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【ジャパンC AI予想】あとは枠順次第!? AIの挙げた伏兵は十分にチャンスがありそう

  • 2023年11月20日(月) 18時00分

マイルCSは単勝オッズ17.3倍(5番人気)のナミュールが優勝(c)netkeiba.com


netkeibaにある膨大な競走成績を人工知能によって機械学習するAiエスケープを開発したAIマスター・Mと、レースデータの分析を専門とする競馬評論家・伊吹雅也による今週末のメインレース展望。コンピュータの“脳”が導き出した注目馬の期待度を、人間の“脳”がさまざまな角度からチェックする。
(文・構成=伊吹雅也)

ここ9年の3着以内馬はいずれも単勝7番人気以内だった


AIマスターM(以下、M) 先週はマイルCSが行われ、単勝オッズ17.3倍(5番人気)のナミュールが優勝を果たしました。

伊吹 非常に見応えのあるレース展開でしたし、この相手・この流れの中で突き抜けた点は、相当に高く評価して良いのではないでしょうか。大外枠からのスタートだったこともあってか、向正面では無理に仕掛けることなく自然と位置取りを下げていき、後ろから2番目のポジションで3コーナーへ。後ろにいたシュネルマイスター(7着)が外から押し上げてきたこともあり、ほぼ最後方でゴール前の直線に入っています。

 そこから少しずつ馬場の外めに出していき、残り200m地点のあたりで前を行く馬の間をこじ開け、先に抜け出したソウルラッシュ(2着)やジャスティンカフェ(3着)を猛追。決勝線の手前でしっかり捕え切りました。騎乗予定だったR.ムーア騎手が当日の落馬負傷によって乗り替わりとなり、藤岡康太騎手が手綱を取ることになったものの、テン乗りとは思えないくらい的確な、ナミュールの持ち味を完璧に活かす素晴らしいレース運び。人馬ともにお見事というほかありません。

M ナミュールはGI初制覇。3歳時の秋華賞で2着となるなど、大舞台でもたびたび上位に食い込んできた実績馬ですが、ようやくビッグタイトルの獲得に成功しました。

伊吹 今春のヴィクトリアマイル(7着)や安田記念(16着)では結果を出せなかったものの、前哨戦の富士Sを完勝していたわけですから、人気の中心となっていてもおかしくなかったはず。しかし、実際には単勝オッズ17.3倍の5番人気どまり、単勝4番人気のエルトンバローズ(4着)にすら単勝支持率で2倍以上の差を付けられてしまったわけですから、明らかに過小評価されていたと言って良いでしょう。

 休養明け2戦目のレースで期待を裏切りがちだった点、大外枠に入ってしまった点、そして急遽の騎手変更となった点などが人気を押し下げたようで、正直なところ私もそのあたりを不安視していたのですが、先週の当コラムで紹介した好走馬の傾向からは強調できる一頭だったんですよね。ここまで人気を落とすのであればもう少し重いシルシを打つべきだったと反省しています。

M 次走以降のレース選択も気になるところですが、陣営からは香港マイルへの招待を受諾したとの発表がありました。

伊吹 まだ出否を検討している段階とのことですけど、もし出走するようならば本当に楽しみ。おそらく、コース替わりはまったく問題ないでしょう。相手関係やレース展開にもよるとはいえ、更なる大仕事をやってのけても不思議はありません。

M 今週の日曜東京メインレースは、国内外で活躍してきた現役屈指の実力馬が一堂に会する大一番、ジャパンC。昨年は単勝オッズ4.5倍(3番人気)のヴェラアズールが優勝を果たしました。ちなみに、その昨年は3連単9850円の低額配当決着。どちらかと言えば、堅く収まりがちな印象のあるレースです。


伊吹 実際、3連単の配当が10万円を超えたのは2013年(22万4580円)が最後、2万円を超えたのも2016年(3万6260円)が最後で、ここ3年は万馬券にすらなっていませんからね。単勝人気順別成績を見ても、上位人気グループの馬が相応に優秀な成績を収めています。



M なるほど。少なくとも、超人気薄の馬が馬券に絡む確率はかなり低いと思っておくべきでしょうね。

伊吹 より実態に即した区切り方をすると、単勝4〜5番人気の馬は2013年以降[3-3-1-13](3着内率35.0%)、単勝6〜7番人気の馬は2013年以降[0-2-2-16](3着内率20.0%)、単勝8番人気以下の馬は2013年以降[0-0-1-96](3着内率1.0%)でした。単勝8番人気以下だったにもかかわらず3着以内となったのは、2013年3着のトーセンジョーダンが最後。あえて人気薄の馬を狙う場合も、手を広げ過ぎてしまわないよう心掛けた方が良いと思います。

M そんなジャパンCでAiエスケープが指名した特別登録時点の注目馬は、ダノンベルーガです。

伊吹 面白いところを挙げてきましたね。人気の中心ということはなさそうですが、おそらく単勝7番人気以内のゾーンに収まるのではないでしょうか。

M ダノンベルーガは3歳時からビッグレースで善戦してきた馬。今年のドバイターフでは2着に食い込みましたし、前走の天皇賞(秋)でも3着馬プログノーシスとアタマ差の4着に健闘しています。スターホースが揃った分、今回は人気の盲点になりそうな雰囲気。絶好の狙い目かもしれません。

伊吹 手広く構えない方が良いレースですし、買うにしても切るにしても、この馬に対するスタンスをはっきりさせておきたいところですね。Aiエスケープが高く評価しているという事実を踏まえたうえで、私はレースの傾向から取捨を判断していこうと思います。

M 最大のポイントはどのあたりでしょうか?

伊吹 近年のジャパンCは、距離適性の高い馬が優勢。“前年以降の、JRAの、今回と同じ距離の、オープンクラスのレース”において1着となった経験がある馬は2017年以降[3-4-4-9](3着内率55.0%)と安定していました。一方、この経験がなかった馬のうち、“東京の、GIのレース”において3着以内となった経験もなかった馬は馬券に絡めていません。



M この舞台が合いそうな馬を素直に重視したいところですね。

伊吹 おっしゃる通り。この条件に引っ掛かっている馬は、たとえ実績上位であっても疑ってかかるべきだと思います。

M ダノンベルーガは2022年の天皇賞(秋)で3着に好走している馬。コース適性は十分に高いと見て良いのではないでしょうか。

伊吹 あとは直近のパフォーマンスも素直に評価した方が良さそう。前走の着順が4着以下だった馬は2017年以降[1-1-4-52](3着内率10.3%)なので、大敗直後の馬は基本的に強調できません。ただし、このうちノーザンファームの生産馬は悪くない成績を収めていました。



M ノーザンファーム生産馬に関しては、大きく崩れてしまった直後の馬であっても、巻き返しを警戒しておいた方が良さそうです。

伊吹 逆に言うと、ノーザンファーム生産馬でも前走好走馬でもない馬は、上位に食い込む可能性がかなり低いと見るべきでしょう。

M ダノンベルーガは前走の着順こそ4着ですが、生産者がノーザンファーム。こちらの条件もしっかりクリアしています。

伊吹 そうなると、残る問題は枠順。2017年以降のジャパンCは、内寄りの枠に入った馬の活躍が目立っていました。



M 馬番が9番から外の馬はほとんど馬券に絡めていませんね。

伊吹 人気が集中しそうなイクイノックス・リバティアイランドあたりを含め、外寄りの枠に入った馬を信頼し過ぎてしまわないよう注意しましょう。

M 好枠を引き当てることができたら、ダノンベルーガはレースの傾向からも強調できる存在ということになります。

伊吹 実際、私も◎候補の一頭と見ていました。Aiエスケープが有力視しているのであれば心強い限り。枠順やオッズ次第ではあるものの、諸々の条件が揃ったら強気に狙ってみたいです。

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競馬評論家。JRAの公式ホームページ内「今週の注目レース」にて“データ分析”のコーナーを、TCK(東京シティ競馬)の公式ホームページ内「分析レポート」にて重賞競走のデータ分析を担当しているほか、グリーンチャンネル、JRAのレーシングプログラム、『週刊アサヒ芸能』、『競馬王』などさまざまなメディアを舞台に活動している。主な著作に『WIN5攻略全書 回収率150%超!“ミスターWIN5”のマインドセット』、『コース別 本当に儲かる騎手大全』シリーズ、『コース別 本当に儲かる血統大全』シリーズ、『ウルトラ回収率』シリーズ(いずれもガイドワークス)など。

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