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【東京新聞杯 AI予想】無理に逆らう必要はない!? AIが中心視する実績馬の信頼度をチェック

  • 2024年01月29日(月) 18時00分

単勝オッズ2.5倍(1番人気)のエンペラーワケアが根岸Sを勝利(撮影:下野雄規)


netkeibaにある膨大な競走成績を人工知能によって機械学習するAiエスケープを開発したAIマスター・Mと、レースデータの分析を専門とする競馬評論家・伊吹雅也による今週末のメインレース展望。コンピュータの“脳”が導き出した注目馬の期待度を、人間の“脳”がさまざまな角度からチェックする。
(文・構成=伊吹雅也)

1番人気馬や2番人気馬があまり勝ち切れていない


AIマスターM(以下、M) 先週は根岸Sが行われ、単勝オッズ2.5倍(1番人気)のエンペラーワケアが優勝を果たしました。

伊吹 完勝と言って良いでしょう。五分のスタートから好位に進出し、道中は先団のやや後ろ、馬群の外めを追走。4コーナーを周り切ったところで先行勢を射程圏内に捉え、残り200m地点を過ぎたあたりで早くもヘリオス(4着)やアームズレイン(2着)をかわし、先頭に立っています。そこからさらに後続を突き放し、最後はアームズレインに2馬身半の差をつけて入線。危うい場面がまったくない、正真正銘の横綱相撲で同世代のライバルや実績上位のベテラン勢を一蹴したわけですから、本当に大したものです。

M エンペラーワケアはこれで3連勝。ダートのレースはここまで6戦5勝2着1回と、まだ底を見せていません。

伊吹 昨年12月17日に3勝クラスの御影Sを勝ち上がったばかりで、今回は重賞どころかオープン初挑戦。初めての関東遠征や、東京ダ1400mへのコース替わりを不安視していた方もいらっしゃったのではないでしょうか。正直なところ、私も「単勝支持率3割超の1番人気というのはさすがに期待され過ぎではないか」と思っていました。ただ、そんな私も恵まれた馬格や直近2戦の勝ちっぷりからスケールの大きさを感じていましたし、2023年JRAリーディングトレーナーの杉山晴紀調教師と、2022年JRAリーディングジョッキーの川田将雅騎手がタッグを組んでいるわけですから、このくらいの課題は難なくクリアできる可能性が高いと判断するべきだったかも。見立てが甘かったと反省しています。

M 次走に関しては様子を見ながら検討されるようですが、今後がとても楽しみですね。

伊吹 母のカラズマッチポイントは自身の半妹に米G1のアルシバイアディーズSを勝ったダンシングラグズがいる馬。エンペラーワケアの半兄にあたるサンライズラポールは2022年の吾妻小富士Sで2着に健闘しました。もともとポテンシャルの高い血統ですから、ビッグタイトルに手が届く可能性も十分にあると見るべきでしょう。もっとも、ここ5戦連続で単勝1番人気の支持を集めているように、この馬の実力が過小評価される場面はしばらくなさそう。「どこで買うか」よりも「どのタイミングで嫌うべきか」をイメージしておいた方が良いかもしれません。

M 今週の日曜東京メインレースは、同年の安田記念やマイルCSなどを目標にする精鋭が激戦を繰り広げてきた伝統の一戦、東京新聞杯。昨年は単勝オッズ9.5倍(4番人気)のウインカーネリアンが優勝を果たしました。比較の難しいメンバー構成になりがちで、難解な印象もありますが、単勝人気順別成績はどうなっていますか?


伊吹 2014年以降の優勝馬10頭中、単勝2番人気以内の支持を集めていたのは、2019年のインディチャンプ(単勝1番人気)のみ。ただし、単勝6番人気以下だったのも2014年のホエールキャプチャ(単勝8番人気)だけです。要するに、勝ち馬の大半は単勝3〜5番人気だったということ。なかなか珍しい傾向と言えるのではないでしょうか。


M 3着内率や3着内数を見ても、単勝1番人気馬の過半数が4着以下に敗れている一方で、単勝7番人気以下の馬が上位に食い込んだ例はそれほど多くありません。

伊吹 より実態に即した区切り方をすると、単勝6番人気以内の馬は2014年以降[9-8-9-34](3着内率43.3%)、単勝7-12番人気の馬は2014年以降[1-2-1-54](3着内率6.9%)、単勝13番人気以下の馬は2014年以降[0-0-0-30](3着内率0.0%)となっていました。人気の中心となっているような馬があまり信頼できない一方で、極端な人気薄の一発も期待しづらいレースである点は頭に入れておくべきだと思います。

M そんな東京新聞杯でAiエスケープが指名した特別登録時点の注目馬は、ジャスティンカフェです。

伊吹 ちょっと意外なところを挙げてきましたね。実績上位の一頭ではありますが、その分だけ人気が集まってしまうはず。

M ジャスティンカフェは明け6歳。昨年は上半期にエプソムCを制したうえ、秋のマイルCSでも勝ったナミュールと0.1秒差の3着に食い込んでいます。単勝1番人気の支持を集めた昨年の東京新聞杯で4着に敗れているものの、勝ったウインカーネリアンとは0.1秒差でしたし、展開を考えれば相応に高く評価できる内容。今回も上位人気グループの一角を占めることになるのではないでしょうか。

伊吹 どちらかと言えば穴党であるAiエスケープがこの馬を推してきたということは、妙味ある伏兵が見当たらなかったということなのかもしれません。まぁ、その見立て自体は単勝人気順別成績の傾向とも合致しているわけですからね。それなりの支持が集まりそうな存在であることを踏まえたうえで、私はレースの傾向からこの馬の好走確率を見積もっていきたいと思います。

M 真っ先に注目しておくべきポイントはどのあたりでしょう?

伊吹 近年の東京新聞杯は実績馬が優勢。2020年以降の3着以内馬のべ12頭中8頭は、JRAのGIで4着以内となった経験がある馬でした。


M これはわかりやすい。まだビッグレースで善戦したことのない馬は強調できませんね。

伊吹 ちなみに“JRAの、GIのレース”において4着以内となった経験がない、かつ出走数が9戦以上の馬は2020年以降[1-0-1-37](3着内率5.1%)。極端にキャリアが浅い馬でない限り、大舞台へ駒を進めた経験や当時のパフォーマンスを素直に評価するべきだと思います。

M 前走のマイルCSで3着となったジャスティンカフェにとっては心強い傾向です。

伊吹 さらに、前走の条件がGIだった馬は2020年以降[2-2-2-7](3着内率46.2%)と比較的堅実。一方、前走の条件がGI以外だったにもかかわらず3着以内となった6頭のうち5頭は、前走の着順が1着、もしくは前走の1位入線馬とのタイム差が0.2秒以内でした。


M ビッグレースからの直行組でも、前走好走馬でもない馬は、あまり上位に食い込めていません。

伊吹 今年もこの条件に引っかかっている馬がかなり多いので、該当馬を信頼し過ぎてしまわないよう心掛けましょう。

M ジャスティンカフェは前走がGIのマイルCSで、しかも勝ち馬とのタイム差が0.1秒。高く評価して良いのではないかと思います。

伊吹 あとは関西馬が不振である点も頭に入れておきたいところ。同じく2020年以降の3着以内馬のべ12頭中9頭は、調教師の所属が美浦でした。


M こちらもなかなか興味深い傾向。実際、昨年もジャスティンカフェ自身が人気を裏切ってしまっているわけですからね。

伊吹 2019年以前はむしろ関西馬が優勢だったものの、東西の実力差が縮まった分、地元の関東馬が有利なレースに変質したのでしょう。

M ただ、ジャスティンカフェ自身は関東圏のレースにも十分な実績がある馬。大きく評価を下げる必要はないように思いますが……。

伊吹 そのあたりは私も同意見。逆に言うと関西馬である点くらいしか不安要素はないわけですし、他ならぬAiエスケープも有力と見ているわけですから、無理に嫌う必要はまったくありません。もっとも、妙味ある配当があまり期待できないうえ、より不安要素の少ない馬が他にいる以上、素直に◎を打つべきかどうかは微妙なところ。枠順の並びや実際のオッズなども見たうえで、最終的な買い目上の位置付けを慎重に判断するつもりです。

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競馬評論家。JRAの公式ホームページ内「今週の注目レース」にて“データ分析”のコーナーを、TCK(東京シティ競馬)の公式ホームページ内「分析レポート」にて重賞競走のデータ分析を担当しているほか、グリーンチャンネル、JRAのレーシングプログラム、『週刊アサヒ芸能』、『競馬王』などさまざまなメディアを舞台に活動している。主な著作に『WIN5攻略全書 回収率150%超!“ミスターWIN5”のマインドセット』、『コース別 本当に儲かる騎手大全』シリーズ、『コース別 本当に儲かる血統大全』シリーズ、『ウルトラ回収率』シリーズ(いずれもガイドワークス)など。

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