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【AR共和国杯 AI予想】強調材料ばかりではない!? AIの注目馬はレースの傾向を覆せるか

  • 2022年10月31日(月) 18時00分

天皇賞(秋)は、単勝オッズ2.6倍(1番人気)のイクイノックスが勝利(撮影:下野雄規)


netkeibaにある膨大な競走成績を人工知能によって機械学習するAiエスケープを開発したAIマスター・Mと、レースデータの分析を専門とする競馬評論家・伊吹雅也による今週末のメインレース展望。コンピュータの“脳”が導き出した注目馬の期待度を、人間の“脳”がさまざまな角度からチェックする。
(文・構成=伊吹雅也)

ハンデ戦らしくない単勝人気順別成績に注目


AIマスターM(以下、M) 先週は天皇賞(秋)が行われ、単勝オッズ2.6倍(1番人気)のイクイノックスが優勝を果たしました。

伊吹 JRAの平地GIを単勝1番人気馬が制したのは2021年の有馬記念(エフフォーリア)以来で、今年に入ってからだと初めて。連対を果たしたのも2022年の天皇賞(春)(ディープボンド)以来ですね。そんな流れの中でGI未勝利のイクイノックスが頭ひとつ抜けた1番人気となったわけですから、波乱の決着を期待した方も多かったのではないでしょうか。当然ながら、陣営や鞍上のC.ルメール騎手にも相応のプレッシャーがかかっていたはず。今回の完勝劇は、そういった背景も込みで語り継がれるべき偉業だと思います。

M 道中はパンサラッサ(2着)が大逃げを打つ展開となり、残り200mの地点を過ぎたあたりでもまだ後続に大きな差をつけていました。改めてレース映像を見直しても、ここからパンサラッサを捕らえ、逆に1馬身の差をつけてゴールできるような状況とはとても思えません。実際、他の馬はパンサラッサをかわしきれなかったわけですからね。

伊吹 道中のイクイノックスは10番手前後のポジションを追走。4コーナーを14番手で通過した日本ダービー(2着)よりは悪くない位置だったものの、レース序盤の挙動を見る限り、本当はもう少し前につけたかったのではないでしょうか。しかし、C.ルメール騎手は向正面で躊躇なくイクイノックスを馬群の外に持ち出し、スムーズに上がっていくための進路を確保。4コーナーを周り切ったところではアブレイズ(10着)らよりもさらに外のコースを選んで、前に馬がいない状況を作り出しています。この馬の能力を信頼しきっていなければできないレース運びだったと思いますし、それに応えたイクイノックスもお見事でした。

M イクイノックスは待望のGI初制覇。次走以降はチャンピオンの一頭として古馬中長距離戦線をリードしていくことになりそうです。

伊吹 中山芝2000m内の皐月賞(2着)や東京芝2400mの日本ダービーでもあれだけ強い競馬をしているわけですし、大抵のコースは問題なくこなせるのではないでしょうか。今回の勝利で注目度がさらに高まった分、馬券的には扱いの難しい存在となってしまいそうですが、今後が楽しみで仕方ありません。

M 今週の日曜東京メインレースは、ジャパンCや有馬記念の前哨戦としてもおなじみのハンデキャップ競走、アルゼンチン共和国杯。昨年は単勝オッズ3.0倍(1番人気)のオーソリティが優勝を果たしました。波乱の決着を期待している方も多いと思いますが、近年の傾向はどうなっていますか?


伊吹 ハンデキャップ競走とは思えないくらい堅く収まりがちです。過去10年の優勝馬10頭中9頭、3着以内馬30頭中18頭は単勝3番人気以内でした。


M 単勝1番人気馬の成績は微妙なところですが、人気薄の馬はあまり上位に食い込めていませんね。

伊吹 より細かく見ていくと、単勝4番人気以内の馬は2012年以降[9-7-7-17](3着内率57.5%)、単勝5〜7番人気の馬は2012年以降[1-3-1-25](3着内率16.7%)、単勝8番人気以下の馬は2012年以降[0-0-2-86](3着内率2.3%)となっています。上位人気グループの馬は相応に高く評価するべきでしょう。

M そんなアルゼンチン共和国杯でAiエスケープが指名した特別登録時点の注目馬は、ヒートオンビートです。

伊吹 おおっ。何と言うか、ちょうど良いポジションの馬を挙げてきましたね。

M ヒートオンビートは5歳馬。まだオープンクラスのレースを勝ち切った実績はないものの、2走前の七夕賞で2着に、3走前の天皇賞(春)で4着に食い込むなど、重賞戦線で安定した走りを見せています。単勝1番人気ということはなさそうですが、上位人気グループの一角を占めることになるでしょう。

伊吹 2021年の目黒記念で2着に好走しており、コース適性の高さは証明済み。もともと狙うつもりだったという方も少なくないはずです。Aiエスケープが中心視している点を踏まえたうえで、私は好走馬の傾向からこの馬を評価していきたいと思います。

M 最大のポイントはどのあたりでしょうか?

伊吹 近走成績ですね。2014年以降の過去8年に限ると、3着以内馬24頭中20頭は年明け以降のレースを勝ち切っている馬でした。


M はっきりと明暗が分かれていますね。ヒートオンビートが最後に勝ち切ったレースは2021年01月31日の美濃S。残念ながらこの条件はクリアしていません。

伊吹 ただし“同年、かつJRAのレース”において1着となった経験がなかったにもかかわらず3着以内となった4頭は、いずれも“前年以降、かつJRA、かつGI・GIIのレース”において“着順が3着以内、かつ上がり3ハロンタイム順位が2位以内”となった経験のある馬。格の高いレースで善戦してきた差し馬なら、無理に嫌う必要はないでしょう。

M ヒートオンビートは2着となった2021年の目黒記念で出走メンバー中1位の上がり3ハロンタイムをマーク。4走前の日経賞も着順が3着、上がり3ハロンタイム順位が1位でしたし、心配する必要はなさそうですね。

伊吹 私もそう見ています。あとは直近のパフォーマンスも素直に評価した方が良さそう。同じく2014年以降の過去8年に限ると、大敗直後の馬は期待を裏切りがちでした。


M なるほど。前走で馬券に絡めなかった馬は、過信禁物と見ておいた方が良いのかもしれません。

伊吹 ちなみに、前走の着順が4着以下・競走中止だった馬に限ると、前走の条件がGI・GII以外だった馬、そして前走のレースが京都大賞典だった馬は、2014年以降[0-1-0-56](3着内率1.8%)。要するに、大敗直後だったにもかかわらず好走した馬の大半は、前走が京都大賞典を除くGI・GIIだった馬です。

M ヒートオンビートは前走の新潟記念で5着に敗れてしまいました。

伊吹 着順ほど悪くない内容だったとは思うのですが、アルゼンチン共和国杯の傾向を重視するならば、不安要素のひとつと見るべきでしょう。さらに言うと、このレースは基本的にキャリアの浅い馬が優勢。出走数が15戦以内の馬は、2014年以降の3着内率が5割近くに達しています。


M ヒートオンビートはキャリア21戦。こちらもちょっと気掛かりですね。

伊吹 今年はキャリア15戦以内の馬が2頭しか特別登録を行っていないので、例年よりは大目に見るべきかもしれません。もっとも、出走数が16戦以上、かつ前走の上がり3ハロンタイム順位が5位以下・競走中止だった馬は2014年以降[0-2-0-57](3着内率3.4%)でした。

M ヒートオンビートは前走の上がり3ハロンタイム順位も9位どまり。レースの傾向からはあまり強調できない一頭ということになるのでしょうか。

伊吹 そういうことになりますね。能力の高さは十分に承知していますが、それでも今回は扱いに注意したいところです。ただ、他ならぬAiエスケープが有力視しているわけですし、手頃なオッズがつくなら逆らうメリットは小さそう。私も無印にするつもりはありません。

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競馬評論家。JRAの公式ホームページ内「今週の注目レース」にて“データ分析”のコーナーを、TCK(東京シティ競馬)の公式ホームページ内「分析レポート」にて重賞競走のデータ分析を担当しているほか、グリーンチャンネル、JRAのレーシングプログラム、『週刊アサヒ芸能』、『競馬王』などさまざまなメディアを舞台に活動している。主な著作に『WIN5攻略全書 回収率150%超!“ミスターWIN5”のマインドセット』、『コース別 本当に儲かる騎手大全』シリーズ、『コース別 本当に儲かる血統大全』シリーズ、『ウルトラ回収率』シリーズ(いずれもガイドワークス)など。

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