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みなさんに夢を届けられるように…パリパラリンピックに向けて挑戦!

  • 2023年08月01日(火) 12時00分
日々是好日

>▲成田空港にて


2023年のパリパラリンピックに向けて、ドイツへ出発した常石さん。パラリンピックにこだわり、挑戦を続けている常石さんが目指すいちばんの夢とは?

 夏競馬真っ盛り! パドックにはミストがあり、周回する馬たちは、ほんの少し涼を感じられるのかな? レースで懸命に走る馬たちを見ていると、お疲れ様、頑張ったねと声をかけたくなります。

 先週行われた中京記念(GIII・芝1600m)は松山弘平騎手の手綱でセルバーグ号が会心の逃げ切り勝利。陣営の皆様おめでとうございます。ファンのみなさんも高配当にアツくなったことでしょう。

 アツいといえば、今年のセレクトセールも初日から凄い盛り上がりでしたね。キタサンブラック産駒の人気はお祭りムード。初年度産駒のイクイノックスの活躍は素晴らしかったですからね。福永祐一厩舎への預託などの話題も出てきて、福永厩舎の開業がますます楽しみになってきました。

 ぼくには、楽しみがもうひとつあります。パリ五輪開幕まで7/26でちょうど1年になりました。

 パリパラリンピックに向けて挑戦です。7/25から8/15までドイツを拠点にオランダ、デンマーク大会に出場予定です。パラリンピック出場の権利をとるためには、海外での大会に3回以上出場することが条件。もちろんポイント65%以上が必須です。

 与えられたチャンスを逃すわけにはいかない。そんな固い決意で挑みます。僕がパラリンピックにこだわるのは、日本では競馬の普及は目覚ましく発展してきましたが、乗馬文化がまだまだ普及されていないからです。

日々是好日

▲新幹線で東京に向かう常石さん


 障がいを持った人が、馬に乗ることや触れ合うことで、精神面、身体面ともにリハビリテーション効果が高いといわれています。乗馬療育や馬に乗ることで、馬の揺れを感じ、馬のリズムや背中から感じる温かさにより、筋肉の緊張をほぐすだけでなく、精神を安定させる効果もあるといいますが、障がい者乗馬をされる方が少なく、一般化されていない。乗馬ができる環境が少ないこともあると思います。

 僕も、滋賀県から兵庫県の明石乗馬協会まで片道約3時間かけて通っています。明石乗馬協会は、乗馬療育に力を入れていて、障がい者支援施設にもなっています。

 馬の持つ魅力を一人でも多くの人に知ってもらいたい。馬は人間を乗せることができ、運ぶこともできる。昔から人と共に生き、生活を支えるパートナーとして大切な存在です。

 競走馬として育った馬も、引退したり、競走馬になれなかった馬も沢山います。そんな馬たちの余生の活躍の場を作ろうと、角居勝彦元調教師や福永祐一調教師、和田竜二騎手などが活動し、引退競走馬が第二の馬生を過ごせるようにいろいろ努力されています。

 僕が現役の時代は、「馬の後ろには絶対に行くな。蹴ることがある」と教えられていましたが、馬は人とのコミュニケーションをしっかり取ることで、セラピー乗馬としても活躍できます。年配の方や幼い子供たち、また障がいを持っている方たちにも寄り添ってくれて、人間の体と心を癒すパワーをもっていると思います。

 僕も落馬し1か月間意識不明の重体でしたが、馬に跨ると馬が僕を癒しの世界へ連れて行ってくれました。自然と笑顔になるんですね。リハビリ乗馬で生きるエネルギーとパワーをもらいました。

 障がいを持ったからこそパラリンピックを目指すことができる。また馬とともに挑戦することができ、海外の大会での経験を無駄にしないように頑張りたいと思います。

 みなさんに夢を届けられるように愛馬と頑張ります。

 僕が目指すいちばんの夢、馬の本当の魅力を皆さんにわかってもらいたいと思い、障がい者になっても馬に乗り続けています。

 パラリンピックへ行くぞー!

日々是好日

▲フランクフルトのホテル


オカン 東京パラリンピックを目指していましたが2019年に交通事故に遭い、麻痺のある左足親指を骨折。9本のワイヤーが入り1か月の入院。グレードの変更にともない乗馬の経路が変更になるので覚え直しという大きな課題に突入。馬に乗ることよりも記憶障害のある息子にとっては大変な出来事でした。得意とする駆歩もなくなり、常歩が多くなる。

 左全体に麻痺があるので左足で鐙が踏めず、騎座の安定が難しい。パラリンピックへの挑戦はもう無理だよと説得するが、やりきっていないからここで諦めるわけにはいかないという。

「オカン、どうしてパラリンピックへ行きたいというかわかるか? 僕が障がい者になったからパラリンピックへ行けるんやで、このチャンスを逃すのはもったいない。命丸儲けと一緒やで」

「馬の温かい感触は、気持ちがええねん、目とか見ていたら心が大きくなるからこの気持ちをみんなに言いたい。わかってもらいたいから、乗馬の楽しさを伝えたいからパラリンピックへ行きたい。競馬もいいけど乗馬もたのしいでーと知ってもらいたい」

 長々と私を説得する息子。でも莫大な費用がかかることを分かっていますか?

「うん。だから最後のチャンスをください。海外でしか権利をとれないから頑張ってくるよ」

 パラリンピックへ行きたいというのは、自分のためだけではなく、馬の持つ最大の魅力を多くの人に知らせたいからだという。

 そういえば、競馬学校を受験しようと決めたとき、初めて乗馬体験し、いつも背が低くて見えなかった景色が大きく広がり気持ちいいわ。背が高いっていいなーと感じていました。

 アニマルセラピーはいろいろありますが、人が乗ったり物を運んでくれるのは馬だけだね。馬の魅力をたっぷり聞かされ、しぶしぶオカンの老後費を使うことに。機嫌よく手を振って一人で成田空港へ向かう(怪我をしないようにと藤森神社で頂いたお守りをそっとジャケットの胸ポケットに忍ばせる)。

 オカンが車に乗れなくなったら馬に乗せてね(笑)。

 息子を応援し支援していただける方を募集しています。よろしくお願いします。

 つねかつこと常石勝義&オカン

(次回の更新は9/1(金)を予定しています)

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1977年8月2日生まれ、大阪府出身。96年3月にJRAで騎手デビュー。「花の12期生」福永祐一、和田竜二らが同期。同月10日タニノレセプションで初勝利を挙げ、デビュー5か月で12勝をマーク。しかし同年8月の落馬事故で意識不明に。その後奇跡的な回復で復帰し、03年には中山GJでGI制覇(ビッグテースト)。 04年8月28日の豊国JS(小倉)で再び落馬。復帰を目指してリハビリを行っていたが、07年2月28日付で引退。現在は栗東トレセンを中心に取材活動を行っている。

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