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【安田記念 AI予想】過小評価されそうな今回は狙い目!? AIが指名した伏兵を徹底分析

  • 2023年05月29日(月) 18時00分

単勝オッズ8.3倍(4番人気)のタスティエーラが優勝(撮影:下野雄規)


netkeibaにある膨大な競走成績を人工知能によって機械学習するAiエスケープを開発したAIマスター・Mと、レースデータの分析を専門とする競馬評論家・伊吹雅也による今週末のメインレース展望。コンピュータの“脳”が導き出した注目馬の期待度を、人間の“脳”がさまざまな角度からチェックする。
(文・構成=伊吹雅也)

ここ7年の優勝馬はいずれも単勝3番人気以下だが……


AIマスターM(以下、M) 先週は日本ダービーが行われ、単勝オッズ8.3倍(4番人気)のタスティエーラが優勝を果たしました。

伊吹 完璧なレース運びだったと言って良いのではないでしょうか。まずまずのスタートから迷わずポジションを取りに行き、1コーナーを4番手で通過。鞍上のD.レーン騎手がガッチリ抑えるような手応えで3コーナーに入り、後続のソールオリエンス(2着)らに対して一定のリードを保ったまま4コーナーを通過しています。その後は道中2番手を追走していたホウオウビスケッツ(6着)と競り合う形で力強く伸び、残り200m地点のあたりで単独先頭に。ゴールの手前で外からソールオリエンスとハーツコンチェルト(3着)が、内からベラジオオペラ(4着)が急追したものの、結局クビ差だけ残しました。小細工なしの横綱相撲を選択したD.レーン騎手も、その信頼に応えたタスティエーラも、本当にお見事です。

M タスティエーラは前走の皐月賞で2着に健闘していた馬。結果的に、単勝オッズ8.3倍の4番人気というのは過小評価だったかもしれませんね。

伊吹 今年の皐月賞で9着以内となった馬のうち、1コーナー通過順が8番手以内だったのはこのタスティエーラだけ。明らかに差し有利な展開でしたし、高く評価して良い内容だったと思います。前回の当コラムで指摘した通り、そもそも近年の日本ダービーは前走で積極的な競馬をしていた馬が優勢。4走前の共同通信杯で4着に敗れており、コース適性を不安視する向きもありましたが、私は躊躇いなく本命に指名しました。

M タスティエーラはサトノクラウンの初年度産駒。父のファンにとっても感慨深い勝利だったのではないでしょうか。

伊吹 サトノクラウンは2016年の香港ヴァーズや2017年の宝塚記念を制したものの、3歳時の日本ダービーは勝ったドゥラメンテから0.3秒差の3着どまり。父の無念を晴らした形ですね。その父Marjuは国内でも供用されたことがあるラストタイクーンの産駒で、現役時代にセントジェームズパレスS1着、イギリスダービー2着などの実績がある馬。現在の日本競馬界における主流からは少々外れた血統なので、このタスティエーラはこれまでに前例のない、我々の想像を超えてくるような競走生活を送ってくれそうな気がします。今後も目が離せません。

M 今週の日曜東京メインレースは、3歳勢を含めた上半期のチャンピオンマイラー決定戦、安田記念。昨年は単勝オッズ8.2倍(4番人気)のソングラインが優勝を果たしました。荒れやすいという印象はないのですが、実際のところはいかがでしょうか。


伊吹 2016年以降の優勝馬7頭はいずれも単勝3番人気以下で、2022年のソングラインを除く6頭は単勝オッズも10倍以上。もっとも、この期間中における3連単の配当は2017年の28万3000円が最高でしたし、計7回中4回は10万円未満です。上位人気馬があまり勝ち切れていないとはいえ、波乱必至のレースとまでは言えませんね。



M 過去10年の単勝人気順別成績を見る限りだと、超人気薄の馬も侮れないように思えますが……。

伊吹 より実態に即した区切り方をすると、単勝2〜4番人気の馬は2013年以降[3-4-3-20](3着内率33.3%)、単勝5〜12番人気の馬は2013年以降[4-2-5-69](3着内率13.8%)、単勝13番人気以下の馬は2013年以降[0-1-0-39](3着内率2.5%)となっていました。上位人気グループの馬が総崩れとなった年は少ないので、伏兵を狙う場合は注意しましょう。

M そんな安田記念でAiエスケープが指名した特別登録時点の注目馬は、ソウルラッシュです。

伊吹 面白いところを挙げてきましたね。既に十分な実績があるものの、豪華なメンバー構成ということもあって、今回は人気の盲点になりそう。

M ソウルラッシュは2022年の読売マイラーズCを勝っている馬。同年のマイルCSでも4着に健闘しています。もっとも、今年の安田記念はJRA・GIの勝ち馬が10頭、JRA重賞を複数回勝っている馬が11頭も特別登録を行っていますから、中心視しようと考えている方はそれほど多くないかもしれません。

伊吹 少なくとも、上位人気グループの一角を占めるということはなさそうですね。Aiエスケープが高く評価していることを踏まえたうえで、レースの傾向とこの馬のプロフィールを照らし合わせながら、好走確率を見積もっていきましょう。

M まず、実績面についてはどう見ていますか?

伊吹 昨秋のマイルCSで善戦した点は高く評価して良さそう。2017年以降の3着以内馬延べ18頭中16頭は“前年以降の、JRAの、GIのレース”において“着順が5着以内、かつ4コーナー通過順が9番手以内”となった経験のある馬でした。



M なるほど。まだビッグレースで上位に食い込んだことのない馬は、割り引きが必要ですね。

伊吹 今年は例年以上に実績馬が揃いましたし、この傾向が覆る可能性はかなり低いと思います。

M あとはどのファクターを重視するべきでしょうか。

伊吹 コース適性はしっかりチェックしておいた方が良いかもしれませんね。同じく2017年以降の3着以内馬延べ18頭中17頭は“東京の、重賞のレース”において“着順が1着、かつ上がり3ハロンタイム順位が5位以内”となった経験のある馬でした。



M これはわかりやすい。東京の重賞を勝ったことがない馬は、疑ってかかった方が良さそうです。

伊吹 東京のレースを積極的に使ってこなかった馬はもちろん、先行力の高さを活かしたいタイプも過信禁物と見るべきでしょう。

M 残念ながらソウルラッシュはこの条件をクリアしていません。ただし、2022年の富士Sで勝ったセリフォスとクビ差の2着に健闘していますし、当時の上がり3ハロンタイムは出走メンバー中2位タイ。大目に見ても良いような気がします。

伊吹 ソウルラッシュに関する懸念材料をもうひとつ挙げておくと、この安田記念はノーザンファーム生産馬が強いレース。生産者がノーザンファーム以外の馬は2017年以降[2-2-2-57](3着内率9.5%)でしたし、3着以内となった延べ6頭のうち5頭は関東圏のビッグレースで優勝を争ったことのある馬でした。



M ソウルラッシュは下河辺牧場の生産馬。また、東京・中山のGIを使うのは13着どまりだった2022年の安田記念以来で、今回がまだ2回目です。

伊吹 今年もノーザンファーム生産馬や関東圏のビッグレースを勝ったことのある馬がたくさん出走を予定していますから、これらの馬が順当に力を出し切るようだと、上位に食い込むのはなかなか難しいかもしれません。

M レースの傾向からは強調しづらい一頭ということになってしまいますね。

伊吹 もちろん、能力やコース適性はそれなりに高いわけですし、このタイミングでAiエスケープが推奨してきたのですから、今回は比較的狙いやすい状況にあると見て良いでしょう。私も無理に嫌うつもりはなく、オッズ次第ではシルシを回す予定。最終的な買い目を決めるまでは、しっかり動向に注目しておきたいです。

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競馬評論家。JRAの公式ホームページ内「今週の注目レース」にて“データ分析”のコーナーを、TCK(東京シティ競馬)の公式ホームページ内「分析レポート」にて重賞競走のデータ分析を担当しているほか、グリーンチャンネル、JRAのレーシングプログラム、『週刊アサヒ芸能』、『競馬王』などさまざまなメディアを舞台に活動している。主な著作に『WIN5攻略全書 回収率150%超!“ミスターWIN5”のマインドセット』、『コース別 本当に儲かる騎手大全』シリーズ、『コース別 本当に儲かる血統大全』シリーズ、『ウルトラ回収率』シリーズ(いずれもガイドワークス)など。

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