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【オールカマー予想】レースの傾向からも侮れない!? AIは超人気薄の伏兵を注目馬に指名

  • 2023年09月19日(火) 18時00分

単勝オッズ23.2倍(7番人気)のマスクトディーヴァがローズSを制覇(C)netkeiba.com


netkeibaにある膨大な競走成績を人工知能によって機械学習するAiエスケープを開発したAIマスター・Mと、レースデータの分析を専門とする競馬評論家・伊吹雅也による今週末のメインレース展望。コンピュータの“脳”が導き出した注目馬の期待度を、人間の“脳”がさまざまな角度からチェックする。
(文・構成=伊吹雅也)

上位人気グループの好走率はそれなりに高い


AIマスターM(以下、M) 先週はローズSが行われ、単勝オッズ23.2倍(7番人気)のマスクトディーヴァが優勝を果たしました。

伊吹 道中は中団の外めを追走。先行争いには参加しませんでしたが、先行勢に離され過ぎない絶妙なポジションでレースを進め、4コーナーを7番手で通過しています。そこからゴール前の直線半ばで先頭に並びかけ、残り200m地点のあたりで独走態勢となり、最後の最後で差を詰めてきた後方待機組のブレイディヴェーグ(2着)らに対してもセーフティリードを保ったまま入線。陣営はもちろん、鞍上の岩田望来騎手にとっても会心の勝利だったのではないでしょうか。勝ち時計の1分43秒0は日本レコード。馬場や展開の影響もあったとはいえ、相応に高く評価して良さそうです。

M マスクトディーヴァはこのレースが通算4戦目。今回と同じ阪神芝1800m外のレースで1勝クラスを勝ち上がったものの、それほど支持が集まりませんでした。休養明けである点や、2走前の忘れな草賞で7着に敗れていた点が嫌われたのかもしれません。

伊吹 2勝クラス以上のレースで上位に食い込んだことがある馬も結構いましたし、事前の人気としては妥当なところだったのではないでしょうか。ただ、これだけのパフォーマンスを見た後だと、過小評価だったような気がしてしまいますね。レースの傾向からも少々狙いづらい馬だっただけに、時間をかけて復習――というか、反省しておきたいところです。

M 勝ったマスクトディーヴァに加え、ブレイディヴェーグとマラキナイア(3着)も秋華賞への優先出走権を獲得しました。

伊吹 3頭とも阪神芝1800m外が合いそうなタイプではありましたから、京都芝2000m内への対応が共通の課題になるのではないかと思います。もっとも、現3歳世代の各馬が出走可能だった京都開催は、今春の1回京都のみ。現時点で「京都芝2000m内が得意」とはっきりしている馬はほとんどいません。モリアーナをはじめとする紫苑S組、コナコースト・シンリョクカ・ドゥーラ・ハーパー・リバティアイランドほか既成勢力との能力比較も簡単ではありませんし、さまざまな思惑が交錯する一戦となりそう。どんなオッズが形成されるのかを含め、約1か月後の“本番”が非常に楽しみです。

M 今週の日曜中山メインレースは、下半期のビッグレースを見据えた古馬中長距離戦線の精鋭が集結する一戦、オールカマー。昨年は単勝オッズ19.5倍(5番人気)のジェラルディーナが優勝を果たしました。なお、その2022年は2着に単勝オッズ23.9倍(6番人気)のロバートソンキーが、3着に単勝オッズ33.2倍(7番人気)のウインキートスが食い込み、単勝オッズ10倍未満の支持を集めた4頭はいずれも5着以下に敗退。極端な高額配当が飛び出しやすいという印象はないものの、上位人気馬が総崩れとなるような決着もイメージしておくべきなのでしょうか。


伊吹 過去10年の3着以内馬30頭中、過半数の17頭は単勝3番人気以内の支持を集めていた馬。上位人気グループが期待を裏切りがちというわけではありません。



M 一方、単勝7番人気以下で馬券に絡んだ馬は5頭だけ。出走頭数の影響もあるとはいえ、超人気薄の馬が波乱を演出した例は少ないですね。

伊吹 より実態に即した区切り方をすると、単勝4〜7番人気の馬は2013年以降[4-3-4-29](3着内率27.5%)、単勝8〜12番人気の馬は2013年以降[1-0-1-43](3着内率4.4%)、単勝13番人気以下の馬は2013年以降[0-0-0-23](3着内率0.0%)となっていました。単勝1番人気馬がここ4年連続で4着以下に敗れていることからもわかる通り、堅く収まりがちということは決してないのですが、片っ端から伏兵を押さえるような買い方も避けたいところ。手を広げ過ぎてしまわないよう心掛けた方が良いと思います。

M そんなオールカマーでAiエスケープが指名した特別登録時点の注目馬は、ハヤヤッコです。

伊吹 意外なところを挙げてきましたね。おそらく、今の時点で積極的に狙おうと考えている方はほとんどいないはず。

M ハヤヤッコは3歳時にレパードSを、6歳時に函館記念を勝っている7歳馬。前走の函館記念は5着どまりでしたが、勝ち馬とのタイム差がわずか0.4秒だったうえ、58.5kgの負担重量を課されていましたから、健闘と言って良いのではないでしょうか。ただし、GI・GIIのレースはこれまでのところ7戦して4着が最高。今回のメンバー構成では苦戦必至と見ている方が多いかもしれません。

伊吹 おそらく単勝二桁人気クラスでしょうし、そんな立場でもAiエスケープが有力と見ているのならば、押さえておくに越したことはなさそう。あとは連軸としての信頼度がどれくらいあるかですね。私はレースの傾向から、この馬の好走確率を見積もっていきたいと思います。

M 最大のポイントはどのあたりでしょうか?

伊吹 基本的に前走好走馬が強いレースである点は押さえておきたいところ。前走の着順が8着以下だった馬はあまり上位に食い込めていません。



M 大敗直後の馬は過信禁物ですね。

伊吹 ちなみに、前走の着順が8着以下・競走中止、かつ性が牡・センの馬は2017年以降[0-0-0-27](3着内率0.0%)でした。このレースと相性が良い牝馬でない限り、前走で大きく崩れてしまった馬は疑ってかかるべきだと思います。

M 先程も触れた通り、ハヤヤッコは前走の着順が5着。直近のレースでそれなりに善戦した点は高く評価して良いのではないでしょうか。

伊吹 あとはこれまでの実績も素直に評価したいところ。同じく2017年以降の3着以内馬18頭中17頭は“前年以降の、JRAの、中山以外の、GI・GIIのレース”において7着以内となった経験があった馬です。



M 格の高いレースで健闘したことのある馬が優勢――ということなのでしょうけど、「中山以外」の一言がちょっと気になりますね。

伊吹 2022年7着のヴェルトライゼンデ、2022年13着のソーヴァリアントがそうだったように、「前年以降のGI・GIIで7着以内となったことがある」「ただし、該当するレースの舞台がいずれも中山だった」という馬は苦戦していました。コース適性の高い馬ではなく、他場のGI・GIIでも善戦できるような、単純に能力が高い馬を狙いましょう。

M なるほど。ハヤヤッコは2023年の金鯱賞で4着に、2023年の日経新春杯で6着に食い込んでいますから、実績上位の一頭と見て良さそうです。

伊吹 ただ、GI級のビッグレースをほとんど使ったことがない点は少々気掛かり。同じく2017年以降の傾向を見る限りだと、JRAのGIで7着以内となったことがない馬は強調できません。



M はっきりと明暗が分かれていますね。

伊吹 ハヤヤッコが出走したGI競走は2022年の天皇賞(春)だけで、この時は勝ったタイトルホルダーから4.9秒差の15着に敗退。さすがに割り引きが必要です。

M 強調材料はあるが、不安要素もないわけではない――といったところでしょうか。

伊吹 今回はより狙いやすい実績馬が何頭かいるので、正直なところ私は「シルシを回すとしても押さえまで」くらいに考えていました。もっとも、Aiエスケープの推奨馬であり、なおかつ頑張って消すメリットがないくらいの人気薄ですから、最終的なオッズも踏まえたうえで、もう一度じっくり検討したいと思います。

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競馬評論家。JRAの公式ホームページ内「今週の注目レース」にて“データ分析”のコーナーを、TCK(東京シティ競馬)の公式ホームページ内「分析レポート」にて重賞競走のデータ分析を担当しているほか、グリーンチャンネル、JRAのレーシングプログラム、『週刊アサヒ芸能』、『競馬王』などさまざまなメディアを舞台に活動している。主な著作に『WIN5攻略全書 回収率150%超!“ミスターWIN5”のマインドセット』、『コース別 本当に儲かる騎手大全』シリーズ、『コース別 本当に儲かる血統大全』シリーズ、『ウルトラ回収率』シリーズ(いずれもガイドワークス)など。

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