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世界最高賞金競走サウジCで日本馬優勝も実現可能か

  • 2023年02月22日(水) 12時00分

大きな期待を寄せる日本馬とは


 2月25日(土曜日)に、サウジアラビアの首都リヤドにあるキングアブドゥルアジーズ競馬場で、今年で4回目の開催となる「サウジCデー」が行われる。

 施行される6つのサラブレッド重賞の、前半の展望をお届けした先週に引き続き、今週は後半の3競走を展望したい。

 まずは、当日の第6競走に組まれている、総賞金150万ドルのG3サウジダービー(d1600m)。ブックメーカー各社が2.5〜3.0倍のオッズを掲げて前売り1番人気に推しているのが、米国からの遠征馬ハヴナメルトダウン(牡3、父アンキャプチャード)だ。ボブ・バファート厩舎から昨年7月にデビューすると、2歳時はデルマー競馬場でばかり4戦を消化。

 メイドン(d5F)を制しデビュー勝ちを果すと、続くG3ベストパルS(d6F)を制し重賞初制覇。3戦目となったG1デルマーフューチュリティ(d7F)では、その後G1BCジュヴェナイル(d8.5F)でも2着に好走するケイヴロックの2着に敗れたが、続くG3ボブホープS(d7F)を勝って2歳シーズンを締めくくっている。今季の始動戦となったのが、1月29日にサンタアニタで行われたG2サンヴィセンテS(d7F)で、ここも素質馬ファウスティンを2着に退けて優勝し、3度目の重賞制覇を果たした。サウジダービーの1600mという距離は同馬にとって未知の領域で、スタミナが持つかどうかがポイントとなりそうだ。

 4頭出しで臨む日本勢の勝機も充分にありそうで、中でも、ブックメーカー各社がひと桁台のオッズを提示しているデルマソトガケ(牡3、父マインドユアビスケッツ)、コンティノアール(牡3、父ドレフォン)の2頭には、大きな期待を寄せたい。

 初勝利を挙げるのに4戦を要したものの、その後3連勝でJpn1全日本2歳優駿(d1600m)を制したのがデルマソトガケだ。一方のコンティノアールは、昨年11月26日に、ケンタッキーダービーのジャパンロード初戦に指定されているカトレアS(d1600m)を制している。

 この2頭は、昨年11月6日に阪神で行われた1勝クラスのもちの木賞(d1800m)で顔を合わせており、この時はデルマソトガケがコンティノアールにハナ差先着して優勝しているが、2頭の力量は互角と見て良さそうである。ここをステップに、G2UAEダービー(d1900m)からG1ケンタッキーダービー(d10F)という路線を歩んで欲しいものだ。

 続いて、当日の7競走に組まれている、総賞金150万ドルのリヤドダートスプリント(d1200m)。

 昨年のこのレースを5.3/4馬身差で快勝して世界を驚かせたダンシングプリンス(牡7、父パドトロワ)が、連覇を目指してサウジ入りしている。昨年11月には盛岡のJpn1JBCスプリント(d1200m)を制し、さらに箔をつけての参戦だけに、少なくとも前年並みのパフォーマンスをすることが期待される。

 それでは連覇有望かと言えば、残念ながら、簡単な勝負にはなりそうもない。というのも今年は、ダートの短距離戦がお家芸の米国から、G1BCスプリント(d6F)勝ち馬という大物が参戦してきたのである。ビル・モット厩舎のエリートパワー(牡5、父カーリン)は、初勝利を挙げたのが4歳の6月という、超がつくほど遅咲きの馬だった。だが、そこからの出世の早さは超速で、一気の4連勝でアケダクトのG2ヴォスバーグS(d7F)を制し重賞初制覇。

 勢いに乗って挑んだキーンランドのG1BCスプリントも制し、22年の全米牡馬チャンピオンスプリンターに選出された。中団以降から差してくる馬で、先行するダンシングプリンスを目掛けて繰り出す末脚は脅威である。GIIIカペラS(d1200m)を勝っての参戦となるリメイク(牡4、父ラニ)は、明けて4歳になったばかりで、伸びシロがたっぷりありそうなのが魅力だ。この日が最後の騎乗となる福永祐一騎手に、花向けの勝利を贈ることが出来れば最高の結末となる。

 侮れないもう1頭が、昨年のG1ドバイゴールデンシャヒーン(d1200m)勝ち馬スイッツァランド(セン9、父スパイツタウン)だ。今季初戦のG3ドバウィS(d1200m)を快勝し、9歳を迎えていささかも衰えていないところを見せた同馬。このレースは3年連続の参戦で、21年が4着、22年が6着と、キングアブドゥルアジーズのダートコースとの相性が良いとは言えないが、警戒が必要な馬であることは間違いなさそうである。

 最後に、当日の第8競走に組まれている、世界最高賞金競走(総賞金2000万ドル)のG1サウジC(d1800m)。

 この競走条件だけに、欧州のブックメーカー各社が上位人気に推しているのは、米国調教馬2頭である。

 昨年のこのレースの2着馬カントリーグラマー(牡6)はその後、直接渡ったドバイでG1ドバイワールドC(d2000m)を制し、自身2度目のG1制覇を果たした。帰国後は、勝ち馬フライトラインに19.1/4馬身離されたG1パシフィッククラシック(d10F)を含めて、2着が3回続いたが、12月26日にサンタアニタで行われたG2サンアントニオS(d8.5F)を4.1/2馬身差で制し、シーズンを勝ち星で締めくくった。

 同じく12月26日にサンタアニタで行われたG1マリブS(d7F)を4.1/4馬身差で快勝し、こちらもシーズンを勝利で締めくくったのがテイバ(牡4、父ガンランナー)だ。それが3度目のG1制覇で、保持するレイティングは123と、121のカントリーグラマーより2ポンド上を行く実力馬である。

 3番人気から9番人気に間に、ジュンライトボルト(牡6、父キングカメハメハ)、クラウンプライド(牡4、父リーチザクラウン)、パンサラッサ(牡6、父ロードカナロア)、カフェファラオ(牡6、父アメリカンフェイロー)、ジオグリフ(牡4、父ドレフォン)という日本調教馬5頭と、エンブレムロード(牡5、父クオリティロード)、スコットランドヤード(牡4、父クオリティロード)という2頭のサウジアラビア調教馬2頭が並んでいる。

 上記5頭に、ヴァンドギャルド(牡6、父ディープインパクト)を加えた6頭の日本代表は、3頭がダート路線を主戦場とし、3頭が芝路線を主戦場とする馬という顔触れとなっている。キングアブドゥルアジーズのダートコースにどの馬が適しているかは、実際に走ってみなければわからないというのが正直なところだが、路面がフィットし、なおかつサウジの気候にもフィットする馬が現れれば、4回目のサウジCにして初めて、日本馬の優勝が実現してもおかしくはないと見ている。

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1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

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