スマートフォン版へ

【ラヴェル×福岡五大助手】「能力をしっかり出させてあげることを一番に」陣営が描く逆転へのシナリオ

  • 2023年05月14日(日) 18時02分
今週のFace

▲オークスに出走予定のラヴェルを担当する福岡五大調教助手 (撮影:大恵陽子)


昨秋のアルテミスSで重賞初制覇を果たしたラヴェル。素晴らしい末脚を繰り出し、2着リバティアイランドを抑えての勝利とあって将来への期待は大きく高まりました。

しかし、その後の阪神JFでは道中で力み、桜花賞は直線で挟まれる不利などもあって2桁着順。力を発揮できないレースが続きましたが、陣営は「オークスでは前進が可能」と手ごたえを掴んでいます。オークスでの巻き返しを目指して、担当する福岡五大調教助手(矢作芳人厩舎)に伺いました。

(取材・構成=大恵陽子)

「バネがあるから、折り合いがつけば末脚は素晴らしいものに」


──近親にはブリーダーズカップディスタフを勝ったマルシュロレーヌのいる血統です。第一印象から教えてください。

福岡 見た目は可愛らしい女の子でしたけど、跨るとやっぱり「すごくいい馬やな」というバネが初日からありました。

──そこからデビュー戦に向けての調整過程は?

福岡 ゲートの入りがちょっと悪くて時間がかかってしまって、ゲート試験合格まで1カ月、さらにそこからレースまで3週間くらいと、在厩期間が長くなりました。この子の中でゲートに納得しない部分があったので、時間をかけて納得するのを待ちました。暑い中でしたけど、全然ヘコたれなかったです。

──ゲート試験まで1カ月は、近年の流れからすると早いとは言えない部類かなと思います。それだけに、デビュー戦を勝利で飾れた時は喜びも大きかったのでは?

福岡 そうですね、矢作厩舎としても時間をかけた方で、何とか初戦から結果を出したいなと思っていたので、勝った時はホッとしました。レースは第一印象の通り、バネやこの馬の良さを感じられました。スタートはちょっと遅いかなと思ったんですけど、良くも悪くも調教通りの走りをしてくれました。乗っていた岩田望来騎手も「広いコースでもっと良さそう」と話していました。

今週のFace

▲小倉でデビュー勝ちを収めたラヴェル (C)netkeiba.com


──2戦目がまさに広いコースの東京競馬場で、アルテミスSでしたね。


福岡 のちのちは距離を延ばして大きいところを目指したくてデビュー戦は1800mを選択したんですけど、牝馬なら1600mは避けて通れないので、アルテミスSになりました。競馬を経験して前向きさが出てきて、だんだんと調教でも行きっぷりがよくなっていたので、その辺は少し警戒していました。(坂井)瑠星くんとも「バネがあるから、折り合いがつけば末脚は素晴らしいものになるんじゃないかな」と話していました。それがレースでそのまま形になってくれました。

今週のFace

▲デビュー2戦目のアルテミスSで重賞初制覇 (撮影:下野雄規)


「しっかり折り合えばオークスでも距離は十分対応できる」


──追い込んでくるリバティアイランドを封じての重賞制覇でした。それだけに、阪神JF、桜花賞とGIではもどかしさや悔しさもあったのでは?

福岡 さっきもお話しさせてもらったんですけど、アルテミスSの前後ぐらいから行きっぷりがよくなり始めていたので、瑠星くんも「これ以上行くと、危ないですね」と折り合い面を心配していました。アルテミスSでは折り合ってはいたんですけど、馬群に入っていたわけでもありませんでした。ゲートも良化のスピードがちょっとゆっくりで、その辺の危惧していたことが出てしまったのが阪神JFかなと思います。ゲートが悪くて、力んでしまって折り合いもなかなかつきませんでした。

──不安視していたものが全てレースで出てしまったんですね。

福岡 桜花賞に向けてその2点は重点的に何とかしたいな、と思いました。間隔が空いていたのでノーザンファームしがらきに出して、牧場で馬が落ち着いている状況でゲートに慣れさせてもらいました。牧場ではそこまで折り合いに苦労するタイプではないみたいなので、いいリフレッシュも兼ねて課題に取り組んでいこう、と。

──桜花賞でその成果は感じられましたか?

福岡 ゲートは改善点が見られましたし、折り合いも瑠星くんは「阪神JFより力みはマシ」と話していました。着順は阪神JFと同じ11着でしたけど、内容としては間違いなく良化していると感じました。これらの精度をもう少し高めていければ、オークスで前進が可能だと思えました。

──桜花賞では直線でもうひと伸びできそうなところで挟まれるシーンもありましたし、着順以上の内容だったということですね。折り合いさえつけば、末脚はすごく弾けそうです。

福岡 走りはすごく柔らかくてバネがあるので、しっかり折り合えばオークスでも距離は十分対応できると思っています。

──オークスは大観衆のいるスタンド前発走となりますが、その点はいかがでしょうか?

福岡 牝馬ですけど、ピリピリして人を近づかせないオーラを出すほどではありません。むしろ、構ってほしい感じの馬です。これまでは向正面からのスタートが多かったので断言はできないですけど、スタンド前発走は大きなマイナスにはならない気がしています。

──つい「あのリバティアイランドに勝ったことのある馬」という目で見てしまいますけど、そういう感覚はありますか?

福岡 相手関係というよりは、この子の能力をしっかり出させてあげることを一番に考えています。瑠星くんもアルテミスSで上手く乗ってくれて勝てたので、またラヴェルの能力が出せるよう専念したいです。賢いので、型にハマればしっかり学んでくれると思うので、そういう方向に上手く持っていってあげたいです。

──改めてオークスへの意気込みをお願いします。

福岡 1600mよりも折り合いはすごく大事なポイントになると思うので、前向きになり過ぎないよう上手くコントロールしてあげられたらと思います。ゲートも含め、色々な課題を少しずつ改善していっている最中ですが、この子の能力をしっかり出せるようにレースまでやっていきたいと思います。

今週のFace

▲アルテミスS勝利時のラヴェルと福岡助手 (撮影:下野雄規)


(文中敬称略)

このコラムをお気に入り登録する

このコラムをお気に入り登録する

お気に入り登録済み

ジョッキーや調教師など、毎週“旬”な競馬関係者にインタビュー。netkeiba特派員がジョッキーや調教師、厩舎スタッフなど、いま最も旬な競馬関係者を直撃。ホースマンの勝負師としての信念から、人気ジョッキーのプライベートまで、ここだけで見せてくれる素顔をお届けします!

バックナンバー

新着コラム

アクセスランキング

注目数ランキング