スマートフォン版へ

イギリスで重賞競走の優勝トロフィーが盗まれる 未だ行方不明

  • 2023年02月08日(水) 12時00分

プロによる犯行か、2010年にも同様の被害


 英国で2日(木曜日)に、昨年のチェルトナムフェスティヴァルで優勝馬関係者に贈呈されたトロフィーの1つが、盗難に遭うという事件が起きた。

 盗まれたのは、チェルトナムフェスティヴァル2日目の第6競走として施行されたG3グランドアニュアルチャレンジC(芝15F199y)の後、優勝馬グローバルシティズンを管理するベン・ポーリング調教師に贈られたトロフィーである。

 1834年に創設されたグランドアニュアルチャレンジCは、現在英国で施行されている障害戦の中で、最も歴史の長いレースだ。第1回競走がアンドヴァーズフォードで行われたグランドアニュアルチャレンジCは、開催地が何度か変更になった後、1913年からチェルトナムに定着。チェルトナムフェスティヴァルで現在施行されている重賞の中では、1912年に創設されたG1ステイヤーズハードルに次いで、2番目に長い歴史を誇る。

 2022年のG3グランドアニュアルチャレンジCは当初、20頭が出馬登録をしていたが、あいにくの悪天候でHeavyという極悪馬場となり、4頭が出走を取り消し。さらに、出走した16頭のうち5頭が競走を中止するという消耗戦となった。

 そんな中、馬群を先導する形でレースを進めたのが、20年のG1アークルチャレンジトロフィー(芝15F199y)4着馬で、その前走サンダウンのLRコンテンダースハードル(芝15F216y)が3着だったグローバルシティズンで、最終障害を前にしてスパートをかけた同馬が、後続に3馬身差をつけて快勝。29倍の12番人気という低評価を覆す激走だった。

 優勝トロフィーはレース後しばらく、ポーリング厩舎内にある、馬主を歓待するための応接間に飾られていたが、手入れを行なうために、事件が起きる少し前から、シェフィールドのジブラルタル・ストリートにある「キャメロット・シルヴァーウェア」という銀細工師のもとに預けられていた。

 そこに、2月2日の未明に窃盗犯が忍び込んだのである。「キャメロット・シルヴァーウェア」から地元警察に、2日の午後6時10分に通報があり、サウス・ヨークシャー警察が駆け付けたところ、グランドアニュアルチャレンジCの優勝トロフィーを含む銀器数点が盗まれていることが判明した。

 サウス・ヨークシャー警察は、盗品の転売まで手掛けるプロによる犯行とみて、目撃者を探しているが、6日の段階で犯人はつかまっておらず、トロフィーも行方不明のままだ。

 ベン・ポーリング調教師はメディアを通じて、貴重なトロフィーなので返して欲しいと犯人に呼びかける一方、同師は今年のグランドアニュアルチャレンジCにグローバルシティズン(セン11)とシェイケムアップアリー(セン9)の2頭出しで臨む構えを見せており、改めてのトロフィー獲得に意欲を見せている。

 チェルトナム・フェスティヴァルのトロフィーが盗まれたのは、実はこれが初めてではない。よりによって、開催のハイライトとなるG1ゴールドC(芝26F70y)の優勝トロフィーが盗まれたのが、2010年7月14日のことだった。

 ゴールドCの優勝トロフィーと言えば純金製で、それだけで最低でも1万ポンドの価値があるといわれている逸品である。トロフィーは、事件から遡ること22年前の1988年に、デヴィッド・ニコルソンが管理し、リチャード・ダンウッディが騎乗したチャーターパーティーがゴールドCを制した後、馬主に贈られたものだった。

 同馬は、レイモンド・モウルド氏が、夫人のジェニーさん、知人であるコリンとクレアのスミス夫妻と共同で所有しており、優勝トロフィーは、モウルド夫妻がグリスターシャーのウォーミントンに所有する邸宅に保管されていた。

 窃盗犯は、2010年7月14日の午前0時から午前6時50分の間に侵入したと見られ、ゴールドCをはじめとした優勝トロフィー3点の他、野うさぎを模したブロンズ像、純金の装飾がある木製時計、銀製のシガレットケースなど、総額で15万ポンドを越える品々が盗難に遭っている。

 英国の競馬関係者は今、大切なカップやトロフィー、盾などを、どこでどうやって保管するか、頭を悩ませている。

このコラムをお気に入り登録する

このコラムをお気に入り登録する

お気に入り登録済み

1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

バックナンバー

新着コラム

アクセスランキング

注目数ランキング