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【日本ダービーAI予想】見解が割れる一頭! AIの注目馬は不安要素を克服できるか

  • 2023年05月22日(月) 18時00分

単勝オッズ1.4倍(1番人気)のリバティアイランドが優勝(c)netkeiba.com


netkeibaにある膨大な競走成績を人工知能によって機械学習するAiエスケープを開発したAIマスター・Mと、レースデータの分析を専門とする競馬評論家・伊吹雅也による今週末のメインレース展望。コンピュータの“脳”が導き出した注目馬の期待度を、人間の“脳”がさまざまな角度からチェックする。
(文・構成=伊吹雅也)


単勝3番人気以内の馬が優秀な成績を収めている


AIマスターM(以下、M) 先週はオークスが行われ、単勝オッズ1.4倍(1番人気)のリバティアイランドが優勝を果たしています。

伊吹 2着のハーパーに6馬身もの差をつけたわけですが、それでもなお「着差以上の完勝」と表現してしまいたくなるような、まったく危なげのない勝ちっぷりでしたね。好スタートから無理なく先行勢の後ろにつけ、道中は6〜7番手のインコースを追走。どこからでも動いていけそうな縦長の隊列でしたし、リバティアイランドに逆らった方の多くは、この時点で半ば観念していたのではないでしょうか。その後は4コーナーで少しずつ外めに持ち出し、持ったままでポジションを押し上げ、先団から抜け出したラヴェル(4着)を追う展開に。残り200m地点のあたりで難なくかわし、そのまま後続を突き放しています。上がり3ハロンタイムは出走メンバー中トップの34.0秒で、2位のドゥーラ(3着)とは0.1秒差だったものの、3位タイのハーパーとは0.8秒差。あのポジションからこんな脚を使われてしまったら、他の馬はなす術がありません。

M リバティアイランドはこれでGI3連勝。阪神JF・桜花賞・オークスの3競走をすべて制したのは、2008〜2009年のブエナビスタ、2009〜2010年のアパパネに続き史上3頭目です。

伊吹 アパパネは2010年の秋華賞も制して3歳牝馬三冠を達成。ブエナビスタも2009年の秋華賞は勝ったレッドディザイアとハナ差の2位入線(3着降着)でしたね。無事に駒を進めてきたら、今秋の秋華賞でも相応に高く評価するべきでしょう。

M 牡馬勢や年長世代との対戦を楽しみにしている方も多いのではないかと思います。

伊吹 ブエナビスタは4歳時にヴィクトリアMと天皇賞(秋)を、5歳時にジャパンCを制覇。アパパネも4歳時にヴィクトリアMを勝っていますから、来年以降まで活躍が続く可能性は高そうです。少なくとも、ゴール前の直線が長いコースであれば、牡馬相手であってもそれなりにやれるはず。歴史的名牝の足跡を今後もしっかりと見守っていきましょう。

M 今週の日曜東京メインレースは、この時期の国民的行事として親しまれてきた現3歳世代のチャンピオン決定戦、日本ダービー。昨年は単勝オッズ4.2倍(3番人気)のドウデュースが優勝を果たしました。なお、その2022年は単勝オッズ3.8倍(2番人気)のイクイノックスが2着、単勝オッズ24.7倍(7番人気)のアスクビクターモアが3着となったものの、3連単の配当は1万5770円にとどまっています。


伊吹 2018年に3連単285万6300円の高額配当が飛び出しているとはいえ、2013年以降の過去10年に限ると、3連単の配当が10万円を超えたのは3回だけ。半数の5回は2万円を切る低額配当決着でしたし、堅く収まりがちなレースと見ておいた方が良いかもしれません。そもそも、過去10年の3着以内馬30頭中19頭は、単勝3番人気以内の支持を集めていた馬です。



M 単勝1番人気や単勝2〜3番人気の馬は好走率も優秀。ある程度は素直に信頼して良いのではないでしょうか。

伊吹 一方、単勝4〜12番人気の馬は2013年以降[3-2-5-80](3着内率11.1%)、単勝13番人気以下の馬は2013年以降[0-0-1-57](3着内率1.7%)と、それぞれ苦戦していました。わざわざ予想を人気サイドに寄せる必要はありませんが、荒れにくいレースであることを意識したうえで最終的な買い目を組み立てるべきだと思います。

M そんな日本ダービーでAiエスケープが指名した特別登録時点の注目馬は、スキルヴィングです。

伊吹 これはなかなか興味深いチョイス。単勝1番人気となるかどうかはともかく、上位人気グループの一角には入ってくるでしょう。

M ご存じの通り、スキルヴィングは前哨戦の青葉賞を快勝した馬。デビュー2戦目から3連勝中ですし、皐月賞組ではなく新興勢力を狙おうと考えている方にとっては、魅力的に映る一頭かと思います。報道のトーン次第では、皐月賞馬ソールオリエンスと同等かそれ以上の支持が集まるかもしれません。

伊吹 どちらかと言えば穴党のAiエスケープがこの馬を推してきたということは、妙味ある伏兵が見当たらなかったのだろう――と解釈することも可能。例年並みの堅い決着になると判断したようですね。Aiエスケープが高く評価しているという事実を踏まえつつ、この馬のプロフィールと好走馬の傾向を見比べていきましょう。

M まず、前走の青葉賞を勝ち切った点はどう評価していますか?

伊吹 当然ながら、それなりに高く評価せざるを得ません。2013年以降の3着以内馬30頭中27頭は、前走の着順が1着、もしくは前走の1位入線馬とのタイム差が0.5秒以内でした。



M 大敗直後の馬は割り引きが必要ですね。

伊吹 基本的に前走好走馬が強いレースであるという事実は、大前提として予想に反映させるべきでしょう。

M スキルヴィングは前走の上がり3ハロンタイムも出走メンバー中1位タイ。コース適性の高さを改めて証明しましたし、前哨戦としては申し分のない内容だったと言って良いかもしれません。

伊吹 ただし、前走の4コーナー通過順が11番手だった点は少々気掛かり。2019年以降の過去4年に限ると、前走の4コーナーを6番手以下で通過した馬は期待を裏切りがちでした。



M 前走で先行していた馬の方が信頼できるんですね。

伊吹 前走の4コーナー通過順が6番手以下だったにもかかわらず3着以内となった4頭のうち3頭は、前走のレースが皐月賞、かつ前走の上がり3ハロンタイム順位が2位以内。ソールオリエンスやファントムシーフのような馬でない限り、末脚を活かしたいタイプは疑ってかかるべきだと思います。

M スキルヴィングは10頭立てだった2走前のゆりかもめ賞でも4コーナー通過順が7番手だった馬。この脚質をどう見るかがひとつのポイントでしょうね。

伊吹 さらに言うと、近年の日本ダービーはホープフルS・弥生賞・皐月賞で上位に食い込んだ馬が中心。2019年以降の3着以内馬12頭中10頭は“中山芝2000m内、かつGI・GIIのレース”において3着以内となった経験がある馬でした。



M スキルヴィングはまだ東京のレースしか走ったことがないので、残念ながらこの条件はクリアしていません。

伊吹 近年に限った話ではありますが、東京のレースを積極的に使ってきた馬よりも、3歳牡馬クラシック戦線の王道を歩んできた馬に注目するべき一戦なのだと思います。こういった傾向をどのように解釈するかも予想のポイントになりそうです。

M 今回は伊吹さんとAiエスケープの見解が割れました。

伊吹 ここ3戦の内容自体はもちろん悪くありませんし、他ならぬAiエスケープが注目馬として挙げてきたのですから、押さえておくに越したことはないはず。しかし、見方によってはこれだけの不安要素があるわけですし、取捨を慎重に判断するべきでしょう。私自身も、この馬や連軸にする見込みの馬がどれくらいの人気になるかを見極めたうえで、買い目に組み込むか否かの最終決断を下したいと思います。

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競馬評論家。JRAの公式ホームページ内「今週の注目レース」にて“データ分析”のコーナーを、TCK(東京シティ競馬)の公式ホームページ内「分析レポート」にて重賞競走のデータ分析を担当しているほか、グリーンチャンネル、JRAのレーシングプログラム、『週刊アサヒ芸能』、『競馬王』などさまざまなメディアを舞台に活動している。主な著作に『WIN5攻略全書 回収率150%超!“ミスターWIN5”のマインドセット』、『コース別 本当に儲かる騎手大全』シリーズ、『コース別 本当に儲かる血統大全』シリーズ、『ウルトラ回収率』シリーズ(いずれもガイドワークス)など。

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