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【菊花賞AI予想】人気の盲点になるようなら買い!? AIの注目馬はレースの傾向からも魅力十分

  • 2023年10月16日(月) 18時00分

単勝オッズ1.1倍(1番人気)で秋華賞を制したリバティアイランド(撮影:桂伸也)


netkeibaにある膨大な競走成績を人工知能によって機械学習するAiエスケープを開発したAIマスター・Mと、レースデータの分析を専門とする競馬評論家・伊吹雅也による今週末のメインレース展望。コンピュータの“脳”が導き出した注目馬の期待度を、人間の“脳”がさまざまな角度からチェックする。
(文・構成=伊吹雅也)

人気薄の馬が上位に食い込んだ例も少なくはないが……


AIマスターM(以下、M) 先週は秋華賞が行われ、単勝オッズ1.1倍(1番人気)のリバティアイランドが優勝を果たしました。

伊吹 最終的にはマスクトディーヴァ(2着)と1馬身差でしたが、着差以上の完勝と言って良いのではないでしょうか。五分のスタートからやや積極的に出していき、1〜2コーナーを7番手あたりのポジションで通過。向正面の半ば過ぎ、3コーナーに入る手前で先団の外めに持ち出しています。その後は4コーナーで先行勢をとらえにかかり、ゴール前の直線に入ったところで早くも先頭に。そのまま後続を突き放し、マスクトディーヴァ以外の各馬に対してはセーフティリードを保ったまま、危なげなく入線しました。

 最後は少々流し気味にも見えましたし、鞍上の川田将雅騎手は、マスクトディーヴァが迫っていることを認識したうえで「これだけの差があれば物理的に届かない」と確信していたはず。不利やアクシデントの影響を受けないよう、その原因となりかねない要素をひとつひとつ丁寧に潰していくかのような道中の挙動を含めて、非常にスマートなレース運びだったという印象です。

M リバティアイランドはこれで4連勝。阪神JF・桜花賞・オークス・秋華賞を制し、完璧な形で2〜3歳牝馬戦線を戦い抜いたわけですから、お見事というほかありませんね。

伊吹 そもそも、その4レースを皆勤したのも、現3歳世代だとリバティアイランドにキタウイング・ドゥアイズ・ドゥーラ・ラヴェルを加えた5頭だけ。強さにばかり注目してしまいがちですけど、約10か月の間に4回あった大舞台をそれぞれ万全のコンディションで迎えることができた点も、勝因のひとつと言えるでしょう。この馬が持つポテンシャルの高さをこれ以上ない形で引き出したわけですから、陣営にも大きな達成感があったのではないかと思います。

M 次走はまだ発表されていませんが、この後のレースも本当に楽しみです。

伊吹 もしイクイノックス・タイトルホルダー・ドウデュースらが出走を予定しているジャパンCを使ってくるようなら、国内の競馬ファンはもちろん、国外のホースマンからも注目が集まるような、歴史的な大一番になるはず。ただ、このクラスになると単独でも十分にレースを盛り上げることができますから、例えばエリザベス女王杯などに回ったとしても、それはそれで面白くなるのではないでしょうか。長く競馬を観ていてもそうそうお目にかかれないレベルの名牝ですし、今後も目が離せませんね。

M 今週の日曜京都メインレースは、3歳牡馬クラシックの最終戦、菊花賞。昨年は単勝オッズ4.1倍(2番人気)のアスクビクターモアが優勝を果たしました。施行条件が特殊なレースですし、波乱の決着を期待している方も少なくないと思うのですが、単勝人気順別成績はどうなっていますか?


伊吹 過去10年の3着以内馬30頭中、単勝7番人気以下だった馬は8頭。ただし、単勝7番人気以下だった馬全体の3着内率は6.7%どまりです。


M 多頭数になりがちな一戦ですし、超人気薄の伏兵をピンポイントでピックアップするのは、なかなか難しいかもしれませんね。

伊吹 より実態に即した区切り方をすると、単勝2〜7番人気の馬は2013年以降[6-7-6-41](3着内率31.7%)、単勝8〜13番人気の馬は2013年以降[0-3-2-55](3着内率8.3%)、単勝14番人気以下の馬は2013年以降[0-0-0-50](3着内率0.0%)となっていました。中位人気くらいまでの馬はそれなりに健闘している印象でしたから、ほどほどの配当を目標に妙味ある実績馬を狙うのもひとつの手でしょう。

M そんな菊花賞でAiエスケープが指名した特別登録時点の注目馬は、サヴォーナです。

伊吹 話の流れを考えると、ちょうど良い塩梅の一頭かと思います。超人気薄ということも、人気の中心ということもないでしょうし、中位人気グループの一角を占めることになりそう。

M サヴォーナは菊花賞トライアルの神戸新聞杯で2着に食い込み、優先出走権を獲得。なお、その前走は勝ったサトノグランツとアタマ差でした。2走前には福島芝2600mの信夫山特別を完勝していて、長距離適性の高さも証明済み。ただ、今年の菊花賞には皐月賞や日本ダービーの上位馬が多く集まりましたから、魅力を感じている方は意外と少ないかもしれません。

伊吹 評価が割れそうな一頭ですよね。前走の時点で単勝オッズ24.5倍(10番人気)の評価にとどまっていた分、今回もそれなりに妙味あるオッズがつくはず。Aiエスケープが有力視しているという事実を踏まえたうえで、この馬のプロフィールと好走馬の傾向を見比べていきましょう。

M 真っ先に注目しておくべきポイントはどのあたりだと思いますか?

伊吹 皐月賞以降の、格の高いレースにおける戦績です。2019年以降の3着以内馬12頭中10頭は“同年4月以降の、JRAの、GI・GIIのレース”において3着以内となった経験がある馬でした。


M なるほど。実績馬が強いレースと言ってしまって良いかもしれませんね。

伊吹 2018年以前に比べると、GIIIやオープン特別、条件クラスのレースを主戦場としてきた馬は期待を裏切りがち。皐月賞や日本ダービー、さらには日本ダービーと菊花賞の主要な前哨戦で好走した馬に注目するべきでしょう。

M 神戸新聞杯で善戦したサヴォーナにとっては心強い傾向です。

伊吹 あとは直近のパフォーマンスも素直に評価したいところ。同じく2019年以降の3着以内馬12頭中11頭は、前走の着順が3着以内でした。


M 大敗直後の馬は割り引きが必要、と。

伊吹 前走の着順が4着以下だったにもかかわらず馬券に絡んだのは、ここ4年だと2021年1着のタイトルホルダーだけ。たとえ実績上位であっても、疑ってかかるべきだと思います。

M こちらもサヴォーナにとっては歓迎できる傾向。勢いに乗っている点は高く評価して良いのではないでしょうか。

伊吹 もうひとつサヴォーナの強調材料を挙げておくと、近年の菊花賞は休養明けの馬があまり上位に食い込めていません。


M 今年は日本ダービー馬のタスティエーラらがこの条件に引っ掛かっていますから、例年以上に注目しておくべきファクターと言えそうですね。

伊吹 ただ、残念ながらサヴォーナにも不安要素はあります。出走数が9戦以上の馬は2019年以降[0-0-0-19](3着内率0.0%)と3着以内なし。勝ち上がりに時間がかかった馬や、2歳時から使い詰めの馬など、キャリアが豊富過ぎる馬は苦戦していました。

M サヴォーナはキャリア10戦。新馬と未勝利を計3回、さらには1勝クラスのレースも3回使っている馬なので、この傾向からは強調できません。

伊吹 まぁ、サヴォーナくらいの人気が予想される馬なら、このくらいは許容範囲内と考えて良いのかも。もともと私は相応のシルシを打つつもりでしたし、Aiエスケープが有力視しているのであれば、なおさら無理に嫌う必要はないと思います。実績馬に敬意を表しつつ、サヴォーナらの激走にも対応できるような買い目で臨むつもりです。

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競馬評論家。JRAの公式ホームページ内「今週の注目レース」にて“データ分析”のコーナーを、TCK(東京シティ競馬)の公式ホームページ内「分析レポート」にて重賞競走のデータ分析を担当しているほか、グリーンチャンネル、JRAのレーシングプログラム、『週刊アサヒ芸能』、『競馬王』などさまざまなメディアを舞台に活動している。主な著作に『WIN5攻略全書 回収率150%超!“ミスターWIN5”のマインドセット』、『コース別 本当に儲かる騎手大全』シリーズ、『コース別 本当に儲かる血統大全』シリーズ、『ウルトラ回収率』シリーズ(いずれもガイドワークス)など。

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