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ファーロン騎乗停止処分解除を求めて提訴

  • 2006年07月18日(火) 23時50分
 果たして、キアラン・ファーロンは7月29日のキングジョージで本命馬ハリケーンランに騎乗出来るのか。日本のファンも注目の命題がどちらに転ぶかの山場が、今週半ばにやってきそうだ。

 共同馬主組織を主宰するマイルズ・ロジャーズなる人物を中心としたグループが、02年12月から04年9月にかけて、80を越えるレースにおいて、ベットイクスチェンジで自らが関与する馬が「負ける」方に賭け、配当をせしめていたことが発覚。出走馬はすべからく全能力を発揮しなければならないという、競馬の原則に反した疑いがあるとして、ロンドン市警察が捜査を進めていたこの事件。事情を聴かれていた34名のうち11名が、7月3日に起訴されるに至ったのだが、その中に、チャンピオンジョッキーのキアラン・ファーロンが含まれていたのだ。「ベットフェア社のベットイクスチェンジを通じて、他の馬券購入者から不当にお金を詐取した行為への共謀」というのが、その容疑である。04年9月に警察に身柄を拘束され事情聴取を受けて以来、一貫して身の潔白を主張してきたファーロンだが、警察及び検察当局は、公判に持ち込んで有罪を勝ち取れるだけの材料が揃ったと見て、今回起訴に持ち込んだのである。

 これを受け、英国競馬の公正確保を任とするHorseracing Regulatory Association(競馬統制委員会=HRA)は、キアラン・ファーロンの英国における騎手免許を停止することを決定。裁判の結果が明らかになるまで、ファーロンは英国内で騎乗できないことになったのである。

 一方で、アイルランドやフランスでは依然として騎乗を続けているファーロン。16日(日曜日)には、主戦契約を結んでいるエイダン・オブライエン厩舎のアレグザンドローヴァで愛オークスを制するなど、相変わらず達者な手綱さばきを見せている。

 主戦厩舎の本拠地はアイルランドと言っても、英国における騎乗停止はファーロンにとって計り知れない痛手だ。なぜなら公判が開始されるのは早くて07年春と言われており、英国におけるこの種の裁判の進行速度を考えると、仮にここで無罪の判決が下ったとしても、ファーロンの騎乗停止は08年夏ぐらいまでは丸2年以上続くことが予想されるのだ。

 有罪が確定したわけでもないのに騎乗機会を奪うのは、生活権の侵害にあたるとして、ファーロン・サイドはHRAに対して騎乗停止処分の執行を差し止めるよう提訴。英国の権威ある競馬日刊紙レーシングポスト紙も、7月10日付けの1面で「HRAの処分は不当。ファーロンの騎乗を認めるべき」との社説を掲載したのだが、HRAは13日(木曜日)にファーロンの訴えを棄却することを決定。現在も英国における騎乗停止は変わらずに継続されているのである。

 そこでファーロン・サイドは、競馬サークル内の論争では決着がつかないと見て、HRAの処分は不当であるという訴えを、高等裁判所に対して行い、その高等裁判所における審理が、今週水曜日(19日)、もしくは木曜日(20日)に行われる見通しなのだ。

 ここで高等裁判所から、HRAの処分は不当との判断が下り、HRAもこれを承服すれば、ファーロンの停止処分は解除され、キングジョージにおける騎乗も可能になる。逆に高等裁判所が、HRAの処置は妥当と判断すれば、ファーロンサイドは今度は最高裁に訴え出ることになるのか。

 いずれにしても、英国からのニュースから目が離せない一週間となりそうだ。

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1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

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