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【ウマ娘×ばんえい十勝】コラボイベント潜入リポート! 草野仁さん・Machicoさん・上田瞳さんが登壇のトークショーが開催

  • 2022年09月22日(木) 18時01分
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▲ウマ娘 プリティーダービー×ばんえい十勝コラボイベントが開催!(写真提供:ばんえい十勝)


9月17〜19日の3日間。世界で唯一、ばんえい競馬が開催されている帯広競馬場にて、『ウマ娘プリティーダービー』とのコラボイベントが開催された。その最終日に密着し、当日現地の熱狂を追った。

(取材・文:中山靖大)

「無敵のテイオー伝説、ここからスタートだぁぁぁ!!」


 今回のような地方競馬と『ウマ娘プリティーダービー』とのコラボイベントは、名古屋、笠松、高知に続いて4回目。どの競馬場でも入場人員を普段と比較して大幅増させるなど、競馬場を活気づかせるには最高の企画として、競馬関係者、競馬ファンの中では浸透しつつあるイベントだ。

 事前にイベントの存在を知らなかった人が突然、田舎道にできた行列に驚き、SNSに画像とともに、まるで事件のようにアップするのも恒例行事。そうやって普段競馬場が景色の一部となった人たちに、新たな興味を持ってもらえることも、このイベントが愛される大きな要因。おばあさん、イオンモールができたんじゃないんですよ。ウマ娘が来たんです。

 筆者が競馬場に到着したのが19日の朝。競馬場の駐車場には、すでに長蛇の列ができていた。産直市場やレストラン、馬の資料館が入った帯広競馬場と隣接している施設『とかちむら』も駐車場が共用のことから、競馬開門は12時からだが10時に駐車場が開放。こちらに列が作られグングン伸びる形となっていった。

 イベントの担当者に話を聞くと、
「土日(17、18)も開門前には300人を超える行列ができたのですが、今日の伸び方は比じゃないですね」

 断っておくが、ばんえい競馬だけならず地方競馬で開門前に行列ができるなんて滅多にないこと。開門前に中にある飲食店のスタッフ同士の会話を偶然聞いたが、土日の場内の混雑っぷりはばんえい記念(開催年度の締めくくりに行われる重賞競走で、このレースの勝ち馬が「NARグランプリばんえい最優秀馬」に多く選ばれることからグランプリレースとして有名)を超えていたらしく、時計が12時の針を回るタイミングに向けてまるで第2障害を越える前のばん馬のように、今日の戦いに向けて鼻息を荒くしていた。

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▲土日の場内の混雑っぷりはばんえい記念を超えていた(撮影:中山靖大)


 実際に12時に駐車場に並んだ行列は1200人を超えるまでに伸びた。写真を撮るのは控えたが、行列の先頭あたりに駐車していたのは、車体全体にタイキシャトル(ウマ娘のほうね)がプリントされた、俗にいう痛車。たまたま置かれた場所が目立つところだったのだろうが、まるでイベントの象徴のように駐車場のゲートをくぐると我々を迎えてくれて、今日は競馬場にとって非日常であることを感じさせる。言うまでもないが、非オフィシャルです(笑)。

 そしていよいよ、今開門のとき。入場ゲートは1カ所のため、そこでオリジナルうちわが次から次へと入場と同時に手渡されていく。個人的には先頭の人が“Appleストア表参道店でiPhone14を最初に受け取った黒い服の男 ”風に、ガッツポーズしながら入ってくるところをカメラを構えて待っていたのだが、トレーナーの皆様は行儀よく淡々と足を前に進めておりました(笑)。

 ゲートをくぐると人気ウマ娘7人(左からゴールドシップ、メジロマックイーン、トウカイテイオー、スペシャルウィーク、サイレンススズカ、ダイワスカーレット、ウオッカ)が揃った看板がお出迎え。他にも、館内には個別の等身大パネルや、ウマ娘仕様のフラッグが至るところで掲げられており、みんな各々カメラを構えて写真撮影を楽しんでいる様子が見られた。

 Cygamesの担当者によると、他の競馬場でイベントを行ったときと比べて女性の比率が若干高いかもとのこと。もともと帯広競馬場の客層としてファミリー層が多いことが影響しているかも知れません。場内には小さい子供の声も聞こえてきました。

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▲人気ウマ娘7人が揃った看板がお出迎え(撮影:中山靖大)


 ここで、なぜ3日目に取材に来たのかを説明しないといけませんね。今日のイベントの内容は大きくわけて3つ。

■17、18日とは異なるオリジナルうちわプレゼント
■トウカイテイオー役の声優Machicoさん、ゴールドシップ役の声優上田瞳さん、MCに草野仁さんを迎えたトークイベント
■11R「ようこそウマ娘ゴルシ記念」、12R「ようこそウマ娘テイオー記念」の開催

 オリジナルうちわに関しては、熱狂的なグッズコレクターも多いことで知られるウマ娘だけに、前日にもうちわをゲットしデザインの違う19日も来場してゲットしたいという人たちが多く行列を作ったに違いない。

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▲こちらは1日目と2日目に配布されたうちわ(撮影:中山靖大)


 ただ余談になるが、いつもと比較して帯広市内のホテルが高かったり、部屋が埋まっていたりしたのも、かなり今回のイベントが影響しているのかも…。日本各地から集まった多くのトレーナーが、帯広全体の空気を変えてしまったといっても過言ではないだろう。

 ちなみにグッズつながりで言うと、開門は12時なのだが、最初のトークイベントは14時00分、ばんえい競馬1Rの発走時刻が14時45分とかなりの時間があるため、お客さんの列は3日間ともに設営されていた『POP UP STORE in帯広競馬場』へ。コロナ感染予防対策のため、店内への入場は区切って行われ混乱も起きず次々とグッズを手に、トレーナーたちが出てくる様子が見て取れた。

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▲『POP UP STORE in帯広競馬場』(撮影:中山靖大)


 そして、その頃には開門前に戦闘態勢に入っていた飲食店にも長蛇の列が。コロナ禍ということもあって、いまだお祭りが行われていない地域もあり、露店のようなお祭り的な食事が遠のいている。それゆえに競馬場に足を運んだことがないトレーナーにとっては“競馬場メシ”には相当惹かれるモノがあった模様。

 我々競馬ファンからすると、焼き鳥の煙や、焼きそばのソースが焦げる匂い、プラスチック製のラーメン鉢がぶつかる音は、地方競馬に行けば傍にあるものだが、一般的には独特な風景だったに違いない。『昭和の匂い、平成のモチーフ、令和のプロジェクト』この3つが揃っているのが、ウマ娘コラボイベントの強みなのだろうか。村上龍を気取ってカンブリア宮殿風に書いてみました(笑)。

 トークイベントが近づくと、整理券を持った人たちがイベント開催の広場に集まり始めてきた。

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▲イベント開催の広場の様子(撮影:中山靖大)


『雨だけは降らないでぇえーーー!!』(Machico Official Twitterより)
『うおおお!! 晴れ女!! がんばれ!!! 本番(できれば帰りも)までもってくれ…!!』(上田瞳 Twitterより)

 当日朝、イベント出演の2人が上記のようなツイートしているように予報は最悪。台風14号が九州、本州を直撃している日で、帯広も前々日まで降水確率100%、前日になっても80%というような状況だった。

 しかし、上田瞳さんのツイートに『これが晴れ女の力なのか』とレスが返ってきているように、雲の上で表面張力が働いているのかと思うくらい曇天模様なのに、雨が落ちてこないという奇跡的な状況。トラックステージで行われる舞台はもとより、観客エリアも雨風を凌げるものがなかったため、本当に天気は重要。傘を持たずにステージを楽しめるのは本当に良かった。

 ステージ前はラインに沿ってトレーナーたちが並び、出演者を心待ちにする。スピーカーからは、ばんえい競馬公式応援ソング『ばんばればんば』(ノー天気な明るい音楽。YouTubeにも上がっていたので、ぜひご視聴ください)が場内の温度がジリジリと上げさせていく。

 そして、いよいよステージ開始。まずはMCの草野仁さんが登場し、2人の人気声優を呼び込んだ。

「無敵のテイオー伝説、ここからスタートだぁぁぁ!!」
「ピスピース! ウマ娘の宣伝担当ゴルシちゃんだぞ!!」

 おおっ、生で聞くとやっぱりテンション上がる(語彙力のないライターですまない)。ステージ前のトレーナーたちがいる方向からも、声を聞いた途端一気に瞳孔が開く音が聞こえてきた。

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▲いよいよステージ開始!(左から草野仁さん、Machicoさん、上田瞳さん・写真提供:ばんえい十勝)


 今回のイベントは14時00分〜と、15時55分〜の2回に分かれていて、1回目は『ばんえい競馬の歴史』そして2回目は『ばんえい競馬を予想するポイント』について、アニメの内容さながらにトウカイテイオー(Machicoさん)、ゴールドシップ(上田瞳さん)が生徒として。そして競馬歴56年の草野仁さんが、先生役として2人の生徒に教えるという内容で行われた。

 しかし意外なことに、草野仁さんは動画でばんえい競馬を見たことはあるもの、生でばんえい競馬を見るのが初めて。すなわち1回目のイベント時には、ばんえい競馬を見たことがなく、2回目のイベント前に初めて生でレースを見たことになり(第2レース終了後にイベントスタート)、生徒2人と同じテンションで見た感想を2回目に語り合うことになった。

 このイベントで面白かったのは、ウマ娘の世界観は平地競馬以上にばんえい競馬にも通じるモノがあるのでは…と思わせてくれたところ。トウカイテイオー(Machicoさん)が、

「第2障害の前に『ここから行くぞ』とお馬さんがパワーを溜めているところがカッコいい」

 と話していたのですが、『ウマ娘プリティーダービー』ゲーム風にいうと速度制限が解除されてスパート前の静けさといった感じ。平地競馬でも脚を溜めるという表現を使いますが、溜めるというイメージではばんえい競馬の方が初心者には伝わりやすいだろうし、声を入れるとしても『ここからが勝負だぁーーーー!!』というセリフを言いやすいのかも知れません。もし“ばんえい競馬ウマ娘”があるとしたら、第2障害のセリフの応酬はすごいことになりそうですね。

「先にお前行けよ」
「俺はもう少し脚を休ませてから行くよ」
「ほら、あせって行くから障害途中で止まっちゃったよ」
「せーので一緒に行こう。せーの…ってズルい、動けよ!」
などなど…。可愛いウマ娘の世界観が、ちょっと生々しくなりますね(笑)。

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▲草野仁さんが先生役として2人の生徒に教える(写真提供:ばんえい十勝)


 平地競馬がスピードを問うレースならば、ばんえい競馬はパワーと根性を問うレース。「ウマ娘プリティーダービーSeason2」の最終話『夢をかける』で描かれていたのは、3度の骨折を乗り超えたトウカイテイオー有馬記念における根性の物語。このシリーズでは、短距離血統を克服して3冠へと挑戦するミホノブルボンや、心ないファンの声に気持ちが折れそうになるライスシャワー、バテバテになっても見る人の気持ちに何かを訴え続けるツインターボの姿なども描かれており、気持ちの駆け引きが如実に出るばんえい競馬の面白さに、気づけたトレーナーも少なくなかったのではないでしょうか。

 アニメ内では座学を苦手としているウマ娘が多いですが、今回のイベントでは2人の呑み込みの良さに先生が驚くほど。もちろん、これだけでばんえい競馬の予想の達人にはなれないでしょうが、このあとに行われる2人の冠レース。ぜひ馬券を当てて欲しいと願う1ファンでした。

 ちなみにイベント後に、MachicoさんがTwitterにあげている馬券は最下位とブービーのワイド馬券。しかも、8頭立てで6番人気と8番人気の組み合わせという穴狙い。デビュー以来12戦戦って9回1番人気になってるトウカイテイオー役の声優さんが穴党という現実を知ってクスリと笑わせていただきました(笑)。『ザ・ワイド』の先生もアングリですね(古くてスミマセン)。

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▲生徒役のお二人の呑み込みの良さは先生が驚くほど(写真提供:ばんえい十勝)


 そして、いよいよ日が落ちてレースがスタート。霧雨のように馬場を軽く湿らす程度の雨は降ったものの、レース終了まで持ったのはゴルシちゃんの晴れ女効果かも。ちなみに実際のゴールドシップも、産駒に道悪巧者のイメージがあるものの、現役時代には重馬場で競馬をしたことがないという晴れ男っぷり。ゴルシとゴルシ役の声優の不思議な共通点でした。

 11Rの「ようこそウマ娘ゴルシ記念」。含水率が2.7%の軽馬場でスピード決着が予想された。人気は近5走で3勝を挙げている5番シャンハイオトメ。次ぐのはリーディングジョッキー鈴木恵介騎手鞍上の2番マルミゴウカイが続いた。ゴルシ記念ということでゴ(5)ル(6)シ(4)にまつわる馬券を買った人が多かった模様。

 スタートして最初に飛び出したは船山蔵人騎手鞍上のシャンハイオトメ。ばんえいポイントの第2障害もすんなりクリアし、その後ろから追い詰めるのは6番のヒメトラマジックだったのだが、ゴール直前で失速。2番人気のマルミゴウカイが2着。3着にも3番人気の西謙一騎手鞍上のヒメミヤが入り、3連単は1600円の1番人気。この日は、馬場が軽いこともあってか、普段のばんえい競馬より平穏な決着が多かった印象。ゴールドシップの気性の“荒さ”とは反して平穏な決着に。

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▲11R「ようこそウマ娘ゴルシ記念」は平穏な決着に(撮影:中山靖大)


 ちなみに2回目のイベントが終わったのが16時20分過ぎだったのですが、その後16時30分から行われた第4レース。では1着5番シャクネツ(2番人気)、2着6番コウシュハエーカン(10番人気)、3着4番リュウノダイマオー(1番人気)と入り、3連単5-6-4とゴルシで29,020円の好配当。1日を通して全レース購入していた人にとっては、思わぬお小遣いになったでしょう。

 そして12Rは「ようこそウマ娘テイオー記念」。Machicoさんが大穴を買っていたレースです(笑)。雨は降っていないのですが、さすがに湿度は高く馬場の含水率は変わらず2.7%。人気は唯一の3歳牡馬クリスタルホーク。2番人気は近3走勝ち切れていないものの、3⇒2⇒3着と堅実に馬券圏内に入り続けているアアモンドブラック。作中のトウカイテイオーがアーモンド好きなら、この馬から入るのも手だったのですが、残念ながらトウカイテイオーちゃんの好物はハチミツ。甘い結果を期待して8-2-3を購入して応援することにしました(笑)。

 第1障害を越えて1馬身強抜け出したのが、1番人気のクリスタルホーク。第2障害手前でも、あまり溜めずに即座に上り始め逃げ切りを狙う。障害を越えて、さすがにラストは脚が上がったもの、歩みを止めることなく突き進む。後続も差は詰めるものの、ラスト20mくらいからは逃げるクリスタルホークと脚色が一緒に。さすがリーディングジョッキーの好判断といった形で、鈴木恵介騎手鞍上のクリスタルホークが押し切り、2着に3番人気1番の藤本匠騎手鞍上のホクトジョー。そして3着には地味に私の狙い馬、赤塚健仁騎手鞍上の4番人気8番ダイヤカツヒメが入り、ここも3連単3-1-8で3,940円の比較的堅い決着と終わった。

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▲12R「ようこそウマ娘テイオー記念」も堅い決着に(撮影:中山靖大)


 こうしてウマ娘一色となった19日の帯広競馬場。ウマ娘にばん馬はいないが、作り出すストーリーには共通点が多く、1人でも多くのトレーナーがばんえい競馬に関心を持ってくれればと思うような1日となった。

 羽田空港からモノレールに乗っての帰り道。Twitterを開くとウマ娘プロジェクト公式アカウントが大井競馬場の冬季限定イルミネーション「東京メガイルミ」とのコラボ開催決定のツイート。ナイター照明を眺めながら、「すげーな」とつぶやく筆者だった。

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