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【新潟2歳S AI予想】見解が分かれる一頭! AIの推す伏兵はレースの傾向を覆すことができるか

  • 2023年08月21日(月) 18時00分

札幌記念を制したプログノーシス(撮影:山中博喜)


netkeibaにある膨大な競走成績を人工知能によって機械学習するAiエスケープを開発したAIマスター・Mと、レースデータの分析を専門とする競馬評論家・伊吹雅也による今週末のメインレース展望。コンピュータの“脳”が導き出した注目馬の期待度を、人間の“脳”がさまざまな角度からチェックする。
(文・構成=伊吹雅也)


上位人気グループの馬が優秀な好走率をマークしている


AIマスターM(以下、M) 先週は札幌記念が行われ、単勝オッズ5.1倍(2番人気)のプログノーシスが優勝を果たしました。

伊吹 お見事と言うほかありませんね。決して悪いスタートではなかったものの、無理に行かせることなくポジションを下げ、1コーナーを13番手で、2コーナーを11番手で通過。しかし、向正面でインコースから少しずつポジションを押し上げ、3コーナーでは先団のすぐ後ろ、先行したジャックドール(6着)の内につけています。

 ここからさらに失速した先行各馬をかわし、4コーナーでは単独2番手まで浮上。一足先に抜け出したトップナイフ(2着)をゴール前の直線半ばで悠々とかわし、最後は4馬身突き放しました。

 馬場や展開の影響もあったと思いますが、それを差し引いても高く評価できる圧巻のパフォーマンス。完勝と言って良いでしょう。

M プログノーシスは2走前の金鯱賞に続く自身2度目の重賞制覇。前走のクイーンエリザベス2世C(2着)も日本調教馬の中では最先着でしたし、完全に本格化したと見て良さそうですね。

伊吹 私は今回の札幌記念で最終的に◎を打ったものの、そうした理由はいかにもこのレースが合っていそうなタイプだからであり、正直なところここまで強くなっているとは思っていませんでした。既に5歳ですが、間隔をあけながら使われてきたこともあって、札幌記念が通算10戦目。半姉のVordaがチェヴァリーパークS(英G1)を制すなど、もともと血統的なポテンシャルも高い馬ですから、まだまだ伸びしろはあると思います。

M この後は一旦放牧に出て、今秋のビッグレースを目指すようです。

伊吹 今回と同じ距離の大舞台、例えば天皇賞(秋)や年末の香港Cを使ってきたら、かなりの人気を集めることになるでしょうね。ただ、2勝目をマークしたデビュー3戦目は中京芝1600mのレースでしたし、2000m前後の距離しかこなせないということはないはず。陣営のレース選択を含め、今後が楽しみで仕方ありません。

M 今週の日曜新潟メインレースは、夏季競馬の2歳チャンピオン決定戦と位置付けられているレースのひとつ、新潟2歳S。昨年は単勝オッズ8.1倍(4番人気)のキタウイングが優勝を果たしました。少頭数になりがちな一方で、難解なイメージもある一戦ですが、単勝人気順別成績はどうなっていますか?


伊吹 過去10年の3着以内馬30頭中、実に20頭は単勝3番人気以内の支持を集めていた馬。そもそもここ5年連続で3連単の配当が2万円を切っていますし、堅く収まりがちなレースと見ておいた方が良さそうです。


M 単勝7番人気以下の伏兵はほとんど上位に食い込めていません。

伊吹 より実態に即した区切り方をすると、単勝3番人気以内の馬は2013年以降[9-6-5-10](3着内率66.7%)、単勝4〜8番人気の馬は2013年以降[1-3-5-41](3着内率18.0%)、単勝9番人気以下の馬は2013年以降[0-1-0-64](3着内率1.5%)となっていました。魅力ある人気薄が見つかったら積極的に狙っても良いと思いますが、そうでない場合は上位人気グループの馬を中心に買い目を組み立てるべきでしょう。

M そんな新潟2歳SでAiエスケープが指名した特別登録時点の注目馬は、シリウスコルトです。

伊吹 面白いところを挙げてきましたね。オッズを読みづらいメンバー構成ではあるものの、下位人気グループの一角にとどまる可能性もありそう。

M シリウスコルトは福島芝1200mで施行された新馬を勝ち上がってきた馬。単勝オッズ27.0倍(10番人気)と前評判は高くなかったものの、4コーナー8番手のポジションから差し切り勝ちを果たしています。今回はコース替わりを不安視されそうですが、相手は自身と同じく前走が新馬や未勝利だった馬ばかり。実績は大差ありません。

伊吹 シリウスコルトが勝ったデビュー戦で3着に食い込んだカレンナオトメは、格上挑戦となった2走目の函館2歳Sで5着に健闘しました。Aiエスケープが高く評価しているくらいですし、前走のレースレベルが極端に低かったということはないはず。チャンスは十分にあると認識したうえで、レースの傾向とこの馬のプロフィールを見比べていきましょう。

M 最大のポイントはどのあたりですか?

伊吹 2019年以降の3着以内馬12頭中10頭は、前走の着順が1着、かつ前走の2位入線馬とのタイム差が0.2秒以上。直近のレースを完勝した馬に注目するべき一戦と言えます。


M 前走で2着以下に敗れてしまった馬はもちろん、前走が辛勝だった馬も強調できませんね。

伊吹 さらに付け加えておくと、前走のコースがJRA、かつ前走の上がり3ハロンタイム順位が3位以下だった馬は、2019年以降[0-0-0-12](3着内率0.0%)、2011年以降[0-0-0-51](3着内率0.0%)。該当馬は2018年以前を含めても苦戦していましたから、思い切って評価を下げるべきでしょう。

M シリウスコルトは前走の2位入線馬とのタイム差が0.2秒でしたし、前走の上がり3ハロンタイム順位も単独1位。直近のパフォーマンスに関しては高く評価して良さそうです。

伊吹 ただ、前走が1200mのレースだった点は少々気掛かり。同じく2019年以降の3着以内馬12頭中9頭は、前走の距離が今回と同じ距離でした。


M 前走が1600m以外のレースだった馬は勝ち切れていません。

伊吹 ちなみに、前走の距離が今回と異なる距離だったにもかかわらず3着以内となった3頭のうち2頭は、性が牡・セン、かつ前走のコースが左回りだった馬。もともと牝馬や右回りのレースを経由してきた馬があまり信頼できないレースでもありますし、これらの条件に引っ掛かっている馬は過信禁物と見るべきでしょう。

M 残念ながらシリウスコルトは前走のコースが右回り。距離だけでなく、左回りへの対応も課題のひとつと言えそうです。

伊吹 もうひとつ不安要素を挙げておくと、2019年以降の3着以内馬12頭中11頭は前走の馬体重が450kg以上。馬格のない馬は期待を裏切りがちでした。


M はっきりと明暗が分かれていますね。

伊吹 この期間中に限ると、前走の馬体重が450kg未満だったにもかかわらず3着以内となったのは、2022年1着のキタウイングのみ。その昨年はこの条件をクリアしている馬が比較的少なかったので、例外と見るべきでしょう。

M シリウスコルトは前走の馬体重が448kg。ギリギリではありますが、馬格がない側の一頭です。

伊吹 Aiエスケープは有力と見ているわけですし、人気の中心ということはまずないでしょうから、無理に評価を下げる必要はないはず。それでも、今回挙げた条件を綺麗にクリアしているライバルが何頭かいる以上、私は重いシルシを打つことができません。この馬自身のオッズはもちろん、私が中心視する馬のオッズも踏まえたうえで、最終的な位置付けを検討したいと思います。

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競馬評論家。JRAの公式ホームページ内「今週の注目レース」にて“データ分析”のコーナーを、TCK(東京シティ競馬)の公式ホームページ内「分析レポート」にて重賞競走のデータ分析を担当しているほか、グリーンチャンネル、JRAのレーシングプログラム、『週刊アサヒ芸能』、『競馬王』などさまざまなメディアを舞台に活動している。主な著作に『WIN5攻略全書 回収率150%超!“ミスターWIN5”のマインドセット』、『コース別 本当に儲かる騎手大全』シリーズ、『コース別 本当に儲かる血統大全』シリーズ、『ウルトラ回収率』シリーズ(いずれもガイドワークス)など。

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