札幌で用事を済ませ、千歳から東京行きの最終便に乗り込んだ。明日は早朝の東北新幹線でノーザンファーム天栄に向かう。
たいした量の仕事をしているわけではないのに、密なスケジュールになってしまうのはなぜだろう。天栄の次の遠出は、一週間後の京都だ。その次は、遠出と言えるかどうか微妙な美浦取材があるくらいで、外出予定に関して言えばスカスカである。
それでもほとんどの人が「お忙しいところすみません」と連絡してくる。この連載を読んでいないから私が忙しいと思っているのかもしれないが、「仕事は忙しいやつに振れ」と言われているらしい。その伝で言うと、忙しそうに見えるのはきっと得なのだろう。
9月8日に96歳で逝去したエリザベス女王の国葬が、19日にロンドンのウェストミンスター寺院で行われた。
女王が競馬を深く愛していたことはつとに知られている。所有馬はダービー以外の英国クラシックを4頭で5勝しており、その1頭、1974年に英国1000ギニーを制したハイクレアは、ディープインパクトの3代母として日本でもおなじみだ。同馬は10戦10勝の戦績でヨーロッパ最注目のバーイードの6代母でもある。
伝統的に英国王室は競馬との結びつきが深く、アスコット競馬場を創設したのは、1702年から1714年まで在位したアン女王だった。
エリザベス女王の曾祖父エドワード7世は歴代国王で在位中に所有馬でダービーを制した唯一の存在で、父ジョージ6世は二冠牝馬サンチャリオットを所有。そして、母のエリザベス皇太后(一部ネットなどに「王太后」とあるが、エリザベス皇太后に関しては「皇太后」が一般的なので、こちらの表記を用いる)は障害レース好きとして知られ、元騎手の競馬ミステリー作家として世界的な人気を博したディック・フランシスが専属騎手をつとめていたこともあった。
初夏にアスコットの芝2400mで行われる英国を代表するG1、キングジョージ6世&クイーンエリザベスステークスの「キングジョージ6世」は先述した「ジョージ6世」で、「クイーンエリザベス」は「エリザベス皇太后」のこと。つまり、これは、エリザベス女王の両親の名を冠したレースなのである。なお、女王はこのレースを、1954年にオリオールで制している。
在位期間が英国史上最長の70年と214日に及んだエリザベス女王は、5歳から馬に乗り、即位する前から競走馬を所有していたという。
1975年に女王が来日したことを記念して翌年創設されたエリザベス女王杯は、今年47回目を迎える。
女王が生産・所有したハイクレアを3代母に持つディープインパクトの産駒ラキシスが2014年、マリアライトが翌15年にエリザベス女王杯を勝っている。
また、女王は、自身が所有する繁殖牝馬を日本に送り込んでディープインパクトと交配させていた。
こう見ていくと、エリザベス女王のホースマンとしての熱意は、日本の競馬界全体のレベルの底上げにも直接・間接的に寄与していたことがわかる。
エリザベス女王の国葬が逝去の11日後に営まれたのに対し、安倍晋三元首相の国葬は、亡くなってから2カ月半以上経つ9月27日に日本武道館で行われる。1967年の吉田茂元首相の国葬はどうだったかというと、エリザベス女王と同じく死去から11日後という早さだった。安倍さんの国葬も、反対派の非難がこれほどエスカレートする前に実施すべきだったのではないか。
弔意の示し方は人それぞれであるのが当然で、示せとも、示すなとも、他者から強要されるべきものではない。
今気づいたのだが、京都での取材は安倍さんの国葬の日になりそうだ。私は武道館に招待されていないので、参列とは違う形で弔意を示したい。
帰宅してからつづきを書いた。とっくに日付が変わり、あまり寝る時間がなくなってしまった。
新幹線で寝られるといいのだが、寝過ごさないようにしなければ。その前に、乗り遅れないようにしなければ。