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【金鯱賞AI予想】オッズ的には妙味十分!? 好調なAIが指名したのは大敗続きの実績馬

  • 2023年03月06日(月) 18時00分

単勝オッズ4.2倍(3番人気)のタスティエーラが優勝(撮影:下野雄規)


netkeibaにある膨大な競走成績を人工知能によって機械学習するAiエスケープを開発したAIマスター・Mと、レースデータの分析を専門とする競馬評論家・伊吹雅也による今週末のメインレース展望。コンピュータの“脳”が導き出した注目馬の期待度を、人間の“脳”がさまざまな角度からチェックする。
(文・構成=伊吹雅也)

単勝1番人気馬は堅実だが伏兵が穴をあけた例も少なくない


AIマスターM(以下、M) 先週は弥生賞が行われ、単勝オッズ4.2倍(3番人気)のタスティエーラが優勝を果たしました。

伊吹 着差以上の完勝と言って良いのではないでしょうか。スタート直後から好位に取り付き、道中は先団の外めを追走。3〜4コーナーで前との差を詰め、ゴール前の直線に入ってすぐ先頭のゴッドファーザー(10着)をかわしています。すぐ後ろにいたワンダイレクト(3着)や最内を通ったトップナイフ(2着)もそれなりに伸びていましたが、結局1馬身ほどの差を保ったまま入線。おそらく陣営や鞍上の松山弘平騎手はレース前からこんな展開をイメージしていたのだと思いますし、その期待に応えて勝ち切ったタスティエーラもお見事です。

M タスティエーラはこのレースが通算3戦目。前走の共同通信杯で4着に健闘したものの、春のクラシック戦線へ駒を進めるには収得賞金の上積みや優先出走権の獲得が必要な状況でした。

伊吹 これから先の競走生活に大きく影響してくる一勝かもしれませんね。共同通信杯で先着を許した3頭のうち、ファントムシーフ(1着)は野路菊S1着やホープフルS4着の実績が、ダノンザタイガー(3着)は東京スポーツ杯S2着の実績があった馬。ハイレベルなメンバー構成だったと言って良いでしょう。今回の弥生賞も決して楽な相手ではなかったうえ、どんな展開になっても結果は変わらなかっただろうと思えるような、横綱相撲での勝利。皐月賞はもちろん、日本ダービーや今秋以降の大舞台でもしっかり注目しておきたいです。

M ちなみに、2着のトップナイフは前回の当コラムでAiエスケープが推奨していた馬。タスティエーラを差し返すことはできなかったものの、外を通って伸びてきたワンダイレクトやアームブランシュ(4着)らの追撃は凌ぎ切っています。

伊吹 レースの傾向を踏まえた私の見立ても「それなりに信頼して良さそうな人気馬」でしたし、結局私は最終的な予想でも重いシルシを打ちました。単勝1番人気だったことを考えると微妙に映るかもしれませんが、この展開で2着を確保したわけですから、概ね期待通りのパフォーマンスを見せてくれたと言って良いでしょう。フェブラリーSのレッドルゼル(2着)や中山記念のヒシイグアス(1着)も同じような評価だったわけで、我々に良い流れが来ているのかも。なんとかこの調子をキープしていきたいところです。まぁ、ここ3週と同様にAiエスケープと私の見解が一致するかどうかはまた別の話であり、この流れで割れるようだと却って読者の皆様を困惑させてしまうかもしれませんが……(笑)。

M 今週の日曜中京メインレースは、大阪杯などの前哨戦と位置付けられている金鯱賞。昨年は単勝オッズ2.0倍(1番人気)のジャックドールが優勝を果たしました。2021年に単勝オッズ227.3倍(10番人気)のギベオンが勝っているとはいえ、少頭数の年が多いこともあり、堅く収まりがちな印象があります。


伊吹 施行時期が3月上旬〜中旬となった2017年以降の優勝馬6頭中、2021年のギベオンを除く5頭は単勝オッズ4倍未満の支持を集めていた馬。過去10年の単勝人気順別成績を見ても、単勝1番人気馬は比較的堅実です。



M ただ、こうして見ると、人気薄の馬が上位に食い込んだ例も決して少なくはありません。

伊吹 おっしゃる通り。よりわかりやすい区切り方をすると、単勝2番人気以内の馬は2013年以降[6-3-4-7](3着内率65.0%)、単勝3〜6番人気の馬は2013年以降[3-3-5-29](3着内率27.5%)、単勝7〜10番人気の馬は2013年以降[1-4-1-33](3着内率15.4%)、単勝11番人気以下の馬は2013年以降[0-0-1-29](3着内率3.3%)となっていました。人気の中心になっているような馬はある程度高く評価したいところですが、単勝3〜6番人気あたりの馬がやや安定感を欠いていましたし、積極的に伏兵を狙ってみるのもひとつの手でしょう。

M そんな金鯱賞でAiエスケープが指名した特別登録時点の注目馬は、ポタジェです。

伊吹 面白いところを挙げてきましたね。超人気薄ということはないと思いますが、それなりに妙味あるオッズがつきそう。

M ポタジェは2022年の大阪杯を勝っている実績馬。ただし、その後は11着・6着・13着・12着と大敗が続いてしまっています。出走メンバー中唯一のGIウイナーとはいえ、人気が集中する可能性は低いと見て良いでしょう。

伊吹 大阪杯を勝った時が単勝オッズ58.7倍(8番人気)だったように、もともと支持が集まりやすいタイプではありませんからね。Aiエスケープの注目馬である点を踏まえたうえで、私はレースの傾向からこの馬の好走確率を見積もっていきたいと思います。

M 前走は有馬記念(12着)で、3か月弱の休養明けとなりますが、やはりこのあたりは不安要素と見ておいた方が良いのでしょうか?

伊吹 そんなことはありません。前走の条件がGIだった馬は2017年以降[4-4-2-14](3着内率41.7%)。むしろ、まずはビッグレースからの直行組に注目したいレースです。ちなみに、前走の条件がGI以外だったにもかかわらず3着以内となった8頭のうち7頭は、前走の4コーナー通過順が5番手以内でした。



M なるほど。特別登録を行った馬のうち、前走の条件がGIなのはポタジェだけ。そうなると、先行力が低い馬たちよりは高く評価できますね。

伊吹 人気薄の実績上位馬という意味でも、マークしておくだけの価値は十分にあると見て良いでしょう。

M 前走の有馬記念で12着に敗れている点はいかがですか?

伊吹 こちらはさすがに強調できませんね。同じく2017年以降の3着以内馬18頭中16頭は、前走の着順が7着以内でした。



M 大敗直後の馬は過信禁物、と。

伊吹 前走の着順が8着以下だったにもかかわらず3着以内となった2頭は、いずれも前走のレースが凱旋門賞。はっきり度外視可能と判断できるレースだったならばともかく、そうでない場合は評価を下げるべきでしょう。

M 他に何か注目しておくべきポイントはありますか?

伊吹 2017年以降の3着以内馬18頭中14頭は、馬齢が5歳以下。6歳以上の高齢馬はあまり上位に食い込めていません。



M 明け6歳のポタジェにとっては気掛かりな傾向です。

伊吹 なお、馬齢が6歳以上、かつ前走のレースが白富士S以外だった馬は2017年以降[0-1-0-27](3着内率3.6%)。左回り、かつ2000mのレースを主戦場としてこなかった高齢馬は、特に疑ってかかるべきだと思います。

M 残念ながら今回はAiエスケープと伊吹さんの見解が割れてしまいました。

伊吹 私からすると気になる点が多く、さすがに重いシルシを打つことはできません。ただし、中京芝2000mはディープインパクト直仔の期待値が高いコース。オッズや実績には魅力を感じますし、Aiエスケープの評価も高いわけですから、買い目のどこかには入れておくつもりです。

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競馬評論家。JRAの公式ホームページ内「今週の注目レース」にて“データ分析”のコーナーを、TCK(東京シティ競馬)の公式ホームページ内「分析レポート」にて重賞競走のデータ分析を担当しているほか、グリーンチャンネル、JRAのレーシングプログラム、『週刊アサヒ芸能』、『競馬王』などさまざまなメディアを舞台に活動している。主な著作に『WIN5攻略全書 回収率150%超!“ミスターWIN5”のマインドセット』、『コース別 本当に儲かる騎手大全』シリーズ、『コース別 本当に儲かる血統大全』シリーズ、『ウルトラ回収率』シリーズ(いずれもガイドワークス)など。

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