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「競馬場の前まで行ったんやけど、帰りました」──息子・加矢太騎手の阪神ジャンプS勝利に父の“いらぬ心配”

  • 2025年09月23日(火) 18時01分
太論

▲ネビーイームとのコンビで阪神ジャンプステークスを勝利した加矢太騎手(c)netkeiba


先週は、秋の鞍(重賞・名古屋)で重賞2連中のケイズレーヴにベラジオドリームで挑み、吉原寛人騎手との壮絶なマッチレースの末、惜しくもアタマ差の2着に。ゴール前は思わず叫んだそうで、とにかく見応えのある一戦でした。これにてベラジオドリームは、4戦連続重賞2着。大きい舞台に駒を進めるためにも、次は確勝を期す一戦となりそうです。JRAでは、加矢太騎手が阪神ジャンプSでジューンベロシティを撃破。阪神競馬場の前まで行って、場内に入ることなく家に帰ったというお父さん。なぜ帰った!?

(取材・構成=不破由妃子)

善戦続けるベラジオドリーム「1400mやったら負けへんちゃうか」


──先週の木曜日は名古屋の秋の鞍(重賞)にベラジオドリームで挑み、長い追い比べの末、1番人気ケイズレーヴのアタマ差2着。見応え十分でした。

小牧 惜しかったねぇ。悔しいけど、向こう(ケイズレーヴ)が一枚上やった。最後はさすがに気合いが入ったわ。ゴール前、僕が声を出したら、吉原(寛人)も必死だったんやろうね。つられて声を出しよった(笑)。

──名手ふたりの絶叫かぁ。ジョッキーカメラを付けてほしかった!

小牧 ホンマやね(笑)。今回は1500mで微妙に長いなと思っていたんやけど、逆に1400mやったら負けないかなと思った。あの馬、よう頑張ってるわ。

──悔しさも募りますが、重賞で4戦連続2着ですからね。6月26日の兵庫優駿以来の実戦でしたが、成長など変化はありましたか?

小牧 調教でかなり乗れたけど、あの馬はね、具合がいいか悪いかはわからんねん。

──調教で具合の良し悪しが判断できない!?

小牧 そう。なんせおとなしすぎて。脚を出さんし、歩様もコトコトしてるしね。おもしろい馬やねん。追い切りやレースでは走るけど、返し馬では走る気ゼロやからね(苦笑)。調教もね、毎日ムチを持って乗ってるくらい。

──鞍上泣かせではありますが、よくいえば無駄に体力を使わないタイプ(笑)。

小牧 そうかも。重賞とはいえ、4戦連続2着でしょう。だから、大きいレースは使われへんねん。これだけ重賞で走っているのに、クラスでいうとC1とかになるんやって。

──C1!? それはビックリ。

小牧 とりあえずは、楠賞(11月6日・園田・ダ1400m)を目標に進めていこうと話してるんやけど、その前にC1を一度使わなアカンみたいでね。

──持ったままで大楽勝しそうですけど。

小牧 それがね、C1にはJRAの未勝利馬がけっこう出てくるから、レースによってはメンバーが強いねん。そこを勝ったとしても、楠賞に出られるかどうかわからんし。賞金2000万円の全国交流やから、この前の秋の鞍を勝ったケイズレーヴとか、高知のジュゲムーンとか、みんなくると思う。なんとかそこに駒を進めたいんやけどなぁ。1400mやったら、負けへんちゃうかと思うから。

──使いたいレースを使っていくためにも、重賞をひとつ勝ちたいですね。強いのは間違いないですから。

小牧 そうやね。どこかで重賞を獲れる馬やと思うし、とりあえずC1を勝たんことには。次は負けられへんレースになるね。

──19日の金曜日には、中央からの移籍2戦目となったワンダーブリングが7馬身差の圧勝。強かったですね。最後は流す余裕がありました。

小牧 ああ、中央でも5着が2回ある馬やし、砂を被らんかったら走るなと思ってた。初戦は5着やったけど、イレ込んでね。ゲートは潜りかけるし、道中は砂を被って競馬にならんかった。でも、終いの脚はすごかったから。2戦目の今回はおとなくして、全然違ったね。案の定、強かったし、時計も速かった。ベラジオドリームと同じで、この馬も攻め馬ではちょっとコトコトしている馬でね。

──歩様がよくないということですか?

小牧 うん。ダートはそういう馬が多いよ。でもね、走るねん。なんかそういう馬が走る。ワンダーブリングも園田ではまだまだ楽しみがありそうやけど、こっちで強い競馬をしたら、JRAに帰ってしまうからね。これからなんぼでもそういう馬が出てくるよ。

──将来的に一緒に大きいところへ…というのは叶わないけど、しっかり勝ち星を稼がせてくれる存在と割り切るしかない。

小牧 そうやね。2つくらいポンポンと勝つと、みんな戻ってしまうから。モズフラッシュもそうやったしね。まだ中央では使ってないみたいやけど、いつ使うんやろ。

──動向が気になりますか?

小牧 うん。馬券を買おうかと思っているから(笑)。

──ああ、なるほど(笑)。さて、先週といえば、加矢太さんがネビーイームで阪神ジャンプS(J・GIII)を勝利。ジューンベロシティを相手にやってくれましたね。

小牧 最後ちょっとヒヤッとしたけど、ジューンベロシティに戦いを挑んでの勝利やから、価値ある1勝やったね。応援に行こうかと思って、競馬場の前まで行ったんやけど、結局、家で応援してました。

──は? ちょっと何言ってるかわからない…(笑)。

小牧 競馬場の前まで加矢太応援団を車で送って行って、僕はそのまま帰りました。どうしようかなぁと迷ったんやけど、関係者のところに行けば行ったで気を遣うし、お客さんと同じところで観たら、目立ってしまうやろうしと思って。

──「あ、小牧さんだ!」となるのは必至ではありますが、まさか現地まで行って帰るとは。

小牧 サインを求める人が僕のほうが多かったら、加矢太に悪いし(笑)。

──お父さん、いらぬ心配です(苦笑)。

小牧 それが心配で帰りましたって書いといて(笑)。順調に行けば中山大障害でもチャンスあると思うから、そのときは現地に応援に行くわ。

(文中敬称略)
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1967年9月7日、鹿児島県生まれ。1985年に公営・園田競馬でデビュー。名伯楽・曾和直榮調教師の元で腕を磨き、10度の兵庫リーディングと2度の全国リーディングを獲得。2004年にJRAに移籍。2008年には桜花賞をレジネッタで制し悲願のGI制覇を遂げた。2024年には再度園田競馬へ復帰し、活躍中。史上初の挑戦を続ける。

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