スマートフォン版へ

【ホープフルS】幸運を味方につけたムルザバエフ騎手

  • 2022年12月29日(木) 18時00分

冷静なペース判断が光った勝利


重賞レース回顧

14番人気ドゥラエレーデが勝利(C)netkeiba.com、撮影:下野雄規


 前身となったラジオNIKKEI杯2歳Sなどの時代を含めて、今回は初の18頭立て。キャリアの浅い同士の2歳戦。素質や、現時点での能力を出し切れるとは限らない。難しい結果になることは予測されたが、GI昇格後の「単勝、馬連、3連複、3連単246万円…」などことごとくの式別最高配当が塗り変えられる大波乱だった。

 クラシックを展望するレースなので、ムリに飛ばす馬は少ない。当然、スローの流れは考えられたが、ここが最多7戦目のトップナイフ(父デクラレーションオブウォー)が先手を奪って、2番手が5戦目のドゥラエレーデ(父ドゥラメンテ)。ともにキャリアを積んでいるからスムーズに折り合えた。

 前後半の1000m「61秒5-60秒0」=2分01秒5のスロー。早々と日本のスピード競馬に慣れ、積極策を取り入れるB.ムルザバエフ騎手だが、レースを作ってくれる人馬がいるなら2番手は理想のポジション。まして先頭は横山典弘騎手。ピッチが上がらないまま1400m通過「1分26秒5」のスローで展開したあと、後半3ハロン「11秒9-11秒2-11秒9」=35秒0の速い上がりとなって、2頭のマッチレースだった。

 差し切って交わしたというより、態勢はトップナイフ有利と見えたが、ゴールの瞬間だけドゥラエレーデ(ムルザバエフ騎手)のハナ先が出ていた大接戦だった。ここが5戦目のドゥラエレーデは、すべて異なる騎手が乗る不思議な馬。技術うんぬんではなく、好漢ムルザバエフの幸運を味方にしたような勝利だった。

 2冠馬の父ドゥラメンテは5世代の産駒を送っただけで早世したが、この3世代目の産駒には牝馬リバティアイランドもいて、今年は2歳総合種牡馬ランキング目下1位。母マルケッサ(父オルフェーヴル)は、菊花賞、有馬記念など8勝もしたサトノダイヤモンド(父ディープインパクト)の妹。半妹ではなく父は同父系。祖母マルペンサ(ARG)はアルゼンチンのG1・3勝馬。今回は幸運に恵まれた印象もあるが、クラシック候補となったと同時に、馬名通り最高の後継者になるかもしれない。

 トップナイフは、あまりに惜しい2着だが、戦法は逃げ差し自在。War Frontウォーフロント直仔の父は新種牡馬ランキング4位。この父系の中では快走した距離に幅があり、種牡馬としてすでに中–長距離のGI馬を数多く輩出している。「まだまだ馬体がゆるい」とされながらすでに7戦。近年では珍しいタフなクラシック候補になった。祖母ビクトリーマッハ(父は日本ダービー馬バンブーアトラス)は、通算14勝もしたチャンピオン=テイエムオペラオーの半姉に当たる。さらに良くなるだろう。

 スローの流れがもっとも痛かったのは3着キングスレイン(父ルーラーシップ)。前半は後方に控え、後半3コーナー過ぎから一気のスパートをかけたが、直線の入り口でふくれた他馬のあおりを受け、外に振られてしまった。そこから猛然と伸びて上がり最速の34秒3。脚を余した印象の3着はこの時期だけに残念。賞金加算とならなかった。

 1番人気のミッキーカプチーノ(父エピファネイア)は、大外18番枠なのでスタートで少しだけ気合を入れ、好位の外を確保する作戦。うまく流れに持ったように映ったが、1-2着馬と違ってまだ3戦目。前半から少し力んだ追走になってしまった。これがスタミナロスにつながったか、4コーナーから早々ともたついて伸びなかった。最外枠、勝負服の色彩、大きなストライドなど、どこかトウカイテイオーを彷彿させるところがあった。近くの記者も同じことをつぶやいていた。今回が力負けではない。

 2番人気で4着のファントムシーフ(父ハービンジャー)は中位のインで巧みにコースロスを避ける作戦。坂を上がって最後も力強く伸びている。間を空けた前回が8キロ増。今回、再び間隔を空けて10キロ増。着実に好馬体に変化しているが、いま成長期なのだろう。まだ若いためもあるが、鋭さは感じさせなかった。春に変わると思える。

 4番人気で16着に沈んだガストリック(父ジャスタウェイ)は、整った好バランスの体つき。パドックの気配、返し馬の印象も悪くなかったが、直前になって昂りすぎたのか、レースでは前半からリズムを欠いて、まったく良さを発揮できなかった。

 C.デムーロ騎乗で3番人気まで評価の上がったセブンマジシャン(父ジャスタウェイ)は、多頭数のスローペースで若さを出し、前半はずっと口を割って折り合っていなかった。かなりのロスがあったと思えるが、あれで小差6着は立派。メイショウサムソン産駒の母は、タフな成長力を誇ったクロノジェネシス、ノームコアの半姉。これから一戦毎に変わってくれるはずだ。

当コラムの次回更新は1月10日(火)18時予定です。

このコラムをお気に入り登録する

このコラムをお気に入り登録する

お気に入り登録済み

1948年、長野県出身、早稲田大卒。1973年に日刊競馬に入社。UHFテレビ競馬中継解説者時代から、長年に渡って独自のスタンスと多様な角度からレースを推理し、競馬を語り続ける。netkeiba.com、競馬総合チャンネルでは、土曜メインレース展望(金曜18時)、日曜メインレース展望(土曜18時)、重賞レース回顧(月曜18時)の執筆を担当。

バックナンバー

新着コラム

アクセスランキング

注目数ランキング