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【ホープフルS AI予想】ポイントは枠順!? AIの挙げた実績馬をさまざまな角度から分析

  • 2023年12月25日(月) 18時00分

有馬記念を制したドウデュース(撮影:下野雄規)


netkeibaにある膨大な競走成績を人工知能によって機械学習するAiエスケープを開発したAIマスター・Mと、レースデータの分析を専門とする競馬評論家・伊吹雅也による今週末のメインレース展望。コンピュータの“脳”が導き出した注目馬の期待度を、人間の“脳”がさまざまな角度からチェックする。
(文・構成=伊吹雅也)


人気薄の伏兵が穴をあけた年は意外と少ない


AIマスターM(以下、M) 先週は有馬記念が行われ、単勝オッズ5.2倍(2番人気)のドウデュースが優勝を果たしました。

伊吹 お見事というほかありませんね。あまり良いスタートではなかったこともあって、道中は後方を追走。しかし、3コーナーで馬群の外から一気にポジションを押し上げ、4コーナーを周り切ったところで早くも2番手のスターズオンアース(2着)に並びかけています。残り200m地点を過ぎたところではまだ先頭のタイトルホルダー(3着)が数馬身リードしており、逆転までは難しそうに見えたのですが、そこからスターズオンアースと併せる形で力強く伸び、決勝線の手前で並ぶ間もなく差し切りました。3コーナーから仕掛けなければまず届かなかったと思いますし、もっと早く仕掛けたり、序盤や中盤でポジションを取りにいったりしていたら、ゴール前で脚が止まってしまったはず。陣営はもちろん、手綱を取った武豊騎手にとっても会心の勝利だったのではないでしょうか。

M 敗れたスターズオンアースやタイトルホルダーも、決して悪い競馬ではなかったと思うのですが……。

伊吹 「悪くはない」どころか、考え得る限りでは最高のレース運びだったと思いますよ。スターズオンアースに騎乗したC.ルメール騎手は、好スタートを決めて積極的に出していき、1周目の4コーナーで早くも最内の好位を確保。瞬く間に枠順の不利を覆して、スターズオンアースの地力をしっかり引き出しました。絶妙な逃げで主導権を握ったタイトルホルダーと横山和生騎手も素晴らしかったですね。ドウデュースの鞍上が武豊騎手でなかったら、さらにスターズオンアースの鞍上がC.ルメール騎手でなかったら、難なく逃げ切っていたのではないでしょうか。

M ドウデュースは来年も現役を続行する予定で、ドバイ遠征や凱旋門賞への再挑戦も選択肢のひとつに挙がっている模様。今後も目が離せません。

伊吹 もし凱旋門賞を目指すのであれば、本当に素晴らしいチャレンジだと思います。朝日杯FSや日本ダービーを制したように、3歳時までのドウデュースは、ゴール前の直線が長いコースを得意とした印象。しかし、今年に入ってからの2勝は、阪神芝2200m内の京都記念と中山芝2500m内の有馬記念でした。より凱旋門賞向きになったとまでは断言できませんが、以前とはイメージが異なるトップホースに成長した今なら、19着に敗れた3歳時とは違った結果が出る可能性もそれなりに高いはず。非常に楽しみです。

M 今週の木曜中山メインレースは、中山芝2000m内を舞台に争われる今年最後の2歳JRA・GI、ホープフルS。昨年は単勝オッズ90.6倍(14番人気)のドゥラエレーデが優勝を果たし、3連単246万6010円の高額配当決着となりました。やはり今年も伏兵の台頭を警戒しておいた方が良いのでしょうか?


伊吹 過去9年の3着以内馬27頭中16頭は、単勝3番人気以内の支持を集めていた馬。少なくとも、上位人気馬の好走率が極端に低いレースではありません。


M 単勝4〜6番人気馬や単勝7番人気以下の馬は、好走率も相応に低めですね。

伊吹 より実態に即した区切り方をすると、単勝2番人気以内の馬は2014年以降[7-2-3-6](3着内率66.7%)、単勝3〜4番人気の馬は2014年以降[1-4-2-11](3着内率38.9%)、単勝5〜9番人気の馬は2014年以降[0-3-4-38](3着内率15.6%)、単勝10番人気以下の馬は2014年以降[1-0-0-52](3着内率1.9%)でした。超人気薄の馬が上位に食い込む可能性はそれほど高くないと見るべきでしょう。

M そんなホープフルSでAiエスケープが指名した特別登録時点の注目馬は、シンエンペラーです。

伊吹 どちらかと言えば穴党という印象のあるAiエスケープですが、今回は意外なところを挙げてきましたね。

M シンエンペラーは前走の京都2歳Sを快勝している実績馬。重賞を勝ったことがあるのはこの馬とゴンバデカーブースだけですし、距離適性の高さも証明しているので、それなりに支持が集まるのではないかと思います。

伊吹 場合によっては、頭ひとつ抜けた単勝1番人気になるかもしれませんね。Aiエスケープはこのレースに対して「妙味ある伏兵が見当たらない」と考えているのかも。この点も踏まえたうえで、シンエンペラーの好走確率をレースの傾向から見積もっていきましょう。

M 真っ先に注目しておくべきポイントはどのあたりですか?

伊吹 ノーザンファーム生産馬と重賞ウイナーが強いレースである点は意識しておきたいところ。生産者がノーザンファームの馬は2017年以降[4-4-3-17](3着内率39.3%)と比較的安定していました。一方、生産者がノーザンファームではなかった馬のうち、“JRAの、重賞のレース”において“着順が1着、もしくは1位入線馬とのタイム差が0.0秒”となった経験のない馬は、あまり上位に食い込めていません。


M はっきりと明暗が分かれていますね。

伊吹 今年もこの傾向を大前提に予想していくべきでしょう。

M 先程も触れた通り、シンエンペラーは既に京都2歳Sを勝っている重賞ウイナー。高く評価して良さそうです。

伊吹 さらに、近年は1勝馬が不振。“JRAの、芝の、1勝クラス以上のレース”において1着となった経験がない馬は2017年以降[2-0-1-52](3着内率5.5%)と安定感を欠いています。なお、この経験がなかったにもかかわらず3着以内となった3頭は、いずれも調教師の所属が栗東、かつ生月が2月以前でした。


M 比較的早い時期に生まれた関西馬でない限り、新馬や未勝利しか勝っていない馬は強調できませんね。

伊吹 おっしゃる通り。今年もこの条件をクリアしている馬はそれほど多くないので注意しましょう。

M 実績上位のシンエンペラーにとっては、こちらも心強い傾向です。

伊吹 あとは枠順も重要なファクター。近年はどちらかというと内寄りの枠に入った馬の活躍が目立っていました。


M 外枠から好走した馬もいないわけではありませんが……。

伊吹 馬番が9〜18番だったにもかかわらず3着以内となった5頭のうち3頭は、前走の条件が重賞、かつ前走の4コーナー通過順が5番手以内だった馬。強敵相手に先行できるくらいの馬でないと、外寄りの枠から上位に食い込むのは難しいのだと思います。

M シンエンペラーは京都2歳Sの4コーナー通過順が7番手。外枠に入ってしまうようだと少々心配ですね。

伊吹 私自身も、外寄りの枠を引いてしまったらやや評価を下げようと考えていました。ただ、正直なところ今回はメンバー構成に恵まれた印象ですし、枠順だけを根拠に嫌うのは無理筋かも。Aiエスケープも有力と見ているわけですから、ある程度は素直に信頼して良いのではないでしょうか。

当コラムの次回更新は1月3日(水)18時予定です。


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競馬評論家。JRAの公式ホームページ内「今週の注目レース」にて“データ分析”のコーナーを、TCK(東京シティ競馬)の公式ホームページ内「分析レポート」にて重賞競走のデータ分析を担当しているほか、グリーンチャンネル、JRAのレーシングプログラム、『週刊アサヒ芸能』、『競馬王』などさまざまなメディアを舞台に活動している。主な著作に『WIN5攻略全書 回収率150%超!“ミスターWIN5”のマインドセット』、『コース別 本当に儲かる騎手大全』シリーズ、『コース別 本当に儲かる血統大全』シリーズ、『ウルトラ回収率』シリーズ(いずれもガイドワークス)など。

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