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『いつかクリストフのように』から約6年──脱帽の走りに自然と口をついた勝者への祝福【月刊 川田将雅】

  • 2022年11月04日(金) 18時06分
“VOICE”

▲ダノンベルーガと挑んだ天皇賞・秋を振り返る(撮影:福井麻衣子)


歴史的な一戦となった今年の天皇賞・秋。パンサラッサが後続を約20馬身離す大逃げをするなか、川田騎手鞍上のダノンベルーガは直線で内を突き3着。春はクラシックをともに戦い、秋の始動戦で歴戦の古馬を打ち負かす懸命の走りをしたパートナーに労いの言葉をかけました。

そんなゴール板を駆け抜けた後、すぐさま1着で入線したイクイノックス鞍上のC.ルメール騎手に駆け寄り馬上で言葉を交わすシーンが。2016年マカヒキでダービーを制した際、馬上で握手を求めたルメール騎手に「僕だったら、あんなことはできない」と言っていた川田騎手。6年が経ち無意識のうちに表れた心情の変化とは。

(取材・構成=不破由妃子)

パンサラッサは「気にしていないから、まったく見てない」


──天皇賞・秋のダノンベルーガは3着。非常に見応えのあるレースでした。ジャックドールとパンサラッサという力のある先行馬がいるなかで、川田さんがどんな競馬を組み立てるのか、とても興味深い一戦でもありました。

川田 どういう競馬をしたいのか、どういう形で進めていくのか、今回は堀調教師としっかり話し合っての競馬でした。だから、僕ひとりで作った競馬ではないのですが、大まかな方向性とすれば、想定の範囲内の組み立てができたかなと思います。

──結果は残念ではありましたが、私から見て、川田さんの冷静さが光ったポイントが2つ。まずは最初のコーナーの入りです。外の馬たちがコーナーに殺到するなか、ずっと一定のリズムを保ったまま入りましたよね。

川田 ゲートを出て5完歩くらいの間に、ポジション争いには参加しないという判断を僕がしました。東京芝2000mの最初のコーナーはとくにゴチャつきやすいうえ、GIですから、より強い気持ちを持ってポジションを取りにくる。みんな勝負に出てきますからね。

“VOICE”

▲ゲートを出て5完歩でポジション争いに参加しないという判断をした(撮影:福井麻衣子)


──その結果、イクイノックスはちょっと引かされる形に。

川田 枠の並びで人気馬がズラッと並んでいることも大きかったです。そういうときは、より意識が働くので。並びが良くない形になっていくことを感じたので、ポジション争いに参加することをやめた。あそこにベルーガが参加していたら、もっとガチャガチャと危ない形になっていましたし、そうなるのが見えていましたから。そこでガチャガチャして下げないといけなくなるくらいなら、もう初めから参加せず、リズムを取りたかった。もちろん、馬によっては、それでも強い気持ちでポジションを取りにいかなければいけないケースもありますが、今回は馬にとってストレスの少ない気持ちのいい競馬を優先し、参加しないという判断をしたと。

──その後のパンサラッサの大逃げは想定内?

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1985年10月15日、佐賀県生まれ。曾祖父、祖父、父、伯父が調教師という競馬一家。2004年にデビュー。同期は藤岡佑介、津村明秀、吉田隼人ら。2008年にキャプテントゥーレで皐月賞を勝利し、GI及びクラシック競走初制覇を飾る。2016年にマカヒキで日本ダービーを勝利し、ダービージョッキーとなると共に史上8人目のクラシック競走完全制覇を達成。

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