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【有馬記念 AI予想】あとはオッズ次第!? AIが推す伏兵の強調材料と不安要素をチェック

  • 2023年12月18日(月) 18時00分

単勝オッズ2.7倍のジャンタルマンタルが優勝(c)netkeiba.com


netkeibaにある膨大な競走成績を人工知能によって機械学習するAiエスケープを開発したAIマスター・Mと、レースデータの分析を専門とする競馬評論家・伊吹雅也による今週末のメインレース展望。コンピュータの“脳”が導き出した注目馬の期待度を、人間の“脳”がさまざまな角度からチェックする。
(文・構成=伊吹雅也)

低額配当決着がしばらく続いている点に注意


AIマスターM(以下、M) 先週は朝日杯FSが行われ、単勝オッズ2.7倍(1番人気)のジャンタルマンタルが優勝を果たしました。

伊吹 着差以上の完勝だったと言って良いのではないでしょうか。好スタートを決めたものの、なだめるようにポジションを下げ、道中は中団のインコースを追走。4コーナーで内ラチ沿いからダノンマッキンリー(8着)らをかわし、4コーナーを周り切ったところで早くも先頭のシュトラウス(10着)に内から並びかけています。そのままあっさりと単独先頭に立ち、馬場の良い外めに持ち出しながら後続を突き放して、大外から伸びてきたエコロヴァルツ(2着)らの追撃を振り切りました。4コーナーで動いた川田将雅騎手の判断は素晴らしかったと思いますし、鞍上の信頼に完璧な走りで応えたジャンタルマンタルもお見事です。

M ジャンタルマンタルはデビュー戦から3連勝でGIタイトルを奪取。3戦とも横綱相撲でしたし、まったく底が見えませんね。

伊吹 前走のデイリー杯2歳Sはもちろん、決勝線の手前でだいぶ流しながら出走メンバー中トップの上がり3ハロンタイムをマークしたデビュー戦も、相当に強い競馬。レースの傾向からも特に不安要素は見当たらなかったので、私は素直に中心視しましたが、想像以上のパフォーマンスを見せてくれました。この調子なら来春以降も楽しみ。レース選択を含め、動向をしっかりチェックしておきましょう。

M ちなみに、前回の当コラムでAiエスケープが推奨したジューンテイクは、タガノエルピーダ(3着)とアタマ差の4着に食い込んでいます。

伊吹 本当に惜しかったですね……。エコロヴァルツやタガノエルピーダがどこかで少しでもスムーズさを欠いていたら、馬券に絡むことができたはず。ただ、単勝オッズ112.4倍(11番人気)の低評価を覆したわけですから、大健闘と言えるでしょう。Aiエスケープの実力を証明した一戦だったと思いますし、流れに乗っていると見て良いかもしれません。

M 今週の日曜中山メインレースは、日本中から注目が集まる年末の大一番、有馬記念。昨年は単勝オッズ2.3倍(1番人気)のイクイノックスが優勝を果たしました。何十年も語り継がれるような、印象的な大波乱決着となった年も少なくないレースですが、今年も伏兵の台頭を警戒しておくべきでしょうか?


伊吹 3連単の配当が10万円を超えたのは、今のところ2015年(12万5870円)が最後です。2021年が7180円、2022年が9740円と、ここ2年は万馬券にすらなっていないという有様。過去10年の単勝人気順別成績を見ても、上位人気グループの馬が相応に優秀な成績を収めています。



M 単勝1番人気の3着内率が8割に達している一方で、単勝7番人気以下の馬はあまり上位に食い込めていません。

伊吹 より実態に即した区切り方をすると、単勝2〜4番人気の馬は2013年以降[3-3-8-16](3着内率46.7%)、単勝5〜11番人気の馬は2013年以降[1-6-1-62](3着内率11.4%)、単勝12番人気以下の馬は2013年以降[0-0-0-50](3着内率0.0%)でした。伏兵を狙うのも決して無理筋ではありませんが、上位人気馬の好走率が比較的高いことを踏まえたうえで買い目を組み立てましょう。

M そんな有馬記念でAiエスケープが指名した特別登録時点の注目馬は、ディープボンドです。

伊吹 前回に引き続き、今回も人気薄の馬を挙げてきましたね。もしかしたら単勝二桁人気にとどまるかも。

M ディープボンドは、3歳時のフォワ賞を含めGIIを4勝している実績馬。2021年の有馬記念など、GIでの2着も4回あります。しかし、今年に入ってからは未勝利で、前走のジャパンCは10着、2走前の京都大賞典は3着どまり。以前に比べると物足りない戦績ですし、積極的に狙おうと考えている方は多くないかもしれません。

伊吹 今春の天皇賞(春)で2着を確保しているうえ、3走前の宝塚記念でも勝ったイクイノックスと0.4秒差の5着に健闘しましたから、極端に能力が衰えているということはないはず。ただ、6歳の秋ということもあってか、世間の注目度が急激に下がってしまっている印象です。Aiエスケープが高く評価しているという事実を大前提に、この馬のプロフィールと好走馬の傾向を照らし合わせていきましょう。

M 最大のポイントはどのあたりだと考えていますか?

伊吹 血統は真っ先にチェックしておきたいところ。2016年以降の過去7年に限ると、父にノーザンダンサー系種牡馬を持つ馬は[1-0-0-8](3着内率11.1%)、父にミスタープロスペクター系種牡馬を持つ馬は[0-2-0-24](3着内率7.7%)、父にステイゴールド系種牡馬を持つ馬は[0-0-0-14](3着内率0.0%)と、それぞれ安定感を欠いていました。なお、3着以内となった計3頭は、いずれも出走数が12戦以内だった馬です。



M よほどキャリアの浅い馬でない限り、前出の3父系に属する種牡馬の産駒は強調できませんね。

伊吹 今年もこの条件に引っ掛かっている実績馬が人気を集めそうなので、該当馬の扱いに注意しましょう。

M ディープボンドは父がキズナで、父の父がディープインパクト。不安視する必要のない父系に属しています。

伊吹 あとは臨戦過程も素直に評価したいところ。前走の条件がGI以外だった馬は、2016年以降[0-0-0-22](3着内率0.0%)とまったく上位に食い込めていません。また、前走が国内のGIだった馬に限ると、その前走で5着以下に敗れていた馬は苦戦していました。



M GIIやGIIIのレースを経由してきた馬はもちろん、国内のビッグレースで大敗を喫してしまった直後の馬も、割り引きが必要ですね。

伊吹 おっしゃる通り。前哨戦のレベルや、当時の走りに不安がない馬を重視するべきでしょう。

M 先程も触れた通り、ディープボンドは前走のジャパンCで10着に敗退。残念ながらこの条件はクリアできていません。

伊吹 さらに、同じく2016年以降の有馬記念は、GIウイナーが圧倒的に優勢。3着以内馬21頭中17頭は、前年以降にJRAのGIを勝っている馬でした。



M これはわかりやすい。GI未勝利馬は疑ってかかった方が良さそうですね。

伊吹 ディープボンドは2021〜2023年の天皇賞(春)でいずれも2着に食い込んだ馬。実際に2021年の有馬記念で2着となっているわけですし、GI未勝利であるという一点だけをもって軽視するべきではないと思います。ただ、今年はGIウイナーが多いので、相対的に考えるとあまり高く評価できません。

M 強調材料がそれなりにある一方で、無視できない不安要素もいくつかある――といったところでしょうか。

伊吹 そんなところですね。私自身「できることならシルシを回したい」「ただし、中心視している馬たちが思ったよりも人気になってしまうようなら、点数を絞るべく無印にせざるを得ない」くらいの評価でした。もっとも、さすがに今年のディープボンドは過小評価され過ぎだと思いますし、他ならぬAiエスケープが有力と見ているのですから、しっかり押さえておいた方が良さそう。枠順や実際のオッズも考慮したうえで、最終的な買い目を改めて検討したいと思います。

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競馬評論家。JRAの公式ホームページ内「今週の注目レース」にて“データ分析”のコーナーを、TCK(東京シティ競馬)の公式ホームページ内「分析レポート」にて重賞競走のデータ分析を担当しているほか、グリーンチャンネル、JRAのレーシングプログラム、『週刊アサヒ芸能』、『競馬王』などさまざまなメディアを舞台に活動している。主な著作に『WIN5攻略全書 回収率150%超!“ミスターWIN5”のマインドセット』、『コース別 本当に儲かる騎手大全』シリーズ、『コース別 本当に儲かる血統大全』シリーズ、『ウルトラ回収率』シリーズ(いずれもガイドワークス)など。

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