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国の動きを止めるレースと称される一戦 メルボルンCの開催近づく

  • 2022年10月26日(水) 12時00分

地元馬vs欧州からの遠征馬という構図


「The race that stops a nation=国の動きを止めるレース」と称される、オーストラリアにおける国民的イベント「メルボルンC」の開催が、11月1日(火曜日)に迫っている。今年は、2019年以来3年ぶりに入場制限のない開催となり、当日のフレミントン競馬場には10万人を越えるファンが詰めかけることが見込まれている。

 フルゲート24頭のところに、10月24日に設けられていた登録ステージで、34頭がエントリー。相変わらず今年も、出走権を巡るさや当てが起きている。残念ながら日本調教馬の参戦はない中、10月15日に行われたG1コーフィールドC(芝2400m)を走った組を中心とした地元勢が、欧州からの遠征馬をいかにして迎え撃つか、という戦いの構図となっている。

 ブックメーカー各社が5.5〜6.0倍のオッズを掲げて1番人気に推しているのが、英国からの遠征馬ドーヴィルレジェンド(セン3、父シーザスターズ)だ。

 愛国産馬で、1歳年上の全姉に今年、G1ロワイヤリュー賞(芝2800m)を含めて4つの重賞を制したシーラローザがいるという、超良血馬である。同馬が1歳夏にアルカナ・ドーヴィル1歳セールに上場されたのは、当然のことながら姉が活躍する以前で、なおかつ、コロナによる厳しい移動制限が課せられていた頃の開催だったこともあり、20万ユーロ(当時のレートで約2538万円)というお手頃価格で馬主の代理人に購買されている。

 ニューマーケットに拠点をおくジェームス・ファーガソン厩舎から2歳9月にデビュー。2歳時は2戦して未勝利に終わった後、3歳初戦となったウインザーのメイドン(芝10F)で初勝利を挙げると、3歳3戦目となったニューマーケットのG3バーレーントロフィー(芝13F)を制し重賞初制覇。

 続くグッドウッドのG3ゴードンS(芝12F)は2着惜敗後、8月17日にヨークで行われたG2グレートヴォルティジュールS(芝11F188y)を2.3/4馬身差で快勝。2度目の重賞制覇を果すとともに、メルンボルンC参戦を決めたのだった。55.0キロという、手頃はハンデも人気の一因となっている。

 これに続き、オッズ7.0〜7.5倍の2番人気になっているのが、独国調教馬のロフト(セン4、父アドラーフルーク)だ。

 独国産馬で、G1伊ジョッキークラブ大賞(芝2400m)勝ち馬ラヴリーンの甥にあたるロフトは、生産者イッティンゲン牧場の所有馬として、2歳秋にアンドレアス・ヴェーラー厩舎からデビューした。

 3歳夏まで5戦して未勝利に終わると、凱旋門賞勝ち馬トルカータータッソらを手掛けるマルセル・ヴァイス調教師の厩舎に転厩。移籍2戦目となったバーデンバーデンの準重賞(芝2800m)でようやく初勝利を挙げると、陣営はこのタイミングで去勢をすることを決断。その後は重賞を2戦して、いずれも2着に入っているから、この頃から馬が良くなってきたのだろう。

 本格化したのは4歳となった今季で、初戦となったホッペガルテンのG2オレアンダーレネン(芝3200m)を制して重賞初制覇を果たすと、次走は北米に遠征してG2ベルモントゴールドC(芝16F)に優勝。この段階で、豪州人馬主オジー・キーア氏を中心としたパートナーシップが、メルボルンC参戦を念頭に同馬を買収することになった。

 その後、ロフトは8月20日にチェスターで行われたLRチェスターC(芝14F87y)に出走。勝ち馬(53.5キロ)より10キロ重い63.5キロの斤量を背負いながらも、2着に健闘している。そのロフトがメルンボルンCで背負うハンデは、55.5キロである。

 これらを迎え撃つ地元勢の代表が、オッズ13〜15倍で前売り3番人気となっているダーストン(セン7、父シーザムーン)だ。

 この馬も生まれたのは英国で、生産者は今年の凱旋門賞馬アルピニスタを生産所有していることでも知られる、カースティン・ラウジング氏のランウェイスタッドである。1歳秋にタタソールズ10月1歳市場のブック2に上場され、ここで5万2千ギニー(当時のレートで約832万円)で購買されている。

 デヴィッド・シムコック厩舎から2歳秋にデビュー。3歳夏には重賞初挑戦となったG3ジェフリーフリアS(芝13F61y)で3着に入っている。

 3歳秋に去勢され、4歳時はシーズンを通じて1戦しかせず、21/22年シーズンから豪州に移籍。ようやく豪州の水に馴れた今季に入って成績が上がり、2戦目となったワイオングのLRワイオングGC(芝2100m)で勝利を収めると、続くニューカッスルのG3ニューカッスルゴールドC(芝2300m)も制し重賞初制覇。

 ロイヤルランドウイックのG1メトロポリタン(芝2400m)は6着に敗れたものの、10月15日に行われたG1コーフィールドC(芝2400m)を、51.5キロの軽ハンデにも恵まれて優勝。G1初制覇を果している。メルボルンCにおけるダーストンのハンデは53.5キロで、これも“恵量”と言えよう。

 メルボルンCの模様はグリーンチャンネルで生中継(11月1日、午後0時30分〜1時30分)されるので、日本の競馬ファンの皆様もぜひご注目いただいたい、

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1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

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