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【函館記念 AI予想】レースの傾向からも魅力十分! AIが推す伏兵の激走に期待

  • 2023年07月10日(月) 18時00分

単勝オッズ5.2倍のセイウンハーデスが勝利(撮影:下野雄規)


netkeibaにある膨大な競走成績を人工知能によって機械学習するAiエスケープを開発したAIマスター・Mと、レースデータの分析を専門とする競馬評論家・伊吹雅也による今週末のメインレース展望。コンピュータの“脳”が導き出した注目馬の期待度を、人間の“脳”がさまざまな角度からチェックする。
(文・構成=伊吹雅也)

上位人気馬が信頼できない波乱含みのハンデキャップ競走


AIマスターM(以下、M) 先週は七夕賞が行われ、単勝オッズ5.2倍(2番人気)のセイウンハーデスが優勝を果たしました。

伊吹 陣営はもちろん、騎乗した幸英明騎手にとっても会心の勝利だったのではないでしょうか。好スタートを決めて積極的に好位を取りに行き、道中は先団のやや外めを追走。逃げたバトルボーン(4着)や2番手のテーオーソラネル(10着)に並びかける形で4コーナーを通過しています。ゴール前の直線でも内ラチからやや離れたところを進むことになりましたが、残り100mくらいの地点で危なげなくバトルボーンを捕らえ、差してきたククナ(2着)やホウオウエミーズ(3着)に対してもセーフティリードを保ったまま入線。先行有利な展開ではあったものの、そんな流れを読み切っていたかのようなレース運びでしたし、鞍上のプランニングにしっかり応えたセイウンハーデスもお見事です。

M セイウンハーデスは重賞初制覇。3歳時にダービートライアルのプリンシパルSを制し、前走の新潟大賞典でも2着に健闘していた実績馬ですが、念願のタイトル獲得となりました。

伊吹 3走前におよそ半年の休養明けで3勝クラスの競馬法100周年記念を快勝した馬ですから、これくらいの活躍は想定の範囲内。まだ注目度が上がり切っていない印象もありましたし、ちょうど狙い頃のタイミングだったのかもしれません。展開が向かないと見る向きもあった分、この馬のポテンシャルを信じた方にとっては、配当的にも満足のいく決着だったのではないでしょうか。そもそも、前回の当コラムで指摘した通り、近年の七夕賞は年明け以降のレースで好成績を収めている馬が優勢。もう少し高く評価するべきだったと反省しています。

M サマー2000シリーズの第1戦を制したことで、今後はその動向に注目が集まりそうです。

伊吹 福島芝2000mの七夕賞を勝ち切ったうえ、新潟芝2000m外の重賞でも既に結果を残しているわけですから、今後のサマー2000シリーズ対象レースでコース適性がネックになることはまずなさそう。小倉記念や新潟記念を使ってきたら無理には逆らえません。楽しみなのはその先で、今回より格の高いGIやGIIのレースなら、実力を過小評価される可能性がまだあるはず。これまでのところ単勝1番人気の支持を集めたのはデビュー戦だけで、どちらかと言えば人気になりづらいタイプだと思いますから、激走のタイミングを見逃さないようしっかりマークしておきましょう。

M 今週の日曜函館メインレースは、サマー2000シリーズの第2戦となる函館記念。昨年は単勝オッズ18.8倍(7番人気)のハヤヤッコが優勝を果たしました。先週の七夕賞と同じく、波乱含みという印象の強いハンデキャップ競走ですが、単勝人気順別成績はどうなっていますか?


伊吹 七夕賞以上に荒れやすいレースですね。過去10年の単勝1番人気馬10頭中、優勝を果たしたのは2019年のマイスタイルのみ。2着となったのも2022年のマイネルウィルトスだけでした。



M 単勝2〜3番人気馬や単勝4〜6番人気馬の好走率もかなり低め。上位人気グループの馬がまったく信頼できないレースと言って良いのではないでしょうか。

伊吹 過去10年の3着以内馬30頭中18頭は単勝7番人気以下。一方、単勝6番人気以内の馬は2013年以降[8-1-3-48]で、3着内率が20.0%しかありません。伏兵の激走を警戒するだけでなく、上位人気馬が総崩れとなる可能性も考慮したうえで予想や買い目作りに臨むべきでしょう。

M そんな函館記念でAiエスケープが指名した特別登録時点の注目馬は、ヤマニンサルバムです。

伊吹 絶妙なところを挙げてきましたね。狙っている方も決して少なくはないと思うのですが、単勝6番人気以内の支持を集める可能性は低そう。

M ヤマニンサルバムは4歳馬。まだオープンクラスのレースでは連対を果たせていないものの、4走前の白富士Sで3着に食い込んでいますし、前走のエプソムCでも勝ったジャスティンカフェと0.4秒差の6着に健闘しています。ハンデキャップ競走ということもあって、伸びしろがありそうな点に魅力を感じている方は意外と多いのではないでしょうか。

伊吹 Aiエスケープも同様の理由で高く評価しているのかもしれませんね。私は好走馬の傾向とこの馬の戦績を見比べていきますので、こちらも参考にしていただければと思います。

M 真っ先に注目しておくべきポイントはどのあたりですか?

伊吹 年明け以降の戦績でしょうね。過去10年の3着以内馬30頭中25頭は“同年の、JRAの、出走頭数が14頭以上の、重賞のレース”において7着以内となった経験がある馬でした。



M はっきりと明暗が分かれていますね。

伊吹 さほど高いハードルではないように思えるかもしれませんが、今年もこの条件をクリアしている馬は意外と少ないので、しっかりチェックしておきたいところです。

M ヤマニンサルバムは16頭立てだった2走前の新潟大賞典、17頭立てだった前走のエプソムCでいずれも7着以内を確保。実績上位の一頭と見て良いのかもしれません。

伊吹 さらに、同じく過去10年の3着以内馬30頭中26頭は“前年以降の、JRAの、2500m未満の、GI・GIIのレース”において11着以内となった経験がある馬。条件戦やオープン特別、GIIIのレースばかり使ってきた馬は期待を裏切りがちでした。



M 今回より格の高いレースを使ってこなかった馬は過信禁物、と。

伊吹 単勝オッズ77.3倍(15番人気)の低評価を覆した2020年1着のアドマイヤジャスタも、2019年の皐月賞で8着に、2018年末のホープフルSで2着に食い込んだ実績があった馬。大舞台でそれなりに健闘したことのある馬は、たとえ近走成績がいまひとつであってもマークしておくべきでしょう。

M ヤマニンサルバムは3走前の金鯱賞で7着に健闘。こちらの条件も問題なくクリアしています。

伊吹 あとは前走の出走頭数にも注目しておいた方が良さそう。13頭立て以下のレースを経由してきた馬は強調できません。



M なるほど。前走が多頭数のレースだった馬を重視したいところですね。

伊吹 おそらく今年も“フルゲート”の16頭立てになるでしょうし、少頭数の流れに慣れてしまった馬を過大評価しないよう心掛けましょう。

M ヤマニンサルバムは前走の出走頭数が17頭。レースの傾向からも狙い目であることがわかりました。

伊吹 不安要素が見当たらない馬は他にもいますし、最終的な位置付けは枠順やオッズを加味したうえで判断するつもりですが、おそらくそれなりのシルシを打つことになると思います。私とは異なる切り口で予想しているAiエスケープも有力と見ているのであれば心強い限り。強調材料の少ない実績馬が注目を集めて、この馬に手頃なオッズがつくよう祈りたいところです。

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競馬評論家。JRAの公式ホームページ内「今週の注目レース」にて“データ分析”のコーナーを、TCK(東京シティ競馬)の公式ホームページ内「分析レポート」にて重賞競走のデータ分析を担当しているほか、グリーンチャンネル、JRAのレーシングプログラム、『週刊アサヒ芸能』、『競馬王』などさまざまなメディアを舞台に活動している。主な著作に『WIN5攻略全書 回収率150%超!“ミスターWIN5”のマインドセット』、『コース別 本当に儲かる騎手大全』シリーズ、『コース別 本当に儲かる血統大全』シリーズ、『ウルトラ回収率』シリーズ(いずれもガイドワークス)など。

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