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【オールカマー予想】今年も荒れない!? AIが指名したのはまさかの実績上位馬

  • 2022年09月20日(火) 18時00分

アートハウスが優勝(c)netkeiba.com


netkeibaにある膨大な競走成績を人工知能によって機械学習するAiエスケープを開発したAIマスター・Mと、レースデータの分析を専門とする競馬評論家・伊吹雅也による今週末のメインレース展望。コンピュータの“脳”が導き出した注目馬の期待度を、人間の“脳”がさまざまな角度からチェックする。
(文・構成=伊吹雅也)

8番人気以下の伏兵はほとんど馬券に絡んでいない



AIマスターM(以下、M) 先週はローズSが行われ、単勝オッズ2.7倍(1番人気)のアートハウスが優勝を果たしました。

伊吹 完勝と言って良いのではないでしょうか。道中は先団を追走し、4コーナーを3番手で通過。残り200m地点を過ぎたところで先頭に立ち、中団から追い込んだサリエラ(2着)やエグランタイン(3着)の追撃を押さえ切っています。上がり3ハロンタイム(34秒2)は出走メンバー中3位で、2位のエグランタインとは0.3秒差、1位のサリエラとも0.5秒差。先行した馬にこれだけの脚を使われてしまったら、後続はなす術がありません。

M アートハウスは重賞初制覇。前走のオークスでは7着に敗れてしまったものの、見事に巻き返してきました。

伊吹 そのオークスでも単勝オッズ6.5倍(2番人気)の支持を集めていたように、もともと素質を高く評価されていた馬ですからね。無事に夏を越し、この馬に相応しいタイトルを獲得できたということで、陣営にとっても大きな勝利だったのではないかと思います。現3歳世代の牝馬を代表する存在として、今後はますます注目度が上がってくるでしょう。

M 今春の桜花賞とオークスを制したスターズオンアースは“ぶっつけ本番”で秋華賞に臨む予定。このアートハウスや紫苑Sを勝ったスタニングローズにも、同等かそれに近いレベルの支持が集まるかもしれません。

伊吹 4週後の“本番”が非常に楽しみですね。ただ、秋華賞の傾向をチェックしてみると、前走の4コーナー通過順が4番手以内だった馬は2012年以降[1-3-3-65](3着内率9.7%)といまひとつ。ちなみに、このうち父がディープインパクト以外の種牡馬だった馬は[0-1-2-55](3着内率5.2%)でした。アートハウスもスタニングローズもこの条件に引っ掛かっているので、最終的なメンバー構成やオッズも踏まえつつ慎重に評価したいと思います。

M 今週の日曜中山メインレースは、古馬中長距離戦線の強豪が集う名物重賞、オールカマー。昨年は単勝オッズ4.7倍(2番人気)のウインマリリンが優勝を果たしました。どちらかと言うと、堅く収まりがちな印象があるレースです。

伊吹 3連単の配当が10万円を超えたのは、新潟芝2200m内で施行された2014年(25万5930円)が最後。単勝人気順別成績を見てもわかる通り、人気薄の伏兵はあまり上位に食い込めていません。


M 単勝1番人気馬のうち半数が4着以下に敗れているものの、単勝2〜3番人気の馬、単勝4〜6番人気の馬はそれなりに健闘していますね。


伊吹 より詳しく見ていくと、単勝2〜7番人気の馬は2012年以降[7-8-8-37](3着内率38.3%)、単勝8番人気以下の馬は2012年以降[1-0-1-69](3着内率2.8%)でした。たとえ強調材料があるとしても、前評判が極端に低い馬は疑ってかかるべきでしょう。

M そんなオールカマーでAiエスケープが指名した特別登録時点の注目馬は、デアリングタクトです。

伊吹 これは驚きましたね。Aiエスケープは基本的に“穴党”で、単勝二桁人気クラスの伏兵を推してくることも珍しくありません。そんな中でまさかこの馬を選ぶとは……。

M 改めて解説するまでもないと思いますが、デアリングタクトは2020年に無敗のまま3歳牝馬三冠を達成した馬。その後は勝ち切れていないものの、前走の宝塚記念でも3着に食い込むなど、国内外のビッグレースで善戦が続いています。

伊吹 これまでの経験上、Aiエスケープが人気の中心となりそうな馬を挙げてきたレースは、順当な決着になりがち。妙味ある伏兵が見当たらないということなのでしょう。この見解が単勝人気順別成績の傾向とも合致しているのは興味深いところ。明確な不安要素が見つからない限り、素直に信頼した方が良さそうです。

M これを踏まえたうえ好走馬の傾向を伺っていきたいと思いますが、最初に注目すべきポイントはどのあたりだと考えていますか?

伊吹 キャリアでしょうね。2012年以降の3着以内馬30頭中19頭は出走数が17戦以内。3着内率も41.3%に達していました。



M 逆に、出走数が27戦以上の馬は3着以内なし。キャリアが浅い馬ほど信頼できるレースと言えそうですね。

伊吹 おっしゃる通りだと思います。ちなみに、集計対象を2017年以降の過去5年に絞り込むと、出走数が24戦以上の馬も[0-0-0-24](3着内率0.0%)と上位に食い込めていません。

M デアリングタクトは5歳牝馬ですが、 長期休養を挟んだこともあり、出走数はまだ10戦。強調材料のひとつと見て良いのではないでしょうか。

伊吹 あとは、実績馬が強いレースである点も重要なポイント。2012年以降の3着以内馬30頭中23頭は、 “JRA、かつGIのレース”において7着以内となった経験がある馬でした。


M ビッグレースで善戦したことのある馬が優勢、と。

伊吹 先程と同じく集計対象を2017年以降の過去5年に絞り込むと“JRA、かつGIのレース”において7着以内となった経験がない馬は[0-1-0-37] (3着内率2.6%)。条件クラスやオープン特別のレースはもちろん、GIIやGIIIを主戦場としてきた馬も過信禁物です。

M GIウイナーのデアリングタクトにとっては心強い傾向と言えますね。

伊吹 さらに言うと、2017年以降の3着以内馬15頭は、いずれも “前年以降、かつJRA、かつ出走頭数が15頭以上、かつGI・GIIのレース”において5着以内となった経験がある馬でした。


M 多頭数、かつ格の高いレースで上位に食い込んだことのない馬は、思い切って評価を下げた方が良いかもしれませんね。

伊吹 デアリングタクトは3着に健闘した前走の宝塚記念が17頭立て。この傾向からも強調できる一頭です。

M 伊吹さんの見解としても、この馬には逆らえないということで宜しいでしょうか。

伊吹 勝ったタイトルホルダーに4馬身の差をつけられたとはいえ、前走の宝塚記念は復調を感じる内容でしたからね。阪神芝2200m内のレースであれだけの競馬ができるのならば、コース替わりはまったく問題ないはず。Aiエスケープと同じく、この馬を中心視する前提で何とか妙味ある買い目を捻り出したいと思います。

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競馬評論家。JRAの公式ホームページ内「今週の注目レース」にて“データ分析”のコーナーを、TCK(東京シティ競馬)の公式ホームページ内「分析レポート」にて重賞競走のデータ分析を担当しているほか、グリーンチャンネル、JRAのレーシングプログラム、『週刊アサヒ芸能』、『競馬王』などさまざまなメディアを舞台に活動している。主な著作に『WIN5攻略全書 回収率150%超!“ミスターWIN5”のマインドセット』、『コース別 本当に儲かる騎手大全』シリーズ、『コース別 本当に儲かる血統大全』シリーズ、『ウルトラ回収率』シリーズ(いずれもガイドワークス)など。

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