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【中山記念AI予想】先週のレッドルゼルと同じパターン! AIの注目馬はレースの傾向からも不安なし

  • 2023年02月20日(月) 18時00分

単勝オッズ2.2倍(1番人気)のレモンポップが優勝(撮影:下野雄規)


netkeibaにある膨大な競走成績を人工知能によって機械学習するAiエスケープを開発したAIマスター・Mと、レースデータの分析を専門とする競馬評論家・伊吹雅也による今週末のメインレース展望。コンピュータの“脳”が導き出した注目馬の期待度を、人間の“脳”がさまざまな角度からチェックする。
(文・構成=伊吹雅也)

単勝1番人気馬の好走率はあまり高くないレースだが……


AIマスターM(以下、M) 先週はフェブラリーSが行われ、単勝オッズ2.2倍(1番人気)のレモンポップが優勝を果たしました。

伊吹 完璧な競馬だったと言っても良いのではないでしょうか。素晴らしいスタートを決めて果敢に飛び出した後、行きたい馬を先に行かせる形で無理なくポジションを下げ、道中は先団の6番手前後を追走。3〜4コーナーで先頭との差を詰めつつ馬群の外めに持ち出し、残り200m地点のかなり手前で早くも後続を突き放しています。

 そこからレッドルゼル(2着)が迫ってきたものの、最後の最後まで脚色は衰えず、結局セーフティリードを保ったままゴール。中盤までは前後左右をライバルに囲まれるような形が続きましたし、決して楽なレースではなかったと思うのですが、冷静に進路を確保した坂井瑠星騎手も、その手綱捌きにしっかり応えて見せたレモンポップも、本当にお見事です。

M レモンポップは今回がGI初挑戦。実績面に加え、コース適性や臨戦過程を不安視する向きもありましたが、まったくの杞憂でしたね。

伊吹 前走の根岸Sが着差以上の完勝だった分、却って「東京ダ1400mがベストなのではないか」「前走が『メイチ』の勝負だったのではないか」という疑念を持たれてしまった印象。私は素直に◎を打ったものの、半信半疑のまま連軸に据えた方も少なくなかったと思います。結果的にこれだけのパフォーマンスを見せたわけで、今後はファンからの期待や信頼がさらに高まりそう。

 しかしその一方で、まだ東京競馬場やダ1400〜1600mのレースしか勝っていないという事実もありますから、疑念を持たれながら人気の中心となるようなシチュエーションは必ずあるはずです。次走以降の取捨を的確に判定できるよう、これまでの戦績や走りをしっかり復習しておきましょう。

M ちなみに、2着のレッドルゼルは前回の当コラムでAiエスケープが注目馬としていた馬。レースの傾向からも特に不安要素が見当たりませんでした。

伊吹 位置取りの差もありましたし、レモンポップを差し切れなかったのは仕方ありません。私の想定より人気を集めてしまったとはいえ、パフォーマンス自体は期待通り。やはり力のある馬だと思います。実績ある距離のレースなら、まだまだ今後もGIを勝ち切るチャンスはありそうです。

M 今週の日曜中山メインレースは、大阪杯などの前哨戦と位置付けられている伝統の古馬GII、中山記念。昨年は単勝オッズ4.4倍(2番人気)のパンサラッサが優勝を果たしました。どちらかと言えば堅く収まりがちな印象のあるレースですが、実際のところはいかがでしょうか。


伊吹 3連単の発売が始まった2005年以降の過去18年まで集計対象を広げても、3連単の配当が10万円を超えたのは2010年と2017年の2回だけ。ちょうど3分の2にあたる12回は3連単4万円未満の低額配当決着となっています。昨年も3連単の配当は1万5510円どまりでしたから、大きく荒れる可能性は低いと見ておいた方が良さそう。ただし、特に近年は、単勝1番人気馬が意外と上位に食い込めていません。


M 過去10年で3勝しているとはいえ、他の7頭はいずれも4着以下に敗退。3着内率が3割どまりというのは気になるところです。

伊吹 まぁ、単勝2番人気馬は2013年以降[4-2-2-2](3着内率80.0%)でしたから、人気馬を無理に嫌う必要はないと思いますよ。ちなみに、単勝3〜8番人気の馬は2013年以降[3-8-8-41](3着内率31.7%)、単勝9番人気以下の馬は2013年以降[0-0-0-43](3着内率0.0%)でした。少なくとも、超人気薄の一発はあまり期待できないと考えるべきでしょう。

M そんな中山記念でAiエスケープが指名した特別登録時点の注目馬は、ヒシイグアスです。

伊吹 絶妙なところを挙げてきましたね。単勝1番人気となる可能性もありますが、何頭かがこの馬を上回ってきそうな気も。

M ヒシイグアスは2021年の中山記念を勝っている馬。前走の宝塚記念でも2着に食い込んでいます。ただし、今回は約8か月の休養明け。7歳という馬齢を含め、懐疑的に見ている方も少なくないでしょう。

伊吹 実績上位とはいえ、同格以上の馬が他にもいますし、意外と妙味あるオッズがつくかもしれませんね。Aiエスケープが高く評価しているという点を踏まえたうえで、私は好走馬の傾向から、この馬が上位に食い込んでくる確率を見積もっていきたいと思います。

M 先程も触れた通り、ヒシイグアスは明け7歳。やはり評価を下げるべきですか?

伊吹 その必要はないでしょう。休養を挟みながら使われてきたこともあって、ヒシイグアスはまだキャリア15戦。そして、2014年以降の3着以内馬延べ27頭中22頭は、出走数が18戦以内でした。


M なるほど。これだけはっきりしているのならば、馬齢よりもキャリアを重視した方が良いかもしれませんね。

伊吹 数字だけを見るならば、確かに馬齢が7歳以上の馬は2014年以降[0-0-2-27](3着内率6.9%)と苦戦しています。ただし、このうち出走数が18戦以内だった馬はゼロ。もし馬齢が嫌われるようならば、むしろ積極的に狙っていきたいです。

M 近走成績についてはいかがでしょう。

伊吹 特に気掛かりな点は見当たりません。同じく2014年以降の3着以内馬延べ27頭中24頭は、前年以降に16頭立て以上のJRA重賞で連対している馬でした。


M こちらも先程触れた通り、ヒシイグアスは18頭立てだった2022年の宝塚記念で2着に健闘しています。

伊吹 ちなみに“前年以降、かつJRA、かつGIのレース”において13着以内となった経験がない馬は2014年以降[1-3-1-47](3着内率9.6%)といまひとつ。3着以内となった5頭は、いずれも前走の着順が1着だったか、前走の1位入線馬とのタイム差が0.3秒以内だった馬です。前年のGIを使っている馬と前走好走馬が中心のレースと言えそうで、この点からもヒシイグアスは高く評価するべきでしょう。

M 他に何か注目しておくべきポイントはありますか?

伊吹 前走の出走頭数ですね。2014年以降に限ると、13頭立て以下のレースを経由してきた馬はまったく上位に食い込めていません。


M これは興味深い。はっきりと明暗が分かれています。

伊吹 今年はこの条件に引っ掛かっている馬が人気を集めそう。該当馬は過信禁物と見るべきでしょう。

M 逆に言うと、18頭立ての宝塚記念から直行してきたヒシイグアスにとっては心強い傾向。先週のレッドルゼルと同じく、レースの傾向からも強調できる一頭ということになりました。

伊吹 心強いですね。そもそも、Aiエスケープがある程度の人気を集めそうなこの馬を挙げてきたということは、妙味ある伏兵が見当たらないということでもあるはず。よほどの一本被りにでもならない限りは、私も当初の予定通りにこの馬を中心視したいと思います。

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競馬評論家。JRAの公式ホームページ内「今週の注目レース」にて“データ分析”のコーナーを、TCK(東京シティ競馬)の公式ホームページ内「分析レポート」にて重賞競走のデータ分析を担当しているほか、グリーンチャンネル、JRAのレーシングプログラム、『週刊アサヒ芸能』、『競馬王』などさまざまなメディアを舞台に活動している。主な著作に『WIN5攻略全書 回収率150%超!“ミスターWIN5”のマインドセット』、『コース別 本当に儲かる騎手大全』シリーズ、『コース別 本当に儲かる血統大全』シリーズ、『ウルトラ回収率』シリーズ(いずれもガイドワークス)など。

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