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【松永幹夫調教師】昨春の“大出遅れ”を転機に砂を駆け上がる ギルデッドミラーをもう一度GI舞台へ!

  • 2023年01月22日(日) 18時01分
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▲ギルデッドミラーを管理する松永幹夫師(撮影:大恵陽子)


牝馬で初めて武蔵野Sを勝ったギルデッドミラー。牝馬にとって牡馬混合のダート重賞は壁が高く、過去10年での勝利は2015年チャンピオンズC・サンビスタのみということからも、いかに大きな1勝だったかが分かります。

3歳時にはGI・NHKマイルCで3着など芝でも活躍し、昨夏ダートに転向すると3戦2勝と躍進の同馬。松永幹夫調教師は「もっと早くダートを使えばよかったですね」と自虐を交えて話しますが、このタイミングだったからこそ結果を残せた背景もあるようです。29日の根岸S、そして結果次第ではフェブラリーSも目指すギルデッドミラーについて伺いました。

(取材・構成:大恵陽子)

ダートを試したい、でも芝重賞でも上位争いを続け、葛藤


──ギルデッドミラーは半兄に芝の重賞馬ストロングタイタンがいるなど、兄弟には芝での活躍馬も多く、この馬自身も芝デビューからオープン入りしました。

松永 力のある馬だな、とずっと思っていて、芝のGIII・アーリントンCで2着や、GI・NHKマイルCでも3着に入ったように、いい走りを見せてくれていました。若い頃は乗り難しくて行きたがる面があったので勝てないこともありましたけど、善戦はしていました。

──2〜3歳の頃はレースでも道中、力む面が見られたり、「調教で乗り難しい」といったコメントもたびたびされていました。

松永 何しろ行きたがるので、それをコントロールするのが難しかったです。

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▲2、3歳時は善戦するも、乗り難しい面があった(写真は萩S出走時・ユーザー提供:spe_reさん)


──そうした中で、ダート転向の経緯というのは?

松永 以前からダートを試そうか、という話はあったんですけど、芝の重賞でも掲示板に載るなど上位には来ていたので、なかなかタイミングが合いませんでした。

──ターコイズS3着や、ダービー卿チャレンジトロフィーでは牡馬に混じって5着でしたものね。

松永 そうした中、去年の京王杯スプリングCのゲートで立ち上がって大出遅れしてしまったんです。あの時、ジョッキーも言っていたんですけど、まともだったらおそらく上位争いしていたんじゃないかな、というくらい力はあったと思います。でも、ゲート練習をやり直すことにもなって、「この際、ダートに行ってみようか」と思い切って切り替えられました。


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▲京王杯SCではゲート内で立ち上がり大きく出遅れた(ユーザー提供:淳。さん)


──怪我の功名ですね。初めてダートを走る馬は砂を被って嫌がるなど、道中スムーズに運べないこともありますが、初ダートのNST賞は「あれ? ずっとダート走っていましたっけ?」というくらいのレースの上手さでした。

松永 本当、そうなんですよね。調教で動く馬だったのでダートは合うだろうなと思っていたんですけど、初ダートでしかもオープンでまさかあんなにアッサリ勝ってくれるなんて、「やっぱり違うな」と思いました。

──ダート2戦目のグリーンチャンネルCは4分の3馬身差の2着でしたが、直線で進路が開けるとしっかり伸びました。

松永 しっかり伸びてくれたし、速い馬場のレコード決着で僅差の2着。ここで改めて「やっぱりダート適性があるな」と思いましたし、もっと早くダート使えばよかったって思いました(苦笑)。

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▲ダート転向初戦のNST賞を新コンビの三浦皇成騎手と勝利(撮影:下野雄規)


難しい適性の見極めも、「去年から折り合い面が良くなった」ことが追い風に


──適性の見極めは非常に難しいものだと思いますし、このタイミングだったからこそダートでも力を発揮できたということもあったりしませんか?

松永 年齢を重ねて、昔ほど調教で難しい面がなくなってはきました。以前はホント暴走気味に走るところがあったんですけど、去年あたりから折り合い面がすごく良くなったんですよ。今回の坂路での1週前追い切りもそうでしたけど、前半を少しセーブしながら行けるようになっています。ちょっとリラックスして走れるようになった点もこの馬にとっては良かったのかなと思います。

──だからこそ、ダートでもあれだけの末脚を発揮できるんですね。そしてダート転向3戦目にして武蔵野Sも勝ちました。

松永 それまでのダートでの2戦は軽い馬場で、芝を走ってきた馬だったのでそれも良かったんだと思います。でも武蔵野Sは良馬場で、力のいるダートはまだ走ったことがなかったので、ここでどんな競馬をするのかな、と思っていました。そこでもしっかり結果を出してくれたので、やっぱりダートはいいでしょうね。

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▲武蔵野Sで念願の重賞初制覇(撮影:下野雄規)


──武蔵野Sを牝馬が勝つのは初めてでしたし、全体的な流れを見てもダートは芝以上に牝馬が重賞で活躍するのは難しいように感じます。それだけ活躍できる“何か”があるのでしょうか。

松永 すごく走りたがる面がいいんじゃないかなと思います。

──今年6歳という年齢とクラブ所属馬ということから、現役期間は長くても今年3月までとなります。

松永 レースに出られるのはあと1〜2回かなと思うので、なんとかフェブラリーSに出走させたいですが、現状ではまだ出走枠に入れるかどうか分かりません。武蔵野Sは意外とレーティングがつかなくて、レーティング順では選ばれないと思うので、賞金順で入れるように根岸Sはできれば勝ちたいですし、少なくとも2着までに来て賞金加算をして本番に行きたいです。

──昨秋はジャパンCのヴェラアズール、チャンピオンズCのジュンライトボルトなど芝/ダート替わりでの活躍がトレンドでした。ギルデッドミラーも活躍を期待しています。

松永 みんなが一概に芝/ダート替わりでこんなに走ってくれるとは限らないですけど、ギルデッドミラーにとってはすごく良かったんだと思います。武蔵野Sは牝馬が初勝利というくらい、牝馬がダートの大きなレースを勝つのはなかなか難しいと思います。だけど、この馬は能力があると思っているので、根岸Sでもいい結果を出してフェブラリーSに向かいたいなと思っています。

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▲引退まで残り僅か、根岸Sを勝利しフェブラリーSへ!(撮影:下野雄規)


(文中敬称略)

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ジョッキーや調教師など、毎週“旬”な競馬関係者にインタビュー。netkeiba特派員がジョッキーや調教師、厩舎スタッフなど、いま最も旬な競馬関係者を直撃。ホースマンの勝負師としての信念から、人気ジョッキーのプライベートまで、ここだけで見せてくれる素顔をお届けします!

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