今週後半、アメリカ・ケンタッキー州ではオークスとダービーの開催が行われる。ダービー(6日・土曜日)の展望は主なプレップレースが終わった段階で行ったので、ここでは5日(金曜日)にチャーチルダウンズで行われる第132回ケンタッキーオークスの展望を行いたい。
2歳シーズン終了時には、BCジュヴェナイルフィリーズ勝ち馬フォークロアと、G1デルマーデビュータント勝ち馬でBCジュヴェナイルフィリーズは2着だったワイルドフィットの2頭が、抜けた存在と見られていた03年生まれのアメリカ牝馬戦線。実際この2頭は、オークスだけではなくケンタッキーダービーにも登録し、春の成績如何によっては牡馬挑戦も囁かれていたが、フォークロアが今季緒戦のG2サンタイネスSで3着と敗れた後、膝に故障がみつかり戦線離脱。ワイルドフィットも、ラスヴァージネスS・2着、サンタアニタオークス3着と連敗した後、感染症にかかって放牧休養と、いずれも戦いの表舞台からは姿を消してしまった。
それでは、この春の3歳牝馬戦線がすっかり寂しくなったかというと、さすがアメリカである。この路線は次から次へと新勢力の台頭があって、見ていて飽きない展開となっている。
ウィナーズサークルに立つことのなかった2歳時の大物2頭に代わって,この春戦線をリードしたのはバランス(父サンダーガルチ)だった。重賞初挑戦となった12月のG1ハリウッドスターレットで、ディプロマットレディーの2着といきなりの好走を見せたバランス。年が明けると、2月のラスヴァージネスS、3月のサンタアニタオークスと、西海岸でG1を連勝し、一気に戦線の最前線へと躍り出た。ところが前走、本番への最終プレップとして4月8日にキーンランドで行われたG1アッシュランドSに出走すると、勝ち馬ブッシュファイアから10馬身以上遅れる3着に敗退。原因は、西海岸に比べると深いキーンランドのダートに戸惑ったためと言われているが、初のアウェイ戦が完敗に終わったことで、期待と不安の両方を抱えながら本番を迎えることになった。
そのアッシュランドSで、重賞初制覇を飾ったブッシュファイア(父ルイカトローズ)。2月にガルフストリームパークのG2ダヴォナデイルSで重賞初挑戦した時には、道悪に殺され全く競馬にならず最下位に沈んだが、アッシュランドSでは2着ウェイトアホワイルに6馬身以上の差をつける快勝。2歳秋にチャーチルダウンズのメイドン(8.5F)を勝ち上がっているという「コース経験」も買われて、直前へきて急激に評価を上昇させている。
今週後半ルイヴィル地方の天候が崩れた場合、台頭するのはアッシュランドSの2着馬ウェイトアホワイル(父マリアズモン)だろう。アッシュランドSや、その前走のG2ボニーミスSを見ると、乾いた馬場ではひと息足りないが、泥んこ馬場で行われたガルフストリームパークのG2ダヴォナデイルSで演じた14馬身差勝ちは、見事のひと言だった。
暮れのG1ハリウッドスターレットS勝ち馬ディプロマットレディー(父フォレストリー)は、今季ラスヴァーネスS・5着、サンタアニタオークス4着と敗れた後、距離を縮めた前走4月13日のG2ボウモントS(キーンランド、7F)を快勝して4ヶ月振りの勝ち星を挙げた。8.5Fのハリウッドスターレットを勝ってはいるものの、本質はスピードタイプで、チャーチルダウンズの9F戦は本領発揮の舞台ではなさそうだ。