母父ディープ時代も本格到来

　サンデーサイレンスが芝重賞のリーディングサイヤーだった時代、そしてディープインパクトが芝重賞のリーディングサイヤーだった時代も、血統を活用した馬券には超単純な絞り込み方法がありました。

　それは「フレッシュで勢いのある馬」を狙うこと。サンデー直仔やディープ産駒は、重賞レース初挑戦の馬、昇級初戦の馬を狙うだけでも、好配当をたくさん仕留めることができました。とてもシンプルな手法ですが、馬券的中率も期待値も高くなる理由は30年近く前から変わりません。

　多くの馬券ファンは血統など気にせず、前走までに発揮した能力をヒントに馬券を買います。ところが、サンデーサイレンス、ディープインパクトは重賞、GI初挑戦で「勢い」がある際には、前走までに発揮していた能力を大幅に上回るパフォーマンスを発揮します。よって、前走までに発揮した能力を重視する馬券ファン＝その集約であるオッズを上回る好走率となるわけです。このメカニズムは30年以上変わりません。

　奇しくも先週は、サンデーの血を継ぐ馬たちでたくさんのGI馬を育てられた角居勝彦元調教師と「サンデーの勢い」について、お話しする機会に恵まれました。角居さんが「亀谷競馬サロン」にゲストでご来場くださったのです。その際に「サンデーサイレンス産駒が上昇するタイミングを人が上手に扱うことが重要だった」という興味深い話を聞くこともできました。改めて「初挑戦で上昇する血統」の重要性を学び、確信も得た次第です。まさに血を育むのは人です。

　そして、血統勢力図の過渡期を迎えている今。サンデーサイレンス、ディープインパクトと同様「勢い」に乗るべきキー血統が「母父ディープインパクト」です。

　今年の芝重賞は、父ディープインパクトの勝ち星を母父にディープインパクトを持つ馬が上回る時代になりました。そして、母父ディープインパクトの仔もディープ産駒同様「フレッシュで勢い」のある戦歴の馬を買うだけでも、高い期待値を示しています。

　今年、前走下級条件で1着だった母父ディープインパクトの次走での単勝回収率は139％。また、昨年は前走条件戦に出走していた母父ディープインパクトが芝重賞に出走した際の単勝回収率は227％。ベタ買いでプラス収支。複勝的中率はいずれも30％を超えています。

　GI初挑戦のフレッシュな馬も期待値が優秀。GI出走歴がある母父ディープは複勝率18％。複勝回収率49％。対して「GI初挑戦」の母父ディープは複勝的中率25％。複勝回収率は166％。的中率、期待値ともに大幅に上回っています。

　昨年のエリザベス女王杯勝ち馬ジェラルディーナも母父ディープインパクト。GI挑戦は2回目でしたが、斎藤崇厩舎に転厩して馬を作り直してからは初のGI出走。フレッシュさと勢いのある状態でした。

今年のエリザベス女王杯の母父ディープインパクトはビッグリボン、ブレイディヴェーグがGI初出走。

　さらに父ディープの隠し玉も、まだ残っています。ディープ産駒のサリエラがGI初出走。サリエラは、昨秋にGI出走も可能だったと思いますが、上昇させるタイミングをここまで待ちました。管理するのは国枝調教師。中間の調整はノーザンファーム天栄。その場長は角居さんもイベントで手腕を大変評価されていた木實谷場長。このチームだからこそ、角居さんも重視されていた「上昇のタイミング」をここまで待ったのでしょう。

　ビッグリボンは角居調教師がGI馬に導いたキセキの全妹。ブレイディヴェーグの母はGIを2勝。エリザベス女王杯でも2年連続3着のミッキークイーンと同配合の姉。サリエラの同配合の姉はエリザベス女王杯2着。有馬記念でも勝ち馬と同タイムで2着のサラキア。

　今年のエリザベス女王杯に出走する勢いのある「父か母父ディープの仔達」は、母系もGIでの上昇余地を多分に秘めています。自己最高パフォーマンスも期待できるでしょう。

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