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ワールド・ベスト・レースホース・ランキング最新版で英・米の怪物に下った評価

  • 2022年09月21日(水) 12時00分

今後はフランケル超えもありうるということか


 国際機関のインターナショナル・フェデレーション・オヴ・ホースレーシング・オーソリティーズ(IFHA)から、9月15日(木曜日)、ワールド・ベスト・レースホース・ランキングの最新版が発表された。

 主な競馬主催国の公式ハンデキャッパーたちの合議によって決定されているレーティングと、上位馬のランキングは、3月からほぼ月に一度の頻度で発表されているが、2022年9月期の発表がどんな内容になるかは、世界各国の関係者やファンの間から、ことさら大きな注目を寄せられていた。

 前回の発表は8月11日で、この時には、今年1月1日から8月7日まで施行された競走を対象としたレーティングとランキングが発表されていた。

 その後、である。8月17日にイギリスのヨーク競馬場で行われたG1インターナショナルS(芝10F56y)で、その段階でレーティング128で世界首位に立っていたバーイード(牡4、父シーザスターズ)が、2着以下に6.1/2馬身差をつけて快勝するという、キャリアベストのパフォーマンスを披露。

 さらに9月3日には、アメリカのデルマー競馬場で行われたG1パシフィッククラシック(d10F)で、その段階でレーディング127で世界2位につけていたフライトライン(牡4、父タピット)が、2着以下に19.1/4馬身差をつけるモンスター級のパフォーマンスを展開。

 これら2つのレースを公式ハンデキャッパーたちがどう評価し、どこまで大きなレーティングをつけるかが、大きな関心を呼んでいたのである。

 まず、バーイードのインターナショナルSは、135となった。競馬ファンの皆様は御存知のように、近年の最高値は2012年にフランケルが得た140で、今回の135はそれ以降の10年間では最高値となる。

 2012年以前では、2011年に同じフランケルが136、2009年にシーザスターズが136、2010年にハービンジャーが135を与えられており、バーイードはこれと横並びで、今世紀4位タイという評価となった。

 インターナショナルS2着のミシュリフの持ちレートが122で、この馬が本来の走りをしたとして、6.1/2馬身は11ポンドに換算されることから、単純計算だと133になるが、ゴール前のバーイードにはまだまだ余裕があったことから、2ポンド上積みして135というのは、あくまでも筆者の個人的見解を記させていただければ、ほぼ想定の範囲内にあった数字だったように思う。

 一方で、いささか驚かされたのは、フライトラインの評価である。発表は、139。すなわち、歴代最強と認定されたフランケルに、わずか1ポンド差に迫るという、極めて大きな評価となったのだ。

 G1パシフィッククラシックの2着は、今年のG1ドバイワールドC(d2000m)勝ち馬カントリーグラマー(牡5、父トーナリスト)で、すなわち、ダート10F路線では現役最強クラスの1頭である。レーテイング面でも、同馬の持ちレートは121で、ダートのインターメディエイト(9.5F〜10.5F)部門では首位に立つ存在だった。

 この馬に19.1/4馬身差をつけ、なおかつフライトラインは、ゴール前の100mをほとんど流して走り切っており、印象点を加味すれば、数字的には青天井というか、非現実的な数字が弾き出されてしまうことになる。公式ハンデキャッパーさんたちも、おおいに頭を悩ませたと思う。

 こういう時に物差しに出来るのが、過去の名馬との比較だ。アメリカ競馬が、ワールドランキングに含まれるようになったのは1995年からで、その翌年の1996年にシガーが与えられた135が、北米調教馬に与えられたこれまでの最高値だった。

 2015年にアメリカンファラオが、3冠プラスBCクラシックの「グランドスラム」を達成した時が134。2016年にアロゲートがG1トラヴァーズS(d10F)を13.1/2馬身差でぶっちぎった時も134。

 その翌年に同じくアロゲートが、G1ドバイワールドCで発馬直後の不利を克服して快勝した時も134。すなわち、シガーを超える馬は出現していなかったのである。

 ここから推測して、取り敢えず今回の発表では、シガーと横並びの135。あるいは、それではバーイードと同格で、フライトラインの方がバーイードより上という序列は譲れないという考え方から136。

 もしくは、近年最強のダート馬であることは明白という論理で137。そのあたりに落ち着くのではないかというのは、筆者の勝手な読みであった。

 この段階で139まで持ち上げたということは、フライトラインが次走のG1BCクラシックで、今回と同等、または今回以上のパフォーマンスを見せ、セクレタリアト級の評価が確定したあかつきには、フランケル超えもありうるという、そういう環境整備が行われたのが、今回の発表であったと見ている。  

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1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

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