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【根岸S AI予想】超人気薄なら面白い存在!? AIの挙げた伏兵をさまざまな角度から分析

  • 2024年01月22日(月) 18時00分

AJCCはチャックネイトが優勝(撮影:小金井邦祥)


netkeibaにある膨大な競走成績を人工知能によって機械学習するAiエスケープを開発したAIマスター・Mと、レースデータの分析を専門とする競馬評論家・伊吹雅也による今週末のメインレース展望。コンピュータの“脳”が導き出した注目馬の期待度を、人間の“脳”がさまざまな角度からチェックする。
(文・構成=伊吹雅也)

高額配当がしばらく飛び出していないレース


AIマスターM(以下、M) 先週はAJCCが行われ、単勝オッズ6.5倍(3番人気)のチャックネイトが優勝を果たしました。

伊吹 好スタートを決めて好位を取りに行き、道中は先団の外めを追走。4コーナーで前を行くマイネルウィルトス(5着)とショウナンバシット(9着)が引き離しにかかったものの、これについて行くべく鞍上のR.キング騎手が積極的に仕掛け、2頭を射程圏内に捉えたままゴール前の直線へ入っています。残り200m地点のあたりでは、粘る先行勢と押し上げてきた後続勢が大きく横に広がっての追い比べとなり、外から伸びてきたボッケリーニ(2着)が急坂を上り切ったあたりで先頭へ。正直なところ、私はこの時点でボッケリーニの勝利を半ば確信していたんですよね。しかし、ここからチャックネイトが差し返し、内からボッケリーニに並びかけてゴール。なかなかお目にかかれない逆転劇でしたし、そもそもレースの序盤からずっと実績上位のボッケリーニにマークされるという厳しい展開だったわけですから、着差以上に高く評価できる内容だったと言えるのではないでしょうか。

M R.キング騎手はJRA重賞初制覇となりました。

伊吹 今年1月6日から3月5日までの短期免許で参戦中ですが、年明け以降の戦績は現時点で[5-1-9-22]。3着内率は40.5%に、複勝回収率は157%に達しています。勝率や連対率こそあまり目立たない水準にとどまっているものの、トップジョッキー並みの頻度で馬券に絡んでいるうえ、配当的な妙味は申し分なし。今週以降も目が離せませんね。ただ、今回のAJCCを素晴らしい手綱捌きで勝ち切ったことにより、今後はこれまで以上に注目が集まってしまいそう。さらに言うと、まだJRAでは札幌と中山のレースにしか騎乗していないわけですから、人気の度合いや開催替わりの影響も考慮したうえで向き合い方を検討したいところです。

M もちろん、チャックネイトも今後が楽しみな存在。明け6歳とはいえまだキャリア15戦ですし、伸びしろは十分にあると見て良いのではないでしょうか。

伊吹 母のゴジップガールは現役時代に米G1のアメリカンオークスなどを勝っている名牝。もともとポテンシャルの高い血統なので、相手がさらに強くなっても、ある程度は問題なく対応できるのではないかと思います。ハーツクライ産駒や道悪巧者の持ち味が生きそうなシチュエーションで、なおかつ実績面を若干不安視されるような場面があったら、積極的に狙って良いかもしれません。

M 今週の日曜東京メインレースは、フェブラリーSの前哨戦としておなじみのGIII、根岸S。昨年は単勝オッズ1.6倍(1番人気)のレモンポップが優勝を果たしました。ちなみに、その2023年は3連単の配当が2610円どまり。今年も堅めの決着をイメージしておいた方が良いのでしょうか。


伊吹 3連単が10万円を超える配当となったのは、現在のところ2014年(15万8760円)が最後で、その後の過去9回に限ると2020年の6万9270円が最高額。おっしゃる通り、堅めの決着が続いているレースです。


M 過去10年の単勝人気順別成績を見ても、単勝7番人気以下の馬はあまり上位に食い込めていません。

伊吹 ちなみに、単勝7〜10番人気の馬は2014年以降[0-2-2-36](3着内率10.0%)、単勝11番人気以下の馬は2014年以降[0-0-1-56](3着内率1.8%)となっていました。最初から予想を本命サイドに寄せる必要はないと思うのですが、強そうな馬、コース適性の高そうな馬が期待を裏切りにくいレースであることを踏まえたうえで、出走各馬を評価していきましょう。

M そんな根岸SでAiエスケープが指名した特別登録時点の注目馬は、ベルダーイメルです。

伊吹 面白いところを挙げてきましたね。それなりに実績のある馬ですが、上位人気グループの一角を占める可能性は低そう。

M ベルダーイメルは明け7歳。2023年のエニフSや2022年の福島民友Cを勝っているほか、2021年のかきつばた記念で3着に食い込んだこともあります。ただし、JRAの重賞は今のところ3戦して3着以内なし。2023年の根岸Sで7着に敗れていますし、有力と見ている方はそれほど多くないでしょう。

伊吹 さまざまなコースのレースで善戦していることもあって、もともと狙うべきタイミングを絞り込みにくいタイプ。人気がなさそうな今回のような時こそ、激走を警戒しておきたいところですよね。Aiエスケープが中心視していることを踏まえたうえで、私はレースの傾向からこの馬を評価していきたいと思います。

M 最大のポイントはどのあたりでしょうか?

伊吹 東京のレースを積極的に使ってこなかった馬は過信禁物。2019年以降の3着以内馬延べ15頭中12頭は“前年以降の、東京の、オープンクラスのレース”において6着以内となった経験がある馬でした。


M 勝ち馬が3頭出ているとはいえ、3着内率の低さを考えると、この経験がない馬は強調できませんね。

伊吹 ちなみに“前年以降の、東京の、オープンクラスのレース”において6着以内となった経験がなかったにもかかわらず3着以内となった3頭は、いずれも前走の条件が重賞、かつ前走の着順が2着以内だった馬。勢いに乗っている実績馬でない限り、割り引きが必要です。

M ベルダーイメルは3走前のグリーンチャンネルCで2着に、2走前の武蔵野Sで6着に健闘している馬。東京の重賞やオープン特別は走り慣れています。

伊吹 さらに、同じく2019年以降の3着以内馬延べ15頭中13頭は、前走のコースが国内で、なおかつその前走を勝ち切っているか、前走の1位入線馬とのタイム差が0.4秒以内だった馬でした。


M 前走好走馬が優勢、と。

伊吹 前走のコースが国内、かつ前走の着順が2着以下、かつ前走の1位入線馬とのタイム差が0.5秒以上だったにもかかわらず3着以内となった2頭は、いずれも前走の条件がGI、かつ前走の距離が1400m超だった馬。大敗直後の馬は基本的に疑ってかかるべきでしょう。

M ベルダーイメルの前走はGIIIのカペラSで、勝ち馬と1.0秒差の6着どまり。残念ながらこの条件はクリアしていません。

伊吹 あとはキャリアも重要なファクター。同じく2019年以降の3着以内馬延べ15頭中13頭は、出走数が23戦以内でした。


M キャリアの浅い馬を重視した方が良さそうですね。

伊吹 もっと単純な切り口で言うと、馬齢が7歳以上の馬も2019年以降[0-1-1-30](3着内率6.3%)。高齢馬やキャリアが豊富過ぎる馬は、その分だけ評価を下げるべきだと思います。

M ベルダーイメルはキャリア33戦で、先程も触れた通り明け7歳。レースの傾向からは強調しづらい一頭ということになるのでしょうか。

伊吹 正直なところ、想定を見た段階では、私はこの馬を無印にするつもりでした。ただ、他ならぬAiエスケープが狙い目と見ているわけですし、思いのほか過小評価されそうな雰囲気であることもまた事実。無理に嫌う必要はまったくないので、買い目に組み込めそうな状況であれば、しっかり押さえるつもりです。

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競馬評論家。JRAの公式ホームページ内「今週の注目レース」にて“データ分析”のコーナーを、TCK(東京シティ競馬)の公式ホームページ内「分析レポート」にて重賞競走のデータ分析を担当しているほか、グリーンチャンネル、JRAのレーシングプログラム、『週刊アサヒ芸能』、『競馬王』などさまざまなメディアを舞台に活動している。主な著作に『WIN5攻略全書 回収率150%超!“ミスターWIN5”のマインドセット』、『コース別 本当に儲かる騎手大全』シリーズ、『コース別 本当に儲かる血統大全』シリーズ、『ウルトラ回収率』シリーズ(いずれもガイドワークス)など。

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