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【日経新春杯 AI予想】レースの傾向からも魅力十分! AIの指名した連軸候補をチェック

  • 2024年01月09日(火) 18時00分

中山金杯はリカンカブールが優勝(撮影:下野雄規)


netkeibaにある膨大な競走成績を人工知能によって機械学習するAiエスケープを開発したAIマスター・Mと、レースデータの分析を専門とする競馬評論家・伊吹雅也による今週末のメインレース展望。コンピュータの“脳”が導き出した注目馬の期待度を、人間の“脳”がさまざまな角度からチェックする。
(文・構成=伊吹雅也)

高額配当決着となった年は意外と少ない


AIマスターM(以下、M) 先週は中山金杯が行われ、単勝オッズ7.8倍(5番人気)のリカンカブールが優勝を果たしました。

伊吹 陣営はもちろん、手綱を取った津村明秀騎手にとっても会心の勝利だったのではないでしょうか。スタート自体はそれほど良くなかったものの、すぐにダッシュがついて先団へ進出し、道中は終始インコースを追走。4コーナーからゴール前の直線に入るところで前を行く3頭の外に持ち出すと、最後の急坂でボーンディスウェイ(4着)らをかわし、そのまま押し切っています。決勝線の手前でククナ(2着)やマイネルクリソーラ(3着)が差を詰めてきたところを見ると、位置取りや仕掛けのタイミング次第では違った結果になっていた可能性も。今回がテン乗りだったうえ、リカンカブール自身はしばらく控える競馬を続けていたわけですから、鞍上のファインプレイと言って良さそうです。

M リカンカブールは明け5歳。前走のチャレンジCは7着どまりだったものの、約1か月後のここで見事に自身初の重賞制覇を果たしました。

伊吹 間隔をあけながら使われてきたこともあって、この中山金杯が通算10戦目。3歳時に京都新聞杯で4着に、神戸新聞杯で6着に健闘した実績もある馬ですし、前走の敗戦がなければもう少し人気を集めていたかもしれませんね。父のシルバーステートはディープインパクトの後継として注目が集まっている種牡馬で、リカンカブールを含む現5歳世代が初年度産駒。京都金杯でも現4歳世代のセッションが2着に食い込んでいましたし、今年はさらに存在感を増してくるのではないかと思います。ちなみに、中山芝のレースは2023年末時点で3着内率31.3%、複勝回収率98%。得意条件のひとつと言って良いのではないでしょうか。

M リカンカブールの今後も楽しみですね。

伊吹 今のところ2000mのレースは[5-1-0-1]、それ以外の距離で施行されたレースは[0-0-0-3]という戦績ですが、距離適性の幅が極端に狭いタイプとは思えません。まだ脚質も定まりきっていないわけですから、「ベストは2000m」と決めつけない方が良いでしょう。ただ、ゴール前の直線が長いコースでどれくらいやれるかは未知数。東京や京都芝外回り・阪神芝外回りのレースを使ってきた場合は、オッズも踏まえたうえで慎重に取捨を判断したいと思います。

M 今週の日曜京都メインレースは、芝中長距離路線の主役クラスが参戦してくる年も珍しくないハンデキャップ競走のGII、日経新春杯。昨年は単勝オッズ3.8倍(2番人気)のヴェルトライゼンデが優勝を果たしました。なお、その2023年は単勝オッズ35.8倍(10番人気)のキングオブドラゴンが2着に食い込んだこともあり、3連単9万6330円の好配当決着。やはり波乱含みの一戦と見ておいた方が良いのでしょうか?


伊吹 2021年に3連単96万1790円の高額配当が飛び出したものの、2014年以降の過去10回中、過半数の6回は3連単の配当が4万円未満。伏兵の台頭が目立つレースとまでは言えない印象です。



M 過去10年の単勝人気順別成績を見ると、単勝7番人気以下だったにもかかわらず馬券に絡んだ馬は8頭。決して少なくはありませんが……。

伊吹 より実態に即した区切り方をすると、単勝2〜4番人気の馬は2014年以降[5-2-6-17](3着内率43.3%)、単勝5〜7番人気の馬は2014年以降[2-2-2-24](3着内率20.0%)、単勝8〜13番人気の馬は2014年以降[0-3-2-53](3着内率8.6%)、単勝14番人気以下の馬は2014年以降[0-0-0-20](3着内率0.0%)となっていました。魅力を感じる伏兵は積極的に狙って良いと思うのですが、人気薄の馬が複数上位に食い込んだ例は意外と少ないので、手を広げ過ぎてしまわないよう心掛けるべきでしょう。

M そんな日経新春杯でAiエスケープが指名した特別登録時点の注目馬は、ハーツコンチェルトです。

伊吹 今回はそれなりに支持が集まりそうな馬を挙げてきましたね。単勝1番人気になるかどうかは微妙なところですが、上位人気グループの一角を占めることになるはず。

M ハーツコンチェルトは昨年の日本ダービーで3着に、青葉賞で2着に健闘した実績のある明け4歳馬。昨秋の神戸新聞杯(5着)と菊花賞(6着)では馬券に絡むことができなかったものの、神戸新聞杯では単勝1番人気に支持されていましたし、クラシック戦線を盛り上げた一頭と言えます。同世代のサヴォーナ・サトノグランツあたりと同等以上に評価している方も多いのではないでしょうか。

伊吹 この馬を中心視しているということは、Aiエスケープは妙味ある伏兵が見当たらないと見ているのかもしれませんね。その見立てや単勝人気順別成績の傾向も踏まえたうえで、私はレースの傾向からハーツコンチェルトの信頼度を見積もっていきたいと思います。

M 真っ先に注目しておくべきポイントはどのあたりですか?

伊吹 大敗直後の馬は思い切って評価を下げた方が良さそう。2017年以降の3着以内馬21頭中20頭は、前走の着順が8着以内でした。



M 前走で9着以下に敗れていた馬は、ほとんど上位に食い込めていませんね。

伊吹 ちなみに、前走の着順が5着以内だった馬は2017年以降[5-6-5-24](3着内率40.0%)と比較的堅実。基本的に前走好走馬が強いレースと言えるでしょう。

M ハーツコンチェルトは前走の菊花賞で6着に健闘。5着以内ではなかったものの、GIだった点や未知のコースだった点を考えると、それなりに高く評価して良さそうです。

伊吹 さらに、近年はキャリアが豊富すぎる馬もいまひとつ。同じく2017年以降の3着以内馬21頭中18頭は、出走数が20戦以内でした。



M なるほど。キャリア21戦以上の馬は強調できませんね。

伊吹 今年はこの条件に引っかかっている馬がそれほど多くないものの、やはり比較的若い馬、伸びしろがありそうな馬を重視するべきでしょう。

M キャリア8戦のハーツコンチェルトにとっては心強い傾向と言えます。

伊吹 あとは、ローカル場のレースを主戦場としてきた馬が信頼できない点にも注意したいところ。中京芝2200mで施行された2021〜2023年は中京巧者も健闘していましたが、好走馬の大半は前年以降に中央場所のレースで連対を果たしている馬でした。



M 施行コースが京都芝2400m外に戻る今年は、この傾向をより強く意識しておいた方が良いかもしれませんね。

伊吹 おっしゃる通り。この条件をクリアしていない馬は思いのほか多かったので、ぜひひと通りチェックしてみてください。

M ハーツコンチェルトは2023年にローカル場のレースを一度も使っていないうえ、東京芝2400mの青葉賞で連対を果たしている馬。レースの傾向からも素直に信頼して良さそうです。

伊吹 他にも魅力的な出走予定馬が何頭かいるので、最終的に◎を打つかどうかはわかりませんが、もともと私も高く評価していました。Aiエスケープも有力と見ているのであれば、無理に逆らう必要はまったくなさそう。連軸候補とみなしたうえで、枠順やオッズの発表を待ちたいと思います。

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競馬評論家。JRAの公式ホームページ内「今週の注目レース」にて“データ分析”のコーナーを、TCK(東京シティ競馬)の公式ホームページ内「分析レポート」にて重賞競走のデータ分析を担当しているほか、グリーンチャンネル、JRAのレーシングプログラム、『週刊アサヒ芸能』、『競馬王』などさまざまなメディアを舞台に活動している。主な著作に『WIN5攻略全書 回収率150%超!“ミスターWIN5”のマインドセット』、『コース別 本当に儲かる騎手大全』シリーズ、『コース別 本当に儲かる血統大全』シリーズ、『ウルトラ回収率』シリーズ(いずれもガイドワークス)など。

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