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英国ダービー展望

  • 2006年05月30日(火) 23時50分
 6月3日の土曜日に開催が迫った第227回英国ダービー(エプソム、12f10y)。29日(月曜日)正午に締め切られた5日前登録の段階で、22頭が出走意志を表している。

 ブックメーカー各社が2.5倍から2.75倍のオッズを掲げて1番人気に支持しているのが、ここまで3戦3勝のフランス調教馬ヴィジンダー(父シンダー)。2歳時1戦1勝。4月にロンシャンの特別で今季初勝利を飾った後、5月15日にサンクルーで行われたG2グレフュール賞(G2、2000m)を制して重賞初制覇を飾った。今季のシーズン開幕前から英国ダービー挑戦を視野に入れていた馬で、最終プレップもエプソムと同じ左回りのサンクルーのレースを選択するなど、管理するアンドレ・ファーブル(19年連続フランスのリーディングトレーナー)が周到な用意を施した上でドーバー海峡を渡ってくる。

 勝てば、フランス調教馬としては76年のエンペリー以来30年振りの快挙となるが、ポイントはエプソムのタフなコースを克服出来るかに尽きるだろう。父は英愛ダービーに加えて凱旋門賞を制した馬で、今年4歳の初年度産駒から愛オークス、ヴェルメイユ賞を制したシャワンダが出たから、父系はスタミナに溢れているが、問題は牝系で、母の父がミスタープロスペクターで、母ヴァイザーは6fの距離で勝ち星を挙げているスプリンターだった。ヴァイザーは母として、仏2000ギニー3着馬ヴィショナリー(父リナミックス)、仏オークス3着馬ヴィショナイル(父リナミックス)らを輩出。更に祖母ルックの兄弟に、ベルモントSを制したスウェイルがいるという血統背景は、スピード一辺倒ではないものの、かと言って12fドーンと来いというファミリーでもなく、エプソムの直線でスタミナ切れの可能性もありうると見ている。

 一方、スタミナに関しては何の問題もなさそうなのが、各社4.5倍から5倍のオッズで2番人気に推しているセプティマス(父サドラーズウェルズ)だ。G1レイシングポストトロフィー3着馬で、2歳の頃からダービー候補と言われていた馬だが、道悪となった5月18日のG2ダンテS(ヨーク、10f88y)を8馬身差で圧勝し、更に株を上げることになった。牝系は極上というわけではないが、父サドラーズウェルズ、母の父ダルシャーンだから、力の勝負に持ち込めば勝機は格段に上がるはずだ。

 2000ギニーで2着となった後、前売り1番人気に躍り出た時期もあったサーパーシー(父マークオヴエスティーム)。その後疲れが出て、一時はダービー回避も取り沙汰されたが、先週あたりからようやく調教のピッチが上がり、どうやら予定通り出走できそう。各社8倍から9倍で3番人気。

 冬の間ダービーの1番人気だったホレイショネルソン(父デインヒル)は、今季緒戦の2000ギニーで8着と大敗したものの、次走は予定通りダービーへ。各社9倍から10倍のオッズで4番人気。

 以下、5月11日にチェスターで行われたG3チャスターヴァーズの勝ち馬ペイパルブル(父モンジュー)が11倍から13倍、5月14日にレパーズタウンで行われたG2愛ダービートライアルSを制したディラントーマス(父デインヒル)が12倍から13倍、5月13日にリングフィールドで行われたG3ダービートライアルSを制したリンダズラッド(父サドラーズウェルズ)が13倍から15倍と、直前のプレップレースの勝ち馬が、僅差のオッズでひしめいている。

 ここまで御紹介した7頭のうち、セプティマス、ホレイショネルソン、ディラントーマスの3頭はA・オブライエンの管理馬で、主戦のキアラン・ファーロンがどの馬とコンビを組むかで、オッズは大きく変動する可能性を秘めている。

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1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

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