スマートフォン版へ

【斎藤新騎手】ドゥーラと二人三脚で挑むGI舞台 新たな環境で出会った相棒を2歳女王へとエスコート

  • 2022年12月04日(日) 18時01分
今週のFace

▲ドゥーラと阪神JFに挑む斎藤新騎手(撮影:大恵陽子)


デビューから3戦すべてで上がり最速をマークし、札幌2歳Sを制したドゥーラ。鞍上の斎藤新騎手にとっては、デビュー戦から二人三脚で歩んできた馬で初めての重賞制覇でもありました。

1頭と1人の出会いは、斎藤騎手がデビュー4年目にして「何かの刺激になれば」と初めて北海道滞在をしたことから始まります。先日、久しぶりに会うと「お姉さんになっていた」というドゥーラと臨むGI・阪神ジュベナイルフィリーズについて伺いました。

(取材・構成:大恵陽子)

「1〜2戦目でリラックスして走れたことが生きた」札幌2歳Sの向正面


──ドゥーラにはデビュー戦の最終追い切りに騎乗していましたが、どんな印象でしたか?

斎藤 入厩した時からずっと乗ってはいなくて、同じ厩舎の別の2歳馬に乗っていました。その併せ馬の相手がドゥーラで、隣でずっと見ていたイメージはやんちゃな馬なのかな、と思っていました。でも、実際に乗ってみると操縦性が良くて、全然いい子でした。

──迎えたデビュー戦は少しゆったりしたスタートでした。

斎藤 ちょっと気負いやすいようなタイプだったので、初戦からスタートで刺激を与えてしまって、のちのちゲート内でうるさくなってしまうのは避けたかったですし、今後のレースで引っ掛かるようになるのも嫌だったので、新馬戦は競馬を教えようと、馬群に入れていろんな経験をさせました。「新馬だな」という感じのレースでしたけど、最後は外に出すとすごくいい脚を使ってくれて「これは次に変わりそうだな」と、いい感触を掴めました。

──ドゥーラに限らず、新馬戦って幼稚園児のかけっこみたいな自由奔放さがありますね。それもまた可愛いです。

斎藤 そうですね(笑)。競走馬は新馬戦から2戦目でガラッと変わって、「あれ、こんな馬だったっけ?」と思うこともよくあります。ドゥーラも1回使ってからすごく落ち着きが出て、モタモタしていた動きがちょっと締まって動けるようになっていました。

──そうして2戦目でしっかり勝ちきったわけですね。

斎藤 初戦はゲートが開くとビックリして全然出なかったのに、2戦目はいいスタートを切ったので競馬がしやすくなりました。ドゥーラのいいところは取りたいポジションで競馬ができることと、そこで力まずリラックスして走ってくれることです。その分、しまいの脚もしっかり使えて、2戦目では期待通りの末脚を見せてくれました。

今週のFace

▲2戦目で勝ち上がり(c)netkeiba.com


──続く札幌2歳Sは外枠でした。


斎藤 枠順発表前から僕、外枠が欲しかったんです。何なら大外でもいいぐらいの感じで、開催が進むにつれて内の馬場が悪くなっていたので、できれば馬場のいいところで走らせてあげたいな、と思っていました。

──向正面でドゥアイズが外からポジションを少し上げるシーンがありましたけど、ドゥーラは力んだりしませんでしたか?

斎藤 ああいうシチュエーションはドゥーラにとって初めてだったので、交わされた瞬間はちょっと力むような面はあったんですけど、2〜3完歩の間にすごくリラックスした状態に戻ってくれました。1〜2戦目でリラックスして走れていたことが生きたのかな、と感じます。

──競馬を教えてきた成果が出たんですね。直線では初勝利を挙げた時に比べて追ってからの伸びや走りがしっかりしているように見えましたが、乗っていていかがでしたか?

斎藤 デビューからの2戦は追ってからすごく左に張っていました。とはいえ、内容自体は悪くないので、いい意味でまだまだこれから精神的に大人になって、体もしっかりしてくれば走れるようになるだろうな、と感じていました。そういった中で札幌2歳Sの芝での最終追い切りがすごく良くて、左に張る面もマシになっていました。その分、レースでも全てを推進力に変えられたのかな、と思います。

──ゴール後には大きなガッツポーズが出ましたね。

斎藤 初戦からずっと乗せていただいていたので、嬉しかったです。ドゥーラがすごく賢くて、1戦毎に成長していってくれたことが大きいんですけど、調教も乗って初戦から競馬を教えてきて、という馬での初めての重賞制覇でした。調教や競馬でやってきたことが実になったような気がして嬉しかったです。

今週のFace

▲“相棒”との重賞制覇は初めて(撮影:山中博喜)


「気のせいかもしれないけど、顔つきがお姉さんに」


──斎藤騎手は今夏、デビュー4年目にして初めての北海道滞在でした。そのおかげで、こうしてドゥーラに出会えましたね。

斎藤 今年は新しい環境で頑張って、何か刺激になればいいな、と考えていました。普段は関東馬の調教には乗れないので、北海道で滞在することによって調教から競馬に繋がるかな、という思いで北海道に行きました。

──斎藤騎手はお父様が美浦の斎藤誠調教師とあって、美浦の調教師とは繋がりがありそうですけど、厩舎スタッフとは普段からコミュニケーションを取れるわけではないですものね。

斎藤 関東馬に乗せていただく時に馬を曳いている方とお話しすることはありますが、馬場入場までのわずかな時間なので密にコンタクトを取れることはあまりありませんでした。北海道では調教助手さんや厩務員さんとも親しくなれましたし、栗東では時間的に1日5頭くらいしか調教に乗れないのが、北海道では10頭くらい乗せてもらって「こんなに乗れるんだ」と思いました。

今週のFace

▲調教から競馬に繋がるかなとの思いで北海道へ(撮影:山中博喜)


──さて、ドゥーラは世代最初のGI・阪神ジュベナイルフィリーズに臨みます。デビューからの3戦はすべてコーナー4回で、今回が初のワンターンになりますが、いかがですか?

斎藤 操縦性のいい馬ですし、コース自体は問題なく、器用に立ち回ってくれると思います。あとは、初めての1600mやワンターンがどう出るかだと思いますけど、今までの内容からしても上手に対応してくれると思います。僕はドゥーラの力を信じて、上手くエスコートしてあげるだけかなと思います。

──デビューから共に歩んできた馬とのGIの舞台、楽しみですね。

斎藤 2週前追い切りに乗った時、すごく顔つきがお姉さんになっていました。僕の気のせいかもしれないですけど、すごく大人しくてお利口さんだな、と感じました。その2週前追い切りはまだレースまで時間があるので、前に目標を置いてしまいを伸ばしたくらいで、いい意味で「2週前だな」という感じの動きでした。1週前にはビッシリやって、ドゥーラとGIに臨みたいと思います。

今週のFace

▲ドゥーラの力を信じて、上手くエスコートしてあげるだけ(撮影:山中博喜)


(文中敬称略)

このコラムをお気に入り登録する

このコラムをお気に入り登録する

お気に入り登録済み

ジョッキーや調教師など、毎週“旬”な競馬関係者にインタビュー。netkeiba特派員がジョッキーや調教師、厩舎スタッフなど、いま最も旬な競馬関係者を直撃。ホースマンの勝負師としての信念から、人気ジョッキーのプライベートまで、ここだけで見せてくれる素顔をお届けします!

バックナンバー

新着コラム

アクセスランキング

注目数ランキング