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アドレナリンが出て心拍数が高まり…知られざる「レース前の準備」を初告白【In the brain】

  • 2022年10月20日(木) 19時00分
“VOICE”

▲川田騎手なりのレース前の準備を告白(撮影:福井麻衣子)


常に冷静なイメージのある川田騎手、実は毎週のように決まって心拍数が上がる時間があると言います。その時間とは、レース前夜の準備時間。

ジョッキーがレースに臨むまでの準備はいくつもありますが、川田騎手は前夜に脳内でレースを想像するのだそう。そうすると徐々にアドレナリンが出て心拍数が上がる…。想像だけで心拍数が上がることに衝撃を受けますが、その時間こそが川田騎手にとって大切な時間。そんな一度しか経験できないレースを心待ちにしながら、勝利のために準備するレースの前夜を明かします。

(取材・構成=不破由妃子)

想像のなかで、事前に嫌な思いをしておくんです


 以前にも書きましたが、僕がジョッキーになってから、心から「緊張していること」を自覚したのは二度。一度目はハープスターの桜花賞のポケットで、絶対に勝たなければいけないという思いに駆られ、異常なほどに早い心拍と、冷静じゃない気持ちの昂りを感じ、二度目はまたハープスターでの凱旋門賞当日、ロンシャン競馬場に着いてからパドックに向かうまでの長い待ち時間に、張り裂けそうなほどの強い胸の鼓動を感じました。

 この2つは間違いなく「緊張」であり、「緊張感」とは似て非なるもの。どんなレースであっても、常に緊張感は持っています。

 冒頭に書いた「緊張」を経験して以来、レースにおいて緊張している自分に出会ったことはありませんが、実は毎週決まって心拍数が上がり、「緊張感」を感じる時間が僕にはあります。それは、レース前夜に翌日のレースを想像しているとき。いわゆる、レースに向けての準備の一環なのですが、この話をコラムの担当の方にしたところ、「想像するだけでアドレナリンが出るなんて、どれだけリアルな想像をしてるんですか」と驚かれました。

“VOICE”

▲「緊張」と「緊張感」は似て非なるもの(撮影:福井麻衣子)


 というところから始まった今回のテーマ。僕なりの「レース前の準備」です。

 それは、騎乗依頼をもらった時点から始まります。依頼をもらうタイミングはそれぞれで、レース当週であったり、1カ月前であったり、馬によっては数カ月前というケースも。そこからその馬の過去のレース映像を見始め、口向き、性格、歩様、バランス、反応など、コントロール性を把握していく。当然、ゲートのなかの様子、ゲートの出方、レースの組み立てなどもチェックします。そういった細かいことを確認するためには、過去のレース映像を見るという時間が必要です。

 かといって、騎乗する全馬の全レースを見るわけではありません。僕なりの感覚で、全レースを見ておいたほうがいいなと思う馬もいますが、ポイントを押さえておけば十分な馬もいます。ちなみに、相手については、どうしても気になる馬のみ、過去の映像を見ることもありますが、あくまで過去のレース映像を見るのは、自分が乗る馬の安全性を確認するため。何ができて、何ができないのかを把握しておかないと、シミュレーションすることもできません。

 そういった自分の騎乗馬の情報収集をほぼ終えた状態で、レース前夜を迎えます

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1985年10月15日、佐賀県生まれ。曾祖父、祖父、父、伯父が調教師という競馬一家。2004年にデビュー。同期は藤岡佑介、津村明秀、吉田隼人ら。2008年にキャプテントゥーレで皐月賞を勝利し、GI及びクラシック競走初制覇を飾る。2016年にマカヒキで日本ダービーを勝利し、ダービージョッキーとなると共に史上8人目のクラシック競走完全制覇を達成。

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