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【スプリングS AI予想】不安要素は少ない!? AIが推す実績馬の信頼度をチェック

  • 2024年03月11日(月) 18時00分

単勝オッズ35.2倍(11番人気)のエトヴプレが優勝(c)netkeiba


netkeibaにある膨大な競走成績を人工知能によって機械学習するAiエスケープを開発したAIマスター・Mと、レースデータの分析を専門とする競馬評論家・伊吹雅也による今週末のメインレース展望。コンピュータの“脳”が導き出した注目馬の期待度を、人間の“脳”がさまざまな角度からチェックする。
(文・構成=伊吹雅也)

前評判の低い馬を手広く押さえる必要はなさそう


AIマスターM(以下、M) 先週はフィリーズレビューが行われ、単勝オッズ35.2倍(11番人気)のエトヴプレが優勝を果たしました。

伊吹 エトヴプレよりも単勝支持率が高かった馬、すなわち単勝10番人気以内だった馬のうち、収得賞金が400万円だった馬は3頭、900万円だった馬も3頭。完全なる結果論ですが、既にオープン特別勝ちの実績があったことを考えると、さすがに過小評価され過ぎだったと言わざるを得ません。

 明暗を分けたのはレースの序盤。好スタートを決めた馬が他にも何頭かいた中、この馬自身もまずまずのスタートを決めてすぐ先団へ取り付き、積極的に行こうとする馬がいないことを確認したうえで、そのままスッとハナを奪っています。その後も後続に対して1馬身ほどのリードを保ちながらレースを引っ張り、4コーナーを単独先頭で通過。

 単勝オッズ1.8倍(1番人気)の支持を集めていたコラソンビート(2着)が残り200m地点のあたりで迫ったものの、結局併走する場面すらなく、3/4馬身差をつけて入線しました。陣営はもちろん、手綱を取った藤岡佑介騎手にとっても会心の勝利だったのではないでしょうか。

M エトヴプレは重賞初挑戦の身で見事にタイトルを獲得。もっとも、2走前に福島2歳Sを制していて、今回のメンバー構成においては実績上位と言える存在だった馬です。

伊吹 今回は、9頭立てだった前走の中京2歳Sで4着に敗れてしまった点や、芝1200mのレースしか使ったことのない点が嫌われた形。私自身もローカル場のレースを主戦場としてきた点が気になっていて、最終的に買い目から外してしまいましたから、偉そうなことを言える立場ではありません。

 ただ、繰り返しになりますが、この馬が14頭立ての11番人気にとどまってしまったというのは、ちょっと不思議な気がしますね。阪神芝1400m内は基本的に内枠有利なコースですし、遅くともオッズを見た段階で「押さえておいた方が良いのでは? 」と気付くべきでした。

M エトヴプレは桜花賞への優先出走権を獲得。順当に使ってきたとしても、上位人気に支持される可能性はそれほど高くないと思うのですが、いかがでしょうか。

伊吹 距離がさらに1ハロン伸びるうえ、ゴール前の直線が長い外回りコースへと替わるわけですし、普通に考えるならば今回と同じようなパフォーマンスを期待するのは酷ですよね。藤岡佑介騎手もレース後のコメントで「乗った感触では1400mがギリギリ」と評していましたから、おそらくまた超人気薄の立場で臨むことになるのではないかと思います。もっとも、母のNahoodhは現役時代に芝8ハロンのファルマスS(英G1)を勝っている名牝。非常にポテンシャルの高い血統なので、当面は再度の激走を警戒しておいた方が良いかもしれません。

M 今週の日曜中山メインレースは、1〜3着馬に皐月賞への優先出走権が付与されるトライアル競走のスプリングS。昨年は単勝オッズ3.7倍(2番人気)のベラジオオペラが優勝を果たしました。独特な立ち位置の重賞ですが、どのような決着をイメージして予想に臨むべきなのでしょうか?

伊吹 過去10年の単勝人気順別成績を見る限りだと、大きな波乱は期待しづらいと考えておいた方が良さそうですね。ここ2年は単勝1番人気馬が上位に食い込めなかったものの、2014〜2021年の単勝1番人気馬は[1-4-2-1](3着内率87.5%)。人気薄の馬が馬券に絡んだ例もそれほど多くありません。


M 単勝1番人気馬だけでなく、単勝2〜3番人気馬や単勝4〜6番人気馬もまずまずの好走率をマークしています。

伊吹 ちなみに、単勝7〜10番人気の馬は2014年以降[1-1-2-36](3着内率10.0%)、単勝11番人気以下の馬は2014年以降[0-0-0-32](3着内率0.0%)となっていました。わざわざ予想を人気サイドに寄せる必要はないと思うのですが、伏兵を片っ端から押さえるような買い方は避けるべきでしょう。

M そんなスプリングSでAiエスケープが指名した特別登録時点の注目馬は、ウォーターリヒトです。

伊吹 面白いところを挙げてきましたね。実績上位の一頭ではあるものの、懐疑的に見ている方はそれなりに多いはず。

M ウォーターリヒトは前走のきさらぎ賞で2着に、2走前のシンザン記念で3着に健闘している馬。ただし、シンザン記念の時は単勝オッズ207.6倍(17番人気)、きさらぎ賞の時も単勝オッズ28.4倍(10番人気)と、前評判が高かったわけではありません。さすがに今回はそれなりの支持を集めそうですが、超人気薄の立場で好走を果たしたここ2戦に関しては、高く評価している方も、あまり魅力を感じていない方も、それぞれたくさんいるのではないかと思います。

伊吹 オッズだけで判断するならば買い時ではないように見えるものの、もともと人気になりにくいタイプですし、好走確率とオッズのバランスを考えたら、実はまだ妙味があるのかも。少なくとも、Aiエスケープはそう判断したようですね。この見立てを踏まえたうえで、好走馬の傾向とこの馬のプロフィールを比較していきましょう。

M 真っ先に注目しておくべきポイントはどのあたりだと考えていますか?

伊吹 今年のメンバー構成なら、馬格を重視した方が良さそう。過去4年の3着以内馬12頭中8頭は、前走の馬体重が490kg以上でした。


M 前走に490kg以上の馬体重で出走した大型馬は、好走率も優秀ですね。ウォーターリヒトは前走の馬体重が458kg。残念ながらこの条件はクリアしていません。

伊吹 おっしゃる通り。ただし、前走の馬体重が490kg未満だった馬のうち、2021年1着のヴィクティファルスは同年の共同通信杯で2着に、2022年1着のビーアストニッシドは前年の京都2歳Sで2着に健闘した実績のある馬でした。前走の馬体重が490kg未満、かつ“JRAの、1600m超の、重賞のレース”において2着以内となった経験のない馬は2020年以降[0-0-2-30](3着内率6.3%)ですが、ウォーターリヒトくらい実績のある馬なら、大きく評価を下げる必要はないでしょう。

M 特別登録を行った馬のうち、重賞で連対を果たしたことがあるのはウォーターリヒトだけ。馬格の不安を補って余りあるくらいの実績と言って良さそうです。

伊吹 あとは前年末以降のレースにおける戦績も重要。同じく2020年以降の3着以内馬12頭中11頭は“前年12月以降の、中央場所の、1勝クラス以上のレース”において4着以内となった経験がある馬でした。


M 昨年11月以前のレース、ローカル場のレース、新馬や未勝利のレースでしか好走していない馬は強調できませんね。

伊吹 今年はあまり多くないのですが、この条件に引っ掛かっている馬は疑ってかかるべきでしょう。

M 年明けに京都の重賞で好走しているウォーターリヒトにとっては、心強い傾向と言えます。

伊吹 さらに、近年はキャリア豊富な馬が不振。同じく2020年以降の3着以内馬12頭中8頭は、出走数が3戦以内でした。


M キャリア4戦以上の馬は3着内率が11.1%どまり。割り引きが必要ですね。

伊吹 なお、出走数が4戦以上、かつ“中山芝・阪神芝内回りの、1勝クラス以上のレース”において1着となった経験がない馬は2020年以降[1-0-0-24](3着内率4.0%)。中山芝や阪神芝内回りのレースに十分な実績があった馬を除くと、キャリア4戦以上の馬はほとんど上位に食い込めていません。

M ウォーターリヒトはキャリア6戦で、阪神芝2000m内の未勝利を勝った経験ならある馬。厳密に言うとこの条件をクリアしていませんが……。

伊吹 まぁ、今年はすべての条件を綺麗にクリアしている馬があまりいませんし、ある程度は高く評価して良いのではないでしょうか。Aiエスケープが有力視しているのであれば尚更です。よほど人気が集中してしまわない限り、私もそれなりに重いシルシを打つと思います。

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競馬評論家。JRAの公式ホームページ内「今週の注目レース」にて“データ分析”のコーナーを、TCK(東京シティ競馬)の公式ホームページ内「分析レポート」にて重賞競走のデータ分析を担当しているほか、グリーンチャンネル、JRAのレーシングプログラム、『週刊アサヒ芸能』、『競馬王』などさまざまなメディアを舞台に活動している。主な著作に『WIN5攻略全書 回収率150%超!“ミスターWIN5”のマインドセット』、『コース別 本当に儲かる騎手大全』シリーズ、『コース別 本当に儲かる血統大全』シリーズ、『ウルトラ回収率』シリーズ(いずれもガイドワークス)など。

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