子を上げるタイプで、本番ではもう一段上のパフォーマンスを見せるはずだ。オッズ7.5〜11倍の3〜5番人気。

 9月10日にレパーズタウンで行われたG1愛チャンピオンS(芝10F)は、上位3着まで3歳馬が占めることになった。勝ったのは、2番人気(4.5倍)のルクセンブルク(牡3、父キャメロット)だった。

 2歳時にG1フューチュリティトロフィー(芝8F)を含む無敗の3連勝をマークし、春のクラシック最有力候補と目された馬だが、3歳初戦のG1英2000ギニー(芝8F)で3着に敗れた後、筋肉の損傷を発症して戦線を離脱。前売り1番人気に推されていたG1英ダービー(芝12F6y)は回避している。

 戦線に戻ったのは8月で、その後は、G3ロイヤルホイップS(芝10F)、G1愛チャンピオンSで、いずれも古馬勢を撃破して勝利し、2歳時の評価が正しかったことを実証した。2400mは走った経験がないが、父は英国と愛国のダービーを制している馬で、守備範囲にある距離と見られている。オッズ6〜7倍の2番人気。

 2着オネスト(牡3、父フランケル)は、7月14日にG1凱旋門賞と同コース・同距離で行われたG1パリ大賞(芝2400m)の勝ち馬。

 後述するが、パリ大賞2着のシムカミル(牡3、父タマユズ)が11日にパリロンシャンで行われたG2ニエル賞(芝2400m)を、パリ大賞4着のエルダーエルダロフ(牡3、父ドバウィ)が同じく11日にドンカスターで行われたG1英セントレジャー(芝14F115y)を制し、パリ大賞の内容が再評価されている。オネストも次走はG1凱旋門賞の予定で、オッズ10〜15倍の5〜7番人気。

 G1仏ダービー(芝2100m)、G1エクリプスS(芝9F209y)に続く、G1・3連勝を狙っての参戦だったヴァデニ(牡3、父チャーチル)は、1番人気(2.75倍)を裏切り3着に敗れた。

 だが、3カ月の休み明けだったことを考慮すれば、悲観する内容ではなかったと思う。そして同馬もG1凱旋門賞にエントリーしているが、路線としては、10月15日のG1チャンピオンS(芝9F212y)に廻る公算が大きいと見られている。

 ストーンエイジ(牡3、父ガリレオ)が平均以上のペースで引っ張った愛チャンピオンSは、締まった内容になり、一連の前哨戦の中では、最も水準が高かったレースと見ている。

 11日にパリロンシャンで行われた、古馬によるG2フォワ賞(芝2400m)を制したイレジーン(セン5、父マンデュロ)は、セン馬のためG1凱旋門賞の出走資格はない。1番人気(2.6倍)で2着となったバブルギフト(牡4、父ナサニエル)は、G1凱旋門賞に向かう予定。

 また、欧州移籍初戦だったG1ジャンロマネ賞(芝2000m)では見せ場なく最下位に敗れたベリーエレガント(牝7、父シド)も、ここは勝ち馬から1.1/4馬身+頭差の3着に入り、なんとか恰好をつけることが出来た。

 同馬は、G1凱旋門賞前日にパリロンシャンで行われるG1ロワイヤリュー賞(芝2800m)に登録されているが、追加登録を行ってG1凱旋門賞に出走する可能性も、まだ残されている。

 同じく11日にパリロンシャンで行われた牝馬のG1ヴェルメイユ賞(芝2400m)を逃げ切り、待望のG1初制覇を果したスウィートレディ(牝4、父ロペデヴェガ)、G1仏オークス(芝2100m)2着馬で、G1ヴェルメイユ賞は3着だったラパリジェンヌ(牝3、父ザラック)は、いずれもG1凱旋門賞へ向かう予定。スウィートレディがオッズ34〜51倍、ラパリジェンヌが26〜33倍と、人気はない。

 春のG1英オークス(芝12F6y)勝ち馬で、G1ヴェルメイユ賞では1番人気(2.7倍)を裏切り4着に敗れたチューズデー(牝3、父ガリレオ)は、G1凱旋門賞未登録だ。

 同じく11日にパリロンシャンで行われた3歳馬によるG2ニエル賞(芝2400m)を制したシムカミル(牡3、父タマユズ)も、G1凱旋門賞未登録だ。追加登録するかどうかは馬主次第と言われているが、同馬を管理するS.ワッテル調教師は、前向きな発言はしていない。

 ここはあくまでも前哨戦というレースに徹し、4着に敗れたドウデュース(牡3、父ハーツクライ)は、予定通りG1凱旋門賞へ向かう。ニエル賞前には10倍前後だった同馬の前売りオッズは、ニエル賞後には20倍前後となっている。

 11日にドンカスターで行われたG1英セントレジャー(芝14F115y)を制したエルダーエルダロフ(牡3、父ドバウィ)は、G1凱旋門賞未登録。

 1番人気(2.375倍)で2着に敗れたニューロンドン(牡3、父ドバウィ)は、G1凱旋門賞の登録があるが、現時点で出否は未定だ。

 11日にカラで行われたG1愛セントレジャー(芝14F)を、1番人気(1.73倍)に応えて優勝したキプリオス(牡4、父ガリレオ)はG1凱旋門賞未登録で、次走は10月15日にアスコットで行われるG2ブリティッシュチャンピオンズ・ロングディスタンスC(芝15F209y)が有力。

 ただし、同馬を管理するA.オブラエイン師はレース後、追加登録を行ってG1凱旋門賞に出走する可能性について、含みを持たせる発言をしている。

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1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

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