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【秋華賞 AI予想】先週に引き続き見解が一致! AIの注目馬は大きな不安要素が見当たらない

  • 2023年10月10日(火) 18時00分

単勝オッズ17.5倍(4番人気)で毎日王冠を制したエルトンバローズ(撮影:下野雄規)


netkeibaにある膨大な競走成績を人工知能によって機械学習するAiエスケープを開発したAIマスター・Mと、レースデータの分析を専門とする競馬評論家・伊吹雅也による今週末のメインレース展望。コンピュータの“脳”が導き出した注目馬の期待度を、人間の“脳”がさまざまな角度からチェックする。
(文・構成=伊吹雅也)

上位人気グループの馬が優秀な成績を収めている


AIマスターM(以下、M) 先週は毎日王冠が行われ、単勝オッズ17.5倍(4番人気)のエルトンバローズが優勝を果たしました。

伊吹 エルトンバローズを中心に据えた馬券で勝負していた方はもちろん、陣営や鞍上の西村淳也騎手にとっても会心のレースだったのではないでしょうか。

 この相手や枠順でどう動いてくるだろうと思いながら観ていたのですが、五分のスタートから冷静にポジションを探り、2コーナーまでに内ラチ沿いを確保。先行した各馬のすぐ後ろでスムーズにレースを進め、最内をキープしたまま4コーナーを通過しています。ゴール前の直線半ばまではウインカーネリアン(5着)とバビット(10着)に進路を阻まれる形となったものの、残り400m地点を過ぎたあたりで両馬の馬体が離れると、鞍上のゴーサインに鋭く反応。

 逃げ粘るウインカーネリアンをあっさりとかわし去り、その後も決勝線までしっかり伸びて、最後の最後に急襲してきたシュネルマイスター(3着)・ソングライン(2着)らを封じ切りました。人馬ともに最高のパフォーマンスを見せて最良の結果を掴み取った、素晴らしい勝利です。

M エルトンバローズはこれで4連勝。今年4月中旬にようやく未勝利を勝ち上がったばかりの馬が、前走のラジオNIKKEI賞で重賞初制覇を果たし、古馬相手のここも見事に突破したわけで、驚異的なスピード出世と言うほかありません。

伊吹 1986年以降にJRA、かつ古馬相手(=3歳以上)、かつ10月以前のGI・GIIを勝った3歳馬36頭のうち、自身の初勝利が3歳時の4月以降だったのは、1991年のスワンSを勝ったケイエスミラクル、1995年のスワンSを勝ったヒシアケボノ、1997年のスワンSを勝ったタイキシャトルだけでした。

 四半世紀前の短距離路線でしかお目にかかれなかったような記録を、令和の時代に中距離路線で達成した点は高く評価して良いでしょう。ちなみに、ヒシアケボノとタイキシャトルは後のGIウイナーですし、ケイエスミラクルも次走のマイルCSで3着に健闘しています。

M そうなると、エルトンバローズも今後が楽しみですね。

伊吹 ここ2戦はいずれも1800mのレースでしたから、ビッグレースを狙うにあたっては、今回と異なる距離への対応も課題のひとつになりそう。

 ただ、1600mのレースもこれまでのところ2戦2勝なので、距離がやや短くなる分にはまったく問題ありません。もちろん、本格化した今なら2000m以上の距離を難なくこなす可能性もそれなりにあるはず。この馬の持ち味である先行力の高さが活きそうなメンバー構成なら、強敵相手のレースでもしっかりマークしておきましょう。

M 今週の日曜京都メインレースは、3歳牝馬三冠競走の最終関門、秋華賞。昨年は単勝オッズ5.7倍(3番人気)のスタニングローズが優勝を果たしました。

 ちなみに、その2022年は単勝オッズ3.3倍(2番人気)のナミュールが2着、単勝オッズ3.0倍(1番人気)のスターズオンアースが3着に食い込んだこともあって、3連単の配当が6900円どまり。近年はどちらかというと堅く収まりがちな印象ですが、単勝人気順別成績はどうなっていますか?


伊吹 過去10年の連対馬20頭中、単勝7番人気以下だったのは2020年2着のマジックキャッスルだけ。人気薄の馬が優勝争いに絡んでくる可能性は低いと見て良さそうです。


M 単勝1番人気馬の成績は微妙なところですが、その分だけ伏兵の台頭が目立っているかと言うと、決してそんなことはありません。

伊吹 より実態に即した区切り方をすると、単勝2〜5番人気の馬は2013年以降[7-8-4-21](3着内率47.5%)、単勝6〜10番人気の馬は2013年以降[0-1-4-45](3着内率10.0%)、単勝11番人気以下の馬は2013年以降[0-0-1-72](3着内率1.4%)となっていました。

 単勝6番人気以下だったにもかかわらず3着以内となった馬が6頭いるわけですし、あえて人気薄の馬から入ってみるのもひとつの手ですが、その場合も上位人気グループの各馬を安易に軽視してしまわないよう心掛けるべきでしょう。

M そんな秋華賞でAiエスケープが指名した特別登録時点の注目馬は、リバティアイランドです。

伊吹 いや〜、そう来ましたか。話の流れを考えれば妥当なところではありますけど、それにしてもまさかこの馬を指名してくるとは……。

M 皆さんもご存じの通り、リバティアイランドは昨年の阪神JFと今年の桜花賞ならびにオークスを制している馬。この路線の絶対的なチャンピオンホースと言える存在で、今回は3歳牝馬三冠制覇の偉業に挑みます。当然ながら、断然の人気を集めることになるでしょう。

伊吹 どちらかと言えば穴党であるAiエスケープがこの馬を推しているということは、妙味ある伏兵が見当たらなかったということ。中途半端に注目が集まっている伏兵を狙うくらいなら、堅い決着になる前提で買い目を組んだ方が良い――ということなのかもしれません。Aiエスケープの見立てを踏まえたうえで、私は秋華賞の傾向から、リバティアイランドの信頼度を測ってみたいと思います。

M 最大のポイントはどのあたりでしょうか?

伊吹 個人的に重視したいと思っているのは枠順。阪神芝2000m内で施行された2021〜2022年を含め、2017年以降は内外極端な枠に入った馬が苦戦していました。


M 施行コースが京都芝2000m内に戻る今後も、同じような傾向が続きそうですね。

伊吹 京都芝2000m内も阪神芝2000m内も、右回りでゴール前の直線が比較的短いコース。似たところがあるのは当然で、今年もまずは好枠を引いた馬に注目するべきだと思います。

 ただし、馬番が1〜6番・15〜18番だった馬のうち、“同年の、JRAの、重賞のレース”において“着順が1着、かつ4コーナー通過順が4番手以下”となった経験のある馬は2017年以降[1-0-2-7](3着内率30.0%)。基本的に差し有利なレースですから、実績ある差し馬なら内外極端な枠でも無理に嫌う必要はありません。

M なるほど。リバティアイランドは桜花賞やオークスでこの条件をクリアしていますし、枠順不問と見て良いのではないでしょうか。

伊吹 あとは直近のパフォーマンスも素直に評価したいところ。同じく2017年以降の3着以内馬18頭中17頭は、前走の着順が4着以内でした。


M 大敗直後の馬は割り引きが必要ですね。

伊吹 おっしゃる通り。たとえ実績上位であっても、前哨戦で上位に食い込めなかった馬は強調できません。

M 他に注目しておくべきファクターは何かありますか?

伊吹 近年の秋華賞は、オークスの上位馬が圧倒的に優勢。オークスにおいて5着以内となった経験がある馬は、2017年以降の3着内率が60.0%に達していました。


M 2022年はオークスの1〜3着馬がそのまま秋華賞でも1〜3着を占める結果に。この傾向が強まりつつある可能性すらありそうです。

伊吹 ちなみに、オークスにおいて5着以内となった経験がない、かつ“同年8月以降の、JRAの、1700m超の、2勝クラス以上のレース”において1着となった経験がない馬は2017年以降[0-0-1-65](3着内率1.5%)。あえて別路線組を狙うならば、今年8月以降のレースを勝ち切っている馬に注目しましょう。

M いずれにしろ、前走のオークスを圧勝しているリバティアイランドは、レースの傾向からも強調できる一頭ということになります。先週は、Aiエスケープの注目馬であり、なおかつ伊吹さんの挙げた条件もクリアしていたソングラインがしっかり2着を確保。今週も素直に信頼して良さそうですね。

伊吹 枠順次第では別の馬に◎を打つ可能性もありますが、正直なところ私もリバティアイランドに逆らうつもりはありません。少なくとも、WIN5は一頭勝負を本線に検討するべきでしょうね。通常の式別も、相手を絞り込む方向でなんとか利益を捻り出したいと思います。

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競馬評論家。JRAの公式ホームページ内「今週の注目レース」にて“データ分析”のコーナーを、TCK(東京シティ競馬)の公式ホームページ内「分析レポート」にて重賞競走のデータ分析を担当しているほか、グリーンチャンネル、JRAのレーシングプログラム、『週刊アサヒ芸能』、『競馬王』などさまざまなメディアを舞台に活動している。主な著作に『WIN5攻略全書 回収率150%超!“ミスターWIN5”のマインドセット』、『コース別 本当に儲かる騎手大全』シリーズ、『コース別 本当に儲かる血統大全』シリーズ、『ウルトラ回収率』シリーズ(いずれもガイドワークス)など。

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