
▲藤岡康太騎手のNHKマイルC制覇を振り返る(撮影:下野雄規)
昨春、藤岡康太騎手がレース中の落馬により亡くなるという悲しい出来事がありました。志半ばでこの世を去った康太騎手のため、悲しみを繰り返さないため、我々にできることは何でしょうか。兄・藤岡佑介騎手はある時、こう話しました。「ファンのみなさんには今まで通り競馬を楽しんでもらえることが一番の願い。その中で、時々思い出してもらえれば」。
一周忌を終え、季節は康太騎手がGI初制覇を果たしたNHKマイルCの頃となりました。そこで、ジョーカプチーノでともに初のGIタイトルを手にした中竹和也調教師と、同期で親友でもある浜中俊騎手に、康太騎手との思い出を語っていただきました。
みなさんにとって、康太騎手の思い出は何ですか──
(取材・構成:大恵陽子)
中竹和也調教師「康太の最初の50mがすごかった」
康太にジョーカプチーノの騎乗依頼をしたのは、「小倉に使いに行くから、空いている騎手は誰だろう?」という、最初は単純な理由からでした。逃げ切って初勝利を挙げたように、ちょっとコントロールの難しい面のある馬だったけど、その小倉のレースを勝ってくれた時にすごく当たりが柔らかくてね。
それで、ファルコンSでも続けて依頼すると、ふわっと優しく乗って、直線まで無駄なエネルギーを使わず、差し切り勝ちを決めてくれました。康太ならではの優し〜い乗り方でした。
そんな過程があってのNHKマイルC。最初の2ハロン、いや、極端に言えば最初の100mや50mがすごかったです。
いかに馬と喧嘩せず静かに乗れるか、という区間で、康太は呼吸を止めていたんじゃないかなと思うくらい、本当に静かに乗っていました。スタートは静止した状態からポンッと走り出すので、馬のアクションが大きくて、どれだけ意識していても人と馬の一体感を崩す瞬間があります。その難しい場面でも康太は、ふわ〜っと馬と一体になっていたんです。

▲康太騎手(右)と喜びを分かち合う中竹和也師(左)(撮影:下野雄規)
道中はハイペースで逃げる馬がいたので、多少なりとも控えたくてピクッとでも動きたくなるシチュエーションだったと思います。すごく葛藤があったんじゃないかなと思うけど、そこさえも動かずにじっとしていました。ただただ、ジョーカプチーノとの折り合いに集中していたんじゃないかなと思います。
馬、馬主、騎手、厩舎、みんなにとっての嬉しいGI初制覇でした。
康太は