明らかに変化している牡馬クラシック三冠
ガイアフォースが優勝(C)netkeiba.com、撮影:下野雄規
最近20年の「菊花賞」の勝ち馬は、春のクラシック出走組「10頭」に対し、春は皐月賞にも日本ダービーにも不出走だった馬が「10頭」も出現し、まったく互角。牡馬クラシック3冠の形は明らかに変化している。
今年の日本ダービー馬ドウデュースは凱旋門賞に挑戦する。2着馬イクイノックスは天皇賞(秋)を展望し、4着ダノンベルーガは現在のところ進路未定。
3着アスクビクターモア(父ディープインパクト)は順調に始動したが、1番人気のこの重賞で新星ガイアフォース(父キタサンブラック)に屈してしまった。5着プラダリア(父ディープインパクト)は今週の神戸新聞杯をステップに菊花賞に向かうが、皐月賞馬ジオグリフ(父ドレフォン)は天皇賞(秋)を目標にする可能性が高い。春のクラシック上位組が菊花賞の有力馬ともいえない図式が見えてきた。
セントライト記念2200m2分11秒8の中身は「60秒3-(12秒3)-59秒2」。稍重発表の馬場とすると、少しも平凡ではない(最近10年では4位)。好位のアスクビクターモアをマークして進んだガイアフォースは、ただ1頭だけ上がり34秒台の34秒7で伸びた。
派手な勝ち方ではなかったが、日本ダービーレコードに0秒3の好時計で踏ん張ったアスクビクターモアを最後の競り合いで封じた内容に、侮りがたいスタミナ能力を示した。馬場差はあるが、同じ中山2200mのセントライト記念(2015年)をしぶとく抜け出した父キタサンブラックは2分13秒8(上がり34秒9)だった。
ガイアフォースの国東特別(小倉2000m)のコースレコード1分56秒8は、テイエムスパーダが1200mを1分05秒8のJRAレコードを記録した日であり、高速馬場が味方したことは間違いないが、2番手から7馬身も抜け出したガイアフォース自身の前後半は「58秒4-58秒4」。秘める底力を示す素晴らしいバランスラップだった。
父キタサンブラックと同じようなスタミナを持つかはまだ分からないが、輸入された4代母ノーベンバーローズ(父Caroカロ)から発展するファミリーは、決して短距離系ではなく、ガイアフォースの場合は、キタサンブラックとの配合でサンデーサイレンスの「3×4」、ノーザンテーストの「5×4」となり、見えないプラスを秘める可能性がある。母の父クロフネは直仔よりむしろブルードメアサイアーとして大成功(最近5年は、5、3、3、3、2位)。クロノジェネシス、ハヤヤッコ、リオンリオンなど、直仔以上に距離をこなす産駒が少なくない。
アスクビクターモアは新星ガイアフォースに負けたが、今回は少し正攻法に徹しすぎた印象もあった。差されたとはいえ同タイムのアタマ差だけ。菊花賞に向かうグループの能力基準馬として評価が下がるわけではない。格好の目標になった不利が大きかった。
同じ日本ダービー組のオニャンコポン(父エイシンフラッシュ)、セイウンハーデス(父シルバーステート)には決定的な差をつけているだけに、有力馬としての立ち位置が変わったわけではない。牝系ファミリーに距離延長に対する心配は少なく、順調にひと叩きした上昇を期待したい。レインボウクウェスト、エルバジェ、ロベルト、グロウスタークなどスタミナ型の種牡馬の名が並ぶ牝系には底力があるはずだ。
3着ローシャムパーク(父ハービンジャー)は、4コーナーでの手応えを考えると、アスクビクターモアに3馬身差は完敗。パドックでの気配に若さを感じさせたあたり、これからの馬だろう。エアグルーヴにさかのぼる名牝系出身だが、まだまだキャリア不足。パドックの振る舞いがいかにも幼かった。
5番人気のキングズパレス(父キングカメハメハ)は、気配は良かったが、このペースに乗れないのでは苦しい。中山で未勝利を勝ったが、東京コース向きだろう。また、体型から長丁場向きではない印象が残った。