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【スタート論・前編】騎手がどんなに手を尽くしても──“出遅れ”が起こるこれだけの理由【In the brain】

  • 2022年11月17日(木) 18時01分
“VOICE”

▲今回のテーマは「スタート」について(撮影:福井麻衣子)


競馬において最も危険をはらんでいるのは「スタート」であると川田騎手は言います。今年のヴィクトリアマイルでも、川田騎手鞍上のレイパパレがスタートで躓き、落馬寸前まで態勢が崩れてしまうこともあり、他のレースでは実際に落馬もありました。

そのような事故を起こさないため、毎年若手騎手を対象とした研修でゲートの指導を行なったり、JRAとも協力して安全で公正な競馬の実施に尽力しているそう。しかし、ペルーサやゴールドシップのような“出ない”という意志を持った馬もいるのは事実だそう。そんな馬に対してはどんな働きかけをしているのでしょうか。川田騎手が持つゲートに関する知識を前後編に分けて明かします。

(取材・構成=不破由妃子)

ゲートはジョッキーが出すものではない


 出遅れはもちろん、枠入り不良、駐立不良などなど、競馬にはゲート、スタートでのアクシデントは付き物です。先週の競馬でも、各場で散見されましたね。ということで、今回のテーマは「ゲート」について。なぜ出遅れてしまうのか、そうさせないために僕が大事にしていることは何かなど、前後編に分けて書いていきたいと思います。

 騎手会のなかに研修委員という役割があり、長らく僕と(藤岡)佑介が担当してますが、JRAの発走委員より数年前から依頼を受けて、3年目までの若手を対象とした「ゲート」に特化した研修をしています。

 なぜそこに特化した研修が必要かというと、それだけ無事にスタートを切ることが大切で、しかも難しく、一歩間違うと大きな事故に繋がる危険性をはらんでいるということ。あの狭いゲートに18頭が横に並び、なにかトラブルが起きれば、人馬ともにケガするリスクがとても高い空間ですからね。

 研修では毎年、いくつもの事例を用意して、こういうケースではどうすべきだったのか、何をしたから、あるいは何をしなかったから危険を招いてしまったのかなどなど、精神面、技術面の両方から必要なことを伝えています。

 JRAとしては、人馬の危険回避はもちろん、「ファンのみなさんに安全で公正な競馬を提供する」という責務がある。主催者として、一番避けたいのはカンパイ(スタートのやり直し)で、実際は1997年を最後にJRAでは25年近く起きていませんが、これからもカンパイが発生しないよう、安全に正しく発馬機からスタートさせることに、とても重きを置いているのを感じます。

“VOICE”

▲カンパイが発生しないように発走委員とも協力(撮影:福井麻衣子)


 安全面だけではなく、結果を出すという意味でも、近年はスタートの重要性が高まっていますよね。新馬戦などはとくにそうですが、たとえ出遅れたとしても、能力があれば直線だけの競馬で勝つことができた時代を経て、競走馬全体のレベルが上がった今は、そうはいかなくなった

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1985年10月15日、佐賀県生まれ。曾祖父、祖父、父、伯父が調教師という競馬一家。2004年にデビュー。同期は藤岡佑介、津村明秀、吉田隼人ら。2008年にキャプテントゥーレで皐月賞を勝利し、GI及びクラシック競走初制覇を飾る。2016年にマカヒキで日本ダービーを勝利し、ダービージョッキーとなると共に史上8人目のクラシック競走完全制覇を達成。

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